初めてのお泊まり9
観覧車が下に行くにつれ、マキナの震えは増していた。
もし、観覧車から降りた後、マキナの親がいたらどうするか?
俺は、どういう行動をとるべきかと考えを巡らせていると、マキナがポツリと
ごめんなさい。せっかく楽しい初デートなのに
涙声で下を見たまま呟く。
マキナ。こっちを見て。
そう言う俺に涙を我慢している顔をあげて
なに?
と呟く。
俺は…黙ってキスをした。
このタイミングが正しかったのかは分からない。
ただ、安心してほしかった。
俺を頼ってほしかった。
気づけば、体が勝手に動いていた。
マキナは一瞬驚いた表情を見せるも、少し笑顔を見せつつ、
「……バカ。」
少し涙を浮かべたまま、マキナは照れくさそうに笑った。
そして、とうとう観覧車は下に着き俺達は手を繋いで降りる。
周りを見渡したが、父親の姿はどこにもなかった。
マキナも必死に辺りを見回し、やがて力が抜けたように小さく息を吐く。
「……よかった。」
心の底から安心したような声だった。
居ないたいだね。少しは落ち着いた?
そう聞くと
メッチャ安心した!迷惑かけてごめんね!
と、少し元気を取り戻した様だった。
もう閉園時間も近いし帰ろうか。
そう言う俺に
うん!
と元気に答えたマキナは俺の手を握り、駐車場へ向かった。
車を走らせながら喋っていると喉が渇いてきたので近くにコンビニに寄った。
手を繋ぎながら入店し
マキナ何飲む?
マキナは、
うーん…
と少し悩みながらホット飲料コーナーへ向かい、
やっぱりこういう時はあったかいお茶かな!
マキナはそう言って笑った。
俺も自然と笑ってしまう。
あの日、このお茶から始まった俺たちの関係は、少しずつ恋人らしくなっている気がする。
そんな事を思いつつ飲み物を買い再び車を走らせる。
かなり遅くなってしまったなぁと思いながら、
あと20分ぐらいでマキナの家に着く。そんな事を思いながら少しボーっとしていると
…太一
急に名前を呼ばれ我に返った。
ん?どした?
と聞くと、
少し、躊躇いながら
今日私の家に泊まって行かない?明日仕事休みなんでしょ?
と恥ずかしそうに言ってきた。
不意打ちすぎて心臓が一気に跳ね上がる。少し興奮しつつ、でも紳士な男を見せたい俺は、
明日は休みだけど…今日は疲れたでしょ?1人でゆっくり寝なよ。
そう言うと、マキナは黙り込んで少し不機嫌になった様だった。
俺はというと…
物凄く後悔していた。
泊まりたいし、泊まればエッチもできるかもとバカな考えをしていた。
沈黙のままマキナの家の近くまで来てしまった。
マキナ…もう着くよ。
少し、話しかけづらい雰囲気だが思い切って話しかけると、
太一!最後のチャンス!私は今日は1人になりたく無いの!だから泊まって欲しいの!
少し怒った様な、恥ずかしそうな声で言ってきた。
ここまで、言われると俺は断る理由はない。
マキナが望んでいる。正直に言えば、男として期待がゼロだったと言えば嘘になる。
でも今は、それよりもマキナのそばにいてあげたいと思った。
そっか。そうだよな!1人になりたく無いわな!
じゃお邪魔しようかな!
そう言うとマキナは安心した様に笑った。
その笑顔を見た瞬間。
今日ここまで悩んで、迷って、本当に良かったと思えた。




