決勝戦第二試合
【決勝戦視聴者待機室】
『なあ、奇跡が起きた。新人が残っている』
『どういうこと?』
『…本当だ。名前がある』
『なんで?』
『落ちたのが、お題間違えていた有料サイトの人』
『は?まてまて、そんなミス。あ、もしかして』
『多分、名前からして四天王に勝とうとして』
『ああ、なるほど。そういうことか。
早く出したら加算とかいうルールがあったな』
『てことは、その新人は、お題を解いたってこと?』
『今、その新人の動画見たけど。
システムってあんなに表情豊かだっけ?』
『いやいや、多少はあるけどそんな人間みたいには』
『こっち見てウインクとかしていたよ』
『何それ。次の動画も時間あれば観てみようかな』
【決勝戦第二試合】
秋『そろそろ時間です。主様。準備はいいですか』
余韻に浸る間もなく通知音がなる。
『お題:
システムが生活に溶け込む前の昔話。
ある日、喫茶店にきた一組のカップル。
彼女の言葉に、思わず彼はこう返した。
「え、愛って何?」
そんな彼に、続きを答えよ。
ただし、月は綺麗ではない
開始から1分おきにヒント。
3分で答えが出る』
また、トンチか?
春『愛なんて、そんな』
隣で、両手を頬に当てくねくねする春。
だから、それは答えじゃない。
夏『“月が綺麗ですね”は、
過去に、恋愛もので流行った言葉。
前の答えからしてシステムの話じゃない?』
すると答えはこうなる。
〝AIって何?〟
AIをわかりやすく伝えるインパクトのあるものは。
「次のヒントの前に出したい。AIでやったこと」
ざっとチェックし、選択して提出。
アップロード画面。
秋『これ、お絵描き伝言ゲームですね。
同じお題で絵が変わりました』
夏『なんでポータルになるか謎だったあれね』
受付完了と同時に通知音がなる。
『解釈違い』
解釈違いときたか。
それでも他の人は動かない。
秋『今回は皆さん慎重ですね』
それに、こちらの出したお題のタイトルが、
タイトルがお絵描き伝言ゲームでは。
周りも答えに気づいて無いか。
さらにヒントの通知音。
『句読点をずらすと意味が変わる』
よし、ここまでくれば間違いない。
同じように思ったのか、ほぼ全員の答えが出揃う。
ただ一人。天楽だけが動かない。
秋『最初の答えが判らないと、天楽には厳しそうです』
秋が遠い目をして言う。
春『でもさ、もしかしたら、慎重なだけかも』
春の庇うような言葉。
どちらにしても、これは見守るしか無い。
追い打ちをかけるように通知音。
『AIって何?』
やっと天楽の答えが出た。
タイトル
“天楽がAIって噂知ってる?”
冬樹は思わず吹いた。
「いや、それは違うだろ」
三姉妹は顔を見合わせるだけで何も言わない。
そして視聴者タイム。
「すげーな。マックスだよ。ずっと」
天楽の視聴者ゲージが全く下がらない。
思わず、TENTYOOを応援している俺。
頭に何故か、広い額をペチペチしている店長の姿が浮かぶ。
「ははっ。そりゃ結びつかないわけだ」
TENTYOOの作る動画は、繊細で美しい。
だから、頭の中のイメージでは。
もっと繊細なエンジニアみたいな人だった。
でも、実際は大柄で、オタクでマニアで。
そして、誰よりも人懐っこい。
子供のころからぼっちを貫いてきた冬樹が。
バイトを続けられるのも、そのせいだ。
春『冬樹、自分が出場者だって忘れているね』
そんな冬樹を眺めながら春。
夏『あれは現実逃避だと思うわよ』
夏の扇が呆れたように揺れる。
秋『思ったより、視聴者が多いですね。
もしかすると、いけるかも知れません』
秋だけは、分析を続けていた
【決勝戦第二試合視聴室】
管理者:現在、1名がマックスです。
管理者:現在、5名が混雑です。
『なあ、新人のところ混雑しているよ』
『そりゃ珍しいからじゃ?』
『それもあるんだけど。
どうやったら、あのお題で
ポータルになるか謎なんだよ』
『絵を描かせたんだよな。なんで?』
『その考察をするために観に行って来る』
『ちょっと待て、俺も参加する』
【決勝戦第二試合結果】
「なあ、店長、天楽に勝てると思うか?」
三姉妹に冬樹が聞くも。
春『ねえ冬樹。自分の立場、判っているの?』
珍しく、春の冷たい視線。
夏『まあ、結果は変わらないから好きにさせなさい』
夏は、冬樹の方を見もしない。
秋『もしかすると。
このまま残っているかもしれません』
秋の言葉に冬樹が首を傾げる。
「確かに、今回も一番に動画はあげたけど。
残っているのは、Aグループの上位陣ばかりだし」
決勝戦、20人の中の10人になれただけでも。
冬樹には十分だと思っている。
そして、鳴る通知音。
今度は冬樹も中を確認する。
「はい?なんで残った」
そこには、決勝第三戦のお知らせが。
冬樹の向こうで、結果を確認していた三姉妹。
春『さすが冬樹』
何故か腰に手を当てて、胸を張る春。
夏『当たり前でしょう』
そういいながら、夏のツインテールが解けた。
これは、なんの合図なんだ?
あ、耳が赤い。照れ隠しなのか。
秋『よく頑張りました』
秋が眼鏡をはずし、笑顔で褒めてくれた。
「あ、ありがとう」
そう言いながらも冬樹の頭の中は。
Aグループだった人でも落ちるんだ。
そんな感想で一杯だった。




