再現する
【冬樹の部屋】
秋『人様の動画よりも、主様の動画です』
いきなり、秋に言われて思考を戻す。
「そういや、サポートキャラって。
目の前の見本だと微妙にズレるんだな」
今日のバイト先で見てて思ったことだ。
夏『データなら正確よ』
確かに、それはわかる。
じゃあ、この形ならどうだろう。
説明しながらノートに書く冬樹。
秋『順番が大事かも知れません』
確かにお題によるか。
画面の向こうの三姉妹。
春『やっほー。春だよ。
今日はね、ジェスチャーで想いを伝えようと思うの』
春の言葉に頷く三姉妹。
秋『主様の動きを私たちが真似をします。
元の動きは同じなので、答えを推測しながら観てください』
夏の扇が揺れる。
夏『ラストが私。そのあと答えを言うから、ちゃんと当てるのよ』
リズミカルな音楽と共に最初に動き出したのは春。
うんうん頷き。
手をバンザイ。
くるくる回る。
次は秋。
指を顎に当て頷き。
目を見開き、手を挙げる。
そのまま退場。
ラストは夏。
気だるげに何かを見つめ頷く。
扇が素早く揺れ、ぱさりと落ちる。
そして、髪がゆらゆら揺れる。
夏『答えは、四天王の1人が復活したのにビビったよ』
本当に、このお題。
伝わるのかと思いながらアップロードする。
【コメント欄】
通りすがり
『春ちゃん可愛い』
頂点
『逆に、元の動きをみたい』
院展
『頷く、ビックリ、走る。
夏様は走らないから、髪で表現したと推測』
点々
『なるほど。秋ちゃんが逃げた訳じゃないと。
嫌われて無ければよきよき』
匿名者
『いや、案外おじいちゃんで、嫌がられたとか?』
点々
『涙目』
秋
『あれは、皆様にお知らせに行ったのです』
点々
『秋ちゃん!!ありがとう!
アイラブユー!』
頂点
『なんか、もう隠す気無いでしょう(ため息)』
【冬樹のバイト先】
『いらっしゃいませ』
何故か接客ロボではなく、伝五郎さんのサポートキャラに出迎えられる。
「何故?」
冬樹の質問に首を傾げるサポートキャラ。
『伝五郎様の代わりです』
いや、接客ロボ居るよね?
ふと気がついて、休憩室に行く。
そこには、正座している伝五郎さんと。
目の前で仁王立ちの店長。
「わし、骨折したんだけど」
伝五郎さんの声。
「そんな人は、天井を蹴って回転しません」
あ、あの通行人の人。
やっぱり投稿したんだ。
「「冬樹くん」」
2人同時に振り向く。
…逃げたい。
「サポートキャラに、動きを教えていた。
間違いないね?」
店長。
伝五郎さんを尋問しているみたいになってます。
そして、証言台に立たされた気分です。
「褒めてもらいたかった」
さすがに冬樹も、主語が無くてもわかる。
「褒めてくれた」
それは、違うから。
営業トークじゃなかった。礼儀です。
ため息を吐く店長。
冬樹を見る。
この雰囲気だと、店長も知っている。
諦めてスマホを出す。
店長が撮影機械を取り出した。
疑問に思う冬樹。
「一回、緊急動画出してみようか」
えっと、コラボ企画?
「大丈夫。大会に出て無い人なら、問題なく出せる」
それは助かりますけど。
店長。台本まで書き出した?
もうそれ、俺の企画じゃ無いです。
「大丈夫。ほら読んでみて」
えっと。
再現ですか?
動画の向こう、伝五郎さんが正座をしている。
反対側には、秋の後ろ姿。
「秋ちゃんのことが好きなんじゃ」
伝五郎さん、告白した。
「ごめんなさい。動画で無茶する人は…困ります」
秋、セリフには嫌いと書いてたけど。
困りますに直した。
「でも、せめて、せめて歌だけでも」
伝五郎さん、見苦しいです。
いや、迫真の演技…違うな。
一緒に、ラスト・ステージを歌う2人。
「もう一曲」
調子に乗る伝五郎さん。
冬樹は、そっとスマホを仕舞った。
「冬樹くん、ありがとう」
そう言いながら、データをくれる店長。
「編集!編集!」
隣でわめく伝五郎さん。
いや、このデータは渡しません。
【冬樹の部屋】
げっそりとして戻った冬樹。
夏『お疲れ様』
夏が冬樹を扇で仰ぐ。
夏に心配されるとは、よっぽどだったようだ。
春『でも、2本分の動画になったね』
データを確認しながら春。
秋『そうですね。告白シーンと歌のシーンに分ければ』
2人同時に動き出す。
告白シーンは春。
歌のシーンは秋。
演出は少な目ながら、インパクトは強いはず。
そう思いながら、動画の編集を眺めていると。
夏『オファー来たわよ』
…今度はなんでしょうか。




