大会に出る?
【冬樹のバイト先】
外は、雨が降っている。
そんな日は、店は暇というのが定番。
「冬樹くん、配信していたよね。
動画バトルには出ないの?」
世間話のついでのように、店長に問われる。
配信を始めてしばらくして、店長には話をした。
でも、さすがに配信名までは伝えていない。
見つかってはいないはずと冬樹は考え直す。
「動画数100本なんてハードル高いですよ」
軽く冗談のように返す冬樹に。
店長の顔は思ったより真面目だった。
「今年から、予選は半分でよくなったんだ。
本戦に出る時は、100本にする条件付きだけどね」
それ、小冊子に書いてない話だ。
「去年、四天王2人が引退したよね」
それは知っている。
TENINNと天金。
TENINNは、産休に入ります。
と、突然の引退宣言。
天金は、無茶な動画撮影が原因だという噂。
「それで、スポンサーとしては。
視聴者が減るのは避けたい。
なら、参加者を増やせばと。
半分にすることで、ハードルを下げたんだよ。
参加者が増えれば。
必然的に最後まで見る人が増えるからね」
これ、参加しろということでしょうか。
「去年の予選でも、かなりの人数が集まったからね。
本戦にでるのなんて、ほんの一握り。
記念に出るのは、アリだと思うけどね」
それ、出ろという話ですよね。
【冬樹の部屋】
秋『予選の応募要項ですね。確認します』
秋の辞書が高速で捲られる。
秋『応募要項確認。
予選締切日までに、
50本の1分の動画を投稿。
投稿基準は、閲覧数100以上が条件。
ただし、類似、既出は省きます』
冬樹の前に詳細な大会応募要項も表示される。
「応募締め切り1月後か。今、何本ある?」
冬樹の声かけに、夏がスクロールし確認。
夏『規定を満たしているのは。20本ですわね』
春『冬樹、大丈夫だよ。1日2本出せば』
秋『主様の強みは、既出作品が無いことです』
三姉妹がほぼ同時に喋り出す。
「要するに、1日2本出さないと。
閲覧数で規定に満たない可能性がある」
三姉妹が頷く。
「俺のノートをチェックすれば可能性はある」
再び頷く三姉妹。
「秋。ノートから使えそうなネタ100本探して。
使えるかどうかというより。
期限までに出来るかどうか重視で」
秋『かしこまりました』
秋が冬樹のノートの前に行く。
高速で浮き上がり、次々と処理されていくノート。
春『春もお手伝いするよ?』
春の後ろでも、夏が仕方なさげに頷いている。
「秋にリソース割かれたら。
2人共ほとんど動けないだろ。
手伝ってもらいたいことがあるんだ」
取り出したのは、冬樹が封印したはずの日記帳。
「最近、歌を聞いていて思い出したんだ。
昔、曲を作ってみたくて、歌詞をかいていたこと。
その当時は、歌にする勇気がなかったけど。
2人なら、良い感じに出来そうな気がする」
日記帳を見る春と夏。
しばらくして、2人で顔を見合わせる。
夏『本格的には、無理ですけど』
リソースが割かれているから、それは仕方ない。
春『歌詞の整えならお任せ』
春の頼もしい言葉。
冬樹が、ノートを見て鼻歌を歌う。
そこに、春が歌詞を載せる。
夏がそれを元に曲にする。
夏『これ。秋が歌う方がいい気がしますわ』
春の声、夏の声両方聞いた夏の判断。
春『確かにそうかも』
同じく、聞き比べた春も同意見のよう。
冬樹が、秋の状況を見ようと顔を上げた時。
秋『解析完了です』
秋の声が響いた。




