クラッシュ・ゴリガン
蒼太の上司である『N』は、コードネーム108ソルレッドの他にもコードネーム109グライアイまで援護に送ったといういう。
「109まで増援によこすとは……」
苦い顔をしている蒼太は、AIに「ショルダーホルスター」とつぶやくと、音声認識により、イクシード・スーツの左肩にショルダーホルスターが形状記憶合金により生じて、そこにイクシード・ハンドガンを収めた。
マリがライダースーツの襟元のスイッチを押すと、赤と黒を基調としたイクシード・スーツ変化した。
これからの戦闘を予想した準備である。
「アクアブルー」
「なんでい、ソルレッド?」
ソルレッドが何かを投げ、思わずキャッチした。
「これはお前のつけている腕時計と同じだな……」
「開発部が新しく作った腕時計型通信端末……スマホのビデオ通話より、軽くて丈夫……象が踏んでも壊れない」
「へえ……開発部は次々と便利なものを発明するねえ」
「それと、一番大事な機能が……」
「ちょっと、蒼太くん、大丈夫!?」
霧をかきわけ、和鷹マリと墨江潮五郎博士が屋敷からこちらへ心配してやってきた。
「銃撃がやんだみたいだから様子を見にきたんじゃが、米軍の特殊部隊とやらはどうなったんじゃ?」
「三名とも森に撃墜しましたが、まだ死んではいないでしょう。今の内に東京へ行きましょう」
「うむ……そうじゃな。玉匣はこのアタッシュケースに入れたわい」
墨江博士が右手にもったケースを指し示す。
マリが蒼太のガンホルスターを見て驚き、
「ちょっと、蒼太くん、それって本物の銃じゃないの?」
「ああ、おれの相棒、イクシード・ハンドガンだ」
「ちょっと、あなたまだ十代でしょ。銃刀法違反よ!!」
「んなこと言っている場合かよ。おれはエージェントだから銃火器のプロだぜ」
「そっか……で、こっちの人は?」
「ああ、俺の同僚で、樹里という」
「ああ……イクシード・フォースのエージェントさん?」
樹里がきっと蒼太を見て、
「待て、蒼太。なぜこの女性がイクシード・フォースのことを知っている? 何者だ!?」
「ああ……ちょいと訳ありでな……」
蒼太が気まずげにポリポリと頭をかく。
「イクシード・フォースのことは一般人には秘密……秘密をもらせば……」
剣呑な雰囲気を感じ、マリが蒼太の後ろに隠れた。
「えっ、ちょっと何? この人、わたしを始末する気?」
「いや、組織の記憶を消させてもらう……イクシード・フォース本部に専門の記憶除去装置がある」
「なによ、それ!? メ○・イン・ブラック的な、あの謎装置のこと?」
「大丈夫、痛くない……はず」
「それ後遺症があるんじゃないの、嫌よっ!?」
ぎゃーぎゃー騒ぐマリにげんなり顔の蒼太が、
「まあ、待て、樹里。実はマリさんは玉匣に無関係じゃない。開かずの箱といわれた玉匣を開けることができる唯一の人物なんだ」
「なに!? それはどういう……」
樹里が刺すような視線でマリを見つめた。
「そんなこと言われても、わたしにだって分からないわよ!!」
そのとき、濃霧の向う、屋敷表の方で何かが壊れるような轟音がした。
「いったい、どうした!?」
キュロロロロ……
蒼太のポケットにあるスマホが鳴った。
「おう、月間か。もう三度目だぞ。マスク強盗にフライング・ヒューマノイドときたら、次は何だ?」
「ば、化け物が出ましたあっ!!!」
月間が今までになく怯えた感じだ。
「なんだとぉ!?」
「半魚人が集団で襲ってきたんです!!」
「アビサロンの先兵が出やがったか!!」
「一体なにが起こっているんです!?」
「悪いが戦闘準備だ。そっちに行くまで車で逃げていろ」
スマホを切る。蒼太がソルレッドを見て、
「アビサロンの先兵、海童が襲ってきやがった。こっちに来るぞ!!」
「いよいよか……」
二人は銃の弾倉を入れ替えた。
弾倉はEスーツの両太腿のカーゴポケットに収納されている。
「黒根津助手の書いた脅迫文が本当になってしまいやがった……しかし今回は、ミイラ男に始まり、ドラキュラ、フランケン、狼男と来て、本物の半魚人か……あとは透明人間がいれば、モ○スター・ホテルのメインキャラが揃い踏みだな」
「何を冗談言って……むっ!!」
「はっ!!」
蒼太と樹里は同時に殺気を感じた。
蒼太がマリを、樹里が墨江博士を抱えて左右に跳躍した。
二人のいた地点に冷蔵庫ほどもある大きな岩が激突し、土砂が盛大に飛散した。
「きゃああっ!! いったい何事なのぉ!?」
二人のエージェントが岩の飛んできた方角を見ると、森から大柄な軍服の男が出てくるのが見えた。
「てめえはゴリガン中尉!! 生きていたか」
特殊精鋭兵は背中のジェットパックを地面におろし、ヘルメットと割れたゴーグルを投げ捨てた。
素顔は金髪をGI刈りにし、顎の先が割れた青い目のマッチョマンだ。
鉄の手袋をはめた両の拳を胸前でガチンと合わせた。
「さっきはかましてくれたな、ミスター・ソウタ……第二ラウンド開始といこうか!!!」
「おい待て、今ここに半魚人どもが襲ってきている、一時休戦といこうや……」
「ごちゃごちゃうるさい!!」
怒りに我を失ったゴリガン中尉が問答無用に蒼太へ駆け出し、ジャブを繰り出してきた。
それに対し、蒼太は両手でブローの連打を受け止め続けた。
「米兵の格闘技といえば、モ○タル・コンバットか!?」
「そりゃゲームだ!! これはアメリカ陸軍式格闘術だ!!」
アメリカ陸軍式格闘術は、ブラジリアン柔術を中心に、レスリング、柔道などを加え、打撃技にはムエタイやボクシング、ナイフ格闘術はフィリピン武術を取り込んだものだ。
蒼太が右のパンチを繰り出し、ゴリガンが機敏に避けた。
そこへ蒼太の回し蹴りが首を狙う。
が、中尉は腕でガードし、払いのけた。
思わず体勢が崩れた蒼太。
そこを、中尉の左のフックが蒼太の脇腹をヒットした。
だが、イクシード・スーツの衝撃吸収能力でノーダメージだ。
「そんなヘナチョコパンチじゃ効かねえよ!!」
「なら、これならどうだ、ハーキュリー・ブロー!!」
中尉のはめた強化グローブが発光し、中尉が体重を乗せたストマック・ブローが、蒼太の腹にヒットした。
凄まじい拳圧に、蒼太が足を踏ん張った。
「ぐふっ!!」
ズザザザザザザ……
踏ん張った足が、背後に3メートルも押された。
ハーキュリー・ブローがイクシード・スーツの衝撃吸収能力を上回り、ジーンと腹に効いて、動きが止まる。
「トドメだっ!!」
ノックアウトボディブローが蒼太の胸に迫った。
だが、蒼太はその手首を掴んだ。
と、思ったら、ゴリガンの視界が宙を回転し、気が付いた時には地面に叩きつけられた。
「ぐわあああっ!!」
蒼太はゴリガンの手首をひねって、逆関節を極めた。
そして相手の体勢を、テコの原理を利用して、地面に叩きつけたのだ。
相手のパワーを見事に乗せたので衝撃も凄まじい。
だが、すぐにゴリガン中尉は腹筋を使って立ち直り、ファイティング・ポーズをとった。
ふらつく頭を左右にふり、唾を吐き捨てた。
「なんだ、今の技は? ジュウドウの背負い投げか?」
「家伝の海雲寺流格闘術・渦潮返しだ!!」
「おもしれえ!! 本気でいくぜ!!」
蒼太はゴリガン中尉と激しい戦闘を繰り広げた。
「喰らえっ!! ハーキュリー・ピストン・クラッシュ!!」
「海雲寺流・浪飛沫」
ゴリガンの米軍式格闘術の猛打に、蒼太の海雲寺流連打技が応じる。
「YEAH!! YAAARGH!! 」
「だだだだだだだだだっ!! とあっ!!!」
屋敷と森林の間の草原に、霞がかった人影が、互いに殴り合い、蹴飛ばし合いの攻防を繰り広げていた。
「何なの!? 蒼太くんとゴリガン中尉の姿が霞んで、よく見えないわ!?」
「わしもじゃ……一体どうなっておるんじゃ?」
マリと墨江博士が樹里を見る。
「蒼太とゴリガンは互いに強化スーツを装着している……いわば超人同士の戦いは一般人にははっきりと目視できない」
「なにそれ……凄い……」
「まるでSFコミックの世界じゃな……」
焦ってきたゴリガン中尉が、
「このままでは埒が明かぬ……奥の手を使わせてもらうぞ!!」
「なに!?」
ゴリガン中尉は軍服のカーゴポケットから無痛注射器を取りだし、己の首筋に薬液を注入した。
「なにを注射しやがった!?」
「これは米軍お抱えの悪魔的科学者、ドン・カルロス・パルチート博士が作った特殊強化剤だ。これを服用すれば最強の人類になれるのだ。ただし、ちょいとばかり理性が吹っ飛ぶのが難点だがな……」
特殊強化剤を体内に取り入れたゴリガン中尉は、みるみるうちに毛むくじゃらのゴリラ人間に変身していった。
「グフウ……グルルルルル……」
「げっ……てめえは、強化人間だったのか!?」
「そうだ……強化人間でも最強の戦闘力をほこる……強化人間型式、キラー・エイプだ!!」
アメコミ風、DB風格闘シーンを書いてテンション上がりました。
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次回は6月8日昼頃更新予定です。




