米軍特殊飛行小隊ロケットガイ
「アメリカでも未確認飛行物体について調査し、アビサロンの存在を把握している。アビサロン文明は太古の昔に太平洋にあった。太平洋にあるポリネシアを始め、イースター島、マリアナ諸島、ハワイ諸島などに点在する島々にある巨石や海底遺跡の碑文にその事が書いてあり、我が国の科学者や考古学者たちが調査中だ。調査解析班によると、なんでも日本の相模湾の海底には、地震を起こして大洪水を起こす気象操作兵器――『ビヒモウス』という物がある遺跡があることまでわかった」
ゴリガン中尉の言葉に蒼太たちは驚いた。
「気象操作兵器だって!?」
気象操作兵器とは、人工的に雨を降らせたり、人工地震を起したりして、気象を操作し、敵対する国家や地域に損害を与える武器だ。
大国が研究しているという噂があるが、いまだ成功例はない。
「気象兵器って、伏木先生もいっていたけど、陰謀論者の妄想じゃなかったの!?」
「なんじゃと!? アメリカはそこまでアビサロンの碑文を解読しておったのか……すると、『契約の鍵』の意味も……」
「ああ、『契約の鍵』こそが、地震発生装置『ビヒモウス』を封印した兵器庫の解除キーであり、地震発生装置の起動キーになるらしいと分かった。そいつは日本人なんぞに持たせるのはもったいない。わが米国こそが有するべき代物だ」
「ちぇっ、相変わらず、アメリカってのは、頭ごなしの強権主義だな。親分が差別主義者なら、子分も上にならって、えばり腐ってやがらあ」
「なんだとっ!!」
「話し合いで解決するのではなく、武力でねじ伏せ、何でも奪い取ろうとしやがる……あいにくだが、アメリカに渡せばなんでも兵器利用されてしまうからな。渡すわけにはいかないぜ」
「口だけは達者だな。力の違いってものを教えてやろう!!」
ゴリガン中尉は両手に鉄の手袋をはめていた。
右側にある庭の大木の幹に、手手袋で手刀を入れた。
すると大木がメリメリと折れていった。
「なんだと!?」
「これは米軍所属の軍事兵器開発局が開発した強化グローブ『ハーキュリー・アーム』だ。通常の成人男性の握力・腕力の100倍もの威力を発揮し、鉄棒をひん曲げ、装甲板をも穿つパワー機能があるのだ!!」
得意げに話すゴリガン中尉は、ジェットパックのレバー操作をして、窓ガラスが割れたこちらに向ってきた。
「おれの仇名は『クラッシュ(粉砕)』だ。きさまもスーツごと粉々にしてくれるわ!!」
中尉が得意げに話す間に、蒼太が膝をたわめ、思いきり跳躍した。
「なにっ!?」
蒼太が空中4メートルを軽々と飛び上がるとは、さしものゴリガン中尉も想定外であった。
イクシード・スーツは身体機能を高めてくれるのだ。
跳躍者はクラッシュ・ゴリガンの脾腹に飛び蹴りをきめた。
「ぐはぁぁ!!」
ゴリガン中尉がくの字に仰け反って、塀の外にある森林へ激突した。
大木を押し倒し、さらに奥にある樹木にぶつかり、それも押し倒した。
恐るべきEスーツのパワーだ。
蒼太はその反動を利用して、庭の真ん中に飛び降りた。
「クラッシュ・ゴリガンだか、フラッシュ・ゴードンだか知らねえが、これ以上屋敷を破壊してもらっちゃあ困るんでね!!」
「おのれ、よくも隊長を!!」
右側にいた米軍特殊飛行部隊『ロケットガイ』のジャド・コディ軍曹が、両手にもったM240機関銃の弾帯の初弾を給弾口に押し込み、装填ハンドルを操作して掃射した。
M240機関銃は、アメリカ軍制式採用の中流級の汎用機関銃で、7.62×51mmNATO弾をガス圧利用で発射する。
「ジャップめ……これで蜂の巣だ」
M240機関銃から、硝煙がたちこめ、給弾ベルトがこぼれた。
毎分650~950発の弾丸を撃ち出し、標的を粉々にしてしまう。
「おい、やりすぎだぞ、コディ!!! 無駄弾を使うな!!!」
左側の同僚、ベック・ロジャース軍曹が止めにはいった。
「へへ……つい頭に血が昇ってしまったぜ」
コディ軍曹がニヤリと笑顔を見せる。
渋いハンサム顔だが、前歯がないのが残念だ。
掃射をやめると、硝煙がはれていく。
「なっ……あれを見ろ!!」
ロジャース軍曹が蒼太のいた地点を指差した。
そこに、人影が倒れもせずに立っていた。
「なんだとっ!?」
コディ軍曹が目をむいた。
イクシード・スーツを身体におおった蒼太には、銃弾の穴ひとつついてなかったのだ。
「ば、ばかな……ス○パーマンか、てめえはっ!?」
イクシード・スーツは、弾丸に耐える防弾装甲能力に、耐熱耐寒機能を装備する強化防護服である。
本来は、「移動可能なマニピュレーター(モビル・マニピュレーター)」として、マニズ財団が宇宙作業用・深海作業用に開発が進められていた。
さらに人間が着用して筋力を増強する強化外骨格でもあった。
装着者の皮膚表面の生体電位信号を読み取り動作する。
内部に装着された電動のアクチュエーターや空圧、人工筋肉などの動力を用いた超薄型のアシスト・スーツである。
人間の動きをそのままフィードバックして動かせる「マスター・スレイブ方式」で、音声や思考による制御機能を採用していた。
イクシード・スーツは、装着者の身体能力を高め、人間以上の聴覚、視覚・腕力を発揮する。
脚力強化で、時速80kmで走ることも可能。
強大な跳躍力で五階建てビルもひとっ跳びできる。
ただし、長距離ジャンプやホバリングはできるが飛行能力はない。
パワー強化能力により、自動車などの重量物を軽々と持ち上げて運ぶことも可能だ。
さらに普段は形状記憶合金を用いて、学生服などの普段着に偽装できる優れものの強化スーツでもあった。
「こんどはこっちの番だぜ!!」
蒼太は非常用ナップザックから銃を取り出した。一見して、普通の9ミリ拳銃にしか見えない。
黒い稲妻の攻撃で、アストンマーティンがガードレールを突き破って崖から転落したあと、このナップザックだけは持ち出した。
それは、この銃器だけは、替えの利かない相棒であったからだ。
蒼太はハンドガンで通常普通弾をコディ軍曹に三発射った。
しかし、飛行防御服は普通弾をはね返した。
「けっ、そんなただのハンドガンじゃ、特殊飛行防御服にかすり傷ひとつつかねえぜ!!」
嘲笑うコディ軍曹。
特殊飛行防御服は、背中のジェットパックの高温から装着者を防ぐにたるほどの耐熱耐寒耐衝撃能力をもつ強化スーツである。
「やるな……だが、イクシード・ハンドガンをバカにしていたら泣きをみるぜ!!」
蒼太が空中に滞空するコディ軍曹に銃口を向けた。
「イクシード・ハンドガン、フレシェット弾モード!!」
「だから無駄だと……なに!?」
銃口から矢状の弾丸が発射された。
矢状の弾丸は、M240機関銃の銃身を貫通し、ジェットパックの両側の飛行翼を貫通して、鉄板をひんまげてしまった。
フレシェット弾は、ライフル銃を凌駕する初速と貫通力がある。
ただし、軽量であるため、横風の影響を受けやすいため、ライフル弾ほどの命中精度はない。
コディ軍曹はあわてて機関銃を手放したが、引火した銃器が爆発し、翼が折れて、ジェットバックの方向転換が効かない。
「ガッデム(チキショウ)!!」
コディ軍曹が悔しげに森の繁みに落下していった。
イクシード・ハンドガンとは―一一見普通の9ミリ拳銃に見えるが、掛け声ひとつで様々な種類の弾丸を発射できる多目的万能銃だ。
音声認識により複数の発射モードが使用可能。
オートマチックやセミオート、速射モードにも変えられる。
他にも、炸裂弾や閃光弾、曳光弾、スタンガン、破壊弾、白熱弾、ガス弾などに音声ひとつで切り替え可能だ。
イクシード・フォースのメカニック部門開発主任の多々良一徹こと、コードネーム『T』が開発した多目的銃火器のひとつである。
「イエロー・モンキーめ!!」
特殊飛行小隊『ロケットガイ』の残った一人、ロジャース軍曹が両手に持ったアサルト・ライフルを蒼太に向けた。
「おいおい、.338ラプア・マグナム弾ごときじゃイクシード・スーツに傷ひとつつけることもできないぜ!!」
.338ラプア・マグナム弾は、一般的なライフル弾である。
1000メートルまでの距離であれば、軍用ボディ・アーマーをも貫くことができる。
だが、機関銃のNATO弾を数千発受けても平気なイクシード・スーツを貫通するとは思えない。
「ふふふふ……こいつは戦車や軍艦などの装甲をも打ち砕く徹甲弾だ……イクシード・スーツとやらをも貫いて見せるぜ!!」
徹甲弾は、第一次世界大戦から第二次世界大戦中期にかけて、歩兵が装甲車両を破壊するために使用した、大口径の携帯式ライフル銃で敵戦車の装甲を貫通させて、車内の乗員や重要機器をお無力化するために作られたものだ。
徹甲弾は、火薬による爆発による破壊ではなく、極めて硬い金属の塊が持つ『運動エネルギー』によって装甲を射ち抜く。
対戦車ライフルは全長1.5m以上、重量10~20を超える巨大な銃で、徹甲弾も大型であった。
しかし、第二次世界大戦後期に戦車の装甲が急激に厚くなり、ライフル弾の運動エネルギーで装甲を貫通することはできなくなってしまった。
対戦車ライフルと徹甲弾に代わり、より高い装甲貫通能力を持つ、バズーカなどの成形炸薬弾(HEAT弾)やロケットランチャーに取って代られてしまった。
現代となり、対戦車ライフルは消えたが、大口径銃は、対物ライフル(アンチマテリアルライフル)へと継承されていった。
一方、徹甲弾は小型化が進んだ。
弾体を小経化したAPFSDSS弾や、自己鍛造弾EFPによる小型化、レールガンの小型徹甲弾などだ。
「なにをっ!?」
蒼太がイクシード・ハンドガンをロジャース軍曹に向けた。
だが、ロジャース軍曹はジェットパックを操作して80メートル上空に滞空していた。
ハンドガンの有効射程は、一般的に25~50メートル。Eスーツの跳躍距離でも届かない距離だ。
対して軍用アサルト・ライフルの射程距離は数100メートル――圧倒的に分が悪い。
「ちっ、考えやがったな!! さすがは特殊精鋭兵……一筋縄ではいかないようだ」
蒼太は絶体絶命の危機におちいってしまった。
この小説で、闇バイトの事を書いたら、現実で悲惨な事件が起こり、参ってしまった。
ただの偶然だとは思うが、クライマックスの関東平野ディザスターシーンはカットすべきかなあ……
いや、考えすぎか。
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