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マスク強盗団

「アビサロンにとっては、オヤジの発明した新型燃料の情報さえもらえれば、記憶を消して生かしておいても有益になると思ったんだろう。だが、案に相違して拉致した記憶を思いだしてしまった。オヤジはアビサロンのことを人類に話し、国にアビサロン対抗組織まで設立させようとした。アビサロンにとって、危険人物とみなされてUFOで旅客機を始末しやがったんだな……政府は国民がパニックになると考えて、UFOによる旅客機爆破事件を事故ということにして隠蔽しやがった」


「そんな……」


「だから俺は、オヤジの復讐のためにも、身体を鍛え、勉強もがんばって、イクシード・フォースに入隊した」


 和鷹マリは、海雲寺蒼太の壮絶な人生の一端を垣間見て、言葉を失ってしまった。


「ねえ、蒼太くん、イクシード・フォースって何なの? 蒼太くんの所属する組織なの?」


「ああ、まあそんなところさ……日本を影から守る秘密組織だと思ってくれ。オヤジの話に賛同する数少ない協力者がいた。マニズ財団の会長だ」


「ええっ!? 会長って、マニズ財団の摩尼洲弦蔵まにずげんぞう氏のこと?」


「ああ……」


「とんでもない大物ね!!」


「おっと、こいつは絶対の内緒だぜ。会長はおれのことを知って、秘密組織にさそってくれたんだ。ただ、入隊するには厳しい試験があったけどな」




『イクシード』とは、日本のGNP(国民総生産)の三割を占めるマニズ財団の総帥・摩尼洲弦蔵が創設した民間軍事組織である。


『イクシード』は日本国を狙うテロ組織から国際謀略団、さらに超常的侵略組織にいたるまでを極秘裏に対処する秘密防衛組織である。 


 総本部は静岡県の湾岸および駿河湾沖にあり、日本各地に支部が存在する。


『イクシード・フォース』はそれに属する対侵略組織防衛チームだ。 


 海雲寺蒼太はイクシード・フォース情報部に属する特別捜査官エージェントで、エージェント・ナンバー107(ワン・ハンドレット・セブン)ナンバーを有し、通称「アクアブルー」と呼ばれている。


 銃火器と戦闘術、情報処理術のA級ライセンスをもち、海雲寺流格闘術の有段者であった。

 車や航空機、船舶の免許はもちろん、イクシード・フォース固有の乗り物や戦闘兵器の操縦も得意分野であった。

 特別捜査官は、侵略組織の巻き起こす事件の捜査と検証などが主な任務である。


 海雲寺蒼太の今回の敵は、侵略者アグレッサーコードネーム『アビサロン』といい、恐るべき超科学力をもつ謎の海底生命体であった。




「そうだったの……わかったわ」


 和鷹マリは言葉を失った。

 この普通に見える高校生は壮絶な覚悟をもって秘密組織に属しているのだ。


「わたしもウカツに首をつっこむと、テレビ局の左遷だけじゃすみなさそうよ」


「分かりが早いね、マリさんは」


「でも不思議ね。人類に知恵や文明をあたえてくれた超民族の子孫が、現代になってUFOで暗躍して人間を襲うなんて」


「それじゃが、碑文を解読しておると、アビサロン人は決して一枚岩ではなかったとある」


「まあ……人間の国や組織と同じですね」


 中東のスンニ派とシーア派、中国共産党の太子派と上海閥と団派、急進派と穏健派、右派と左派、どこの国にもある派閥争いはアビサロン人にとっても例外ではないようだ。


「そうじゃ。アビサロンには、人間にも知識を与えてくれる平和的なラグーナ派という民族が多くを占めていたが、それとは逆にギルドール派という民族は、地上に災いをもたらし、人類を一掃してしまおうと目論んでいるらしいのじゃ」


「えっ!? 人類をですか!?」


 まるでSF小説に出てくる侵略者のやり口であった。


「ともかく、墨江博士を東京までお送りします。そして、この女性は真樽子駅で下ろしますんで」


「ちょっと、蒼太くん。イクシード・フォース本部まで取材させて!!」


「駄目に決まっているだろ!!」


「もう、急によそよそしくなっちゃって……そうだ、せめて玉手箱の写真を撮らせてよ」


 マリがスマホの写真機能を出して、机の上に置いたままの玉匣を手にとった。


「おいおい、マリさん。いい加減に……」


 そのとき、逗子箱が急に発光しはじめた。


「えっ、おいおい……マリさん、玉匣に何をした!?」


「私にも分からないわよ。私が触っただけで、箱が光りだしちゃったのよ……もしかして、壊しちゃったの? 弁償しなくちゃいけないかしら?」


 厨子箱の六角形の文様に複雑に光が走り、箱の中央部が花弁を開くように開閉していった。

 中には赤いクッションのような物があり、中央に黄金に輝く金属の鍵のような物が見えた。


「なにこれ!? 中に鍵のようなものが……」


 墨江博士はまじまじと黄金の鍵を見て、


「信じられん……これはもしや、碑文にある『契約の鍵』ではないのか!?」


「えっ!?」


「おいおい……マリさん、あんたは一体何者なんだ!?」


「何者って、ただの安月給のフリーアナウンサーよ!!」


 マリがふたに触れると、匣はふたたび閉じた。


 キュロロロロロ……


 突然、蒼太のスマホの着信音が鳴った。


「なんだ、月間か。こっちは取り込み中だ」


「それどころじゃないですよ。墨江邸の右側の脇道から突然バンが出てきて、塀に横づけし、中から怪しい男が二人出てきて、塀を乗り越えようとしてるんですよ!!」


「なんだとぉ!!」


 海雲寺蒼太が書斎から出て、廊下に回って、窓から外を仰ぎ見た。

 マリもついてきて一緒に覗く。


「なんだ、マリさん。玉匣と鍵まで持ってきたのかい?」


「あっ、ついうっかり……あわてちゃって」


「低い塀の向うに怪しげなバンが一台止っている……リアウィンドウがスモークだ」


「それって違法じゃ……」


「強盗かもしれないぜ。二人組はどこだ?」


「強盗!? ひゃ、百十番しなきゃ!?」


「それじゃ遅いぜ!!」


 ガシャアアアアアン!!


 書斎兼研究室の中から大きな物音がした。


「なっ……なに!?」


「博士っ!!!」


 蒼太があわてて書斎兼研究室に駆け戻ると、部屋の窓ガラスが割れ、マスクをした男が三人いた。

 黒い革ジャンに黒ズボン、頭部はハロウィンパーティーで使うモンスターのマスクをかぶった三人組だ。手にそれぞれ武器を持っている。


「こいつらが窓ガラスを割って、急に入って来たんじゃ!!」


「ドラキュラー、じゃなくて、ドラキュラに、フランケンに、狼男の怪物三人組か……ハロウィンにはまだ半年早いぜ」


 ドア向うの廊下からこっそりのぞくマリが、


「きっとこいつら、最近ニュースになっているマスク強盗団よ!!」


 マスク強盗団とは、小金を持った老夫婦や一人暮らしの老人を専門に襲う強盗のことだ。

 やり口は闇バイトで集めた男たちに、ハロウィンマスクを顔に被らせ、侵入した家の住民をハンマーでなぐって昏倒させて、その間に金品を奪うという凶悪なものだ。

 ひところニュースで有名になり、模倣犯が日本各地に出没した。


「そこの学生、動くなよ!!」


 ドラキュラ・マスクが銃口を蒼太に向けて牽制した。


「墨江博士。玉匣と研究書類を渡せ!!」


 狼男マスクが墨江博士にナイフを突きつけた。


「何じゃと!!」


 蒼太は半目になり、マスク強盗を値踏みしはじめた。

 肝心の玉匣と中身の鍵はマリが持っている。

 マリのうっかりが、功を奏した。

 蒼太はマリに廊下から出るなと目で合図した。


「ほう、金目のものじゃなくて、玉箱と研究書類とは恐れいったな……お前達が脅迫状にあった海の御使い・海童第一号とやらかい?」


「そうだ。我々は海の御使い・海童第一号だ!!」


「はあっ? どう見てもマスク強盗団だろ」


「ちがう。早く匣と書類を渡せ」


「いいや、あんた達はアビサロンじゃねえな」


「なんだと!?」


 狼男マスクが驚いて叫ぶ。


「高度な科学力を持つアビサロンが、低俗きわまるマスク強盗を偽装するとは思えねえ。それに、海童第一号を名乗るんだったらなあ、せめて半魚人マスクをかぶれよ」


「ううっ……仕方ないだろ。最近の海童騒動で、半魚人マスクが人気で、店やネットオークションでも品切れ。転売ヤーが買い占めやがったんだから」


「しまらねえ話だな。お前らを影から操っている黒幕は誰だい? 怪物くん、だとは言わせねえぜ」


「ぐっ……」


 狼男マスクが指示を仰ぐようにドラキュラ・マスクを見た。


「こいつ、勘が鋭いな……始末しちまえっ!!」


 リーダー格らしいドラキュラ・マスクがフランケン・マスクに顎をしゃくった。


「おうっ!!」


 大柄なフランケン・マスクの男が、ハンマーで蒼太に殴りかかった。

 蒼太は攻撃を半身で避け、ハンマー男の足を払った。


「わわわわっ!?」


 フランケン・マスクの大男がバランスを崩して盛大に床に転げた。その脇腹を蹴りあげた。


「ぐふぅぅ!!」


 首筋にニードロップをかまし、強盗は白目をむいて気絶した。


「てめえっ!!」


 ドラキュラ・マスクがトカレフの銃口を蒼太に向けた。




 これも3年前の事件ネタなので、大幅にはしょりました。


 作品を読んでみて、面白かったと思っていただけましたら、広告下にある《☆☆☆☆☆》に評価していただけましたら、創作活動への大きな励みと活力になります。


 星の評価は日間ランキングの順位に大きく関わるため、今作のこれからに大きく影響いたします。


「今作を応援したい!」と思ってくださった方は、なにとぞ応援を、よろしくお願いいたします。


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