撃てない理由
第23話
「撃てない理由」
ノクティア艦隊は、ついにアステリア軌道空間まで到達した。
リングの空に、艦影が浮かぶ。
アステリア市民は息を呑んだ。
だが次の瞬間。
旗艦が、ゆっくり反転した。
ノクティア本星へ向けて、艦長ヴォルグの声が響く。
「おんどりゃー! 俺らはもう、あんたらの言いなりにはならへん!」
副艦長リーナも続く。
「我々はアステリア市民を撃たない。星野三姉妹を敵とは呼ばない」
若い兵士カイルが叫んだ。
「あの美人三姉妹の味方やで!」
艦内から笑いと拍手。
別の兵士が小声で足す。
「でも、スーパーコチョコチョは味わってみたい」
ヴォルグ艦長が真顔でうなずく。
「それは同意する」
アステリア通信ホールで、ミラたちは固まった。
ヒカリが震える声で言う。
「……味方増えたけど、目的が若干おかしか」
ユウがぽつり。
「平和的やけん、いいんじゃないかな」
そしてヴォルグ艦長は、ノクティア本星へ向かって最後に言った。
「寒くて燃料が必要なら、戦争で奪うな。燃料を分けてもらう代わりに、ノクティアの豊かな漁業資源や農業資源を分け合えばええ。それが人間同士の交流ってもんや!」
通信の最後。
艦長、副艦長、兵士たちが一斉に画面へ向かって――
「アッカンベー!」
銀河中が、数秒黙った。
そして爆笑した。
ミラは涙を浮かべて笑っていた。
「撃たんでくれた……」
アレンは静かにうなずいた。
「顔を知ったら、撃てへんのや」
ヒカリが胸を張る。
「笑いは越境、恋は中立、スーパーコチョコチョは希望たい」
「最後だけ変やけどね」
ユウが笑った。
リングの空から、艦影は遠ざかっていく。
それは完全な和平ではない。
けれど、兵士たちは撃たないことを選んだ。
命令ではなく、本音を選んだ。
次回予告
ノクティア艦隊の反転は、銀河中に衝撃を与える。
ノクティア政府は艦長たちを反逆者と断じるが、市民の間では「奪うより分け合う」という言葉が広がり始める。
一方、アステリアでは三姉妹と艦隊兵士たちを交えた、前代未聞の和平交流会が企画される。
次回、
第24話
「分け合う食卓」
奪い合うより、同じ鍋を囲もう。




