↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『銀河の果てでも博多弁』  作者: リンダ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
21/22

恋は中立、笑いは越境

 第21話

「恋は中立、笑いは越境」


 ノクティア共和国艦隊では、異変が起きていた。


 それは兵器の故障でもなければ、補給不足でもない。


 もっと厄介なものだった。


 兵士たちが――


 星野三姉妹の動画を隠れて見始めたのである。


 旗艦《グラキエス》。


 休憩室。


 若い兵士カイルが端末を開いている。


 映っているのはヒカリ。


『和平交渉用ギャグは危険物です』


 隣の兵士が吹き出す。


「また見とるんか」


「三回目や」


「もうセリフ覚えとるやろ」


「覚えとる」


 別の兵士が言う。


「わしはユウ派や」


「何が派閥や」


「優しいやん」


「いやミラやろ」


「いやヒカリやろ」


 その時。


 扉が開く。


 副艦長リーナ。


 一同直立。


 沈黙。


 リーナは机の端末を見る。


 画面には三姉妹。


 さらに沈黙。


 リーナはゆっくり言った。


「……私はミラ派だ」


 全員固まった。


「副艦長!?」


「以上だ」


 そのまま去っていく。


 兵士たち。


 大爆笑。


 しかし。


 艦内の空気の変化を政府は見逃さなかった。


 ノクティア中央政府。


 強硬派閣僚会議。


「艦隊内部に動揺が見られる」


「敵性放送の影響だ」


「三姉妹なる存在を危険人物に指定しろ」


 軍務大臣が怒鳴る。


「なぜ兵士たちが笑っている!」


 情報担当官が答える。


「面白いからです」


「そういう意味ではない!」


 会議室に重い沈黙が落ちた。


 一方。


 アステリア。


 リングポートの夜。


 リングが銀色に輝いている。


 ミラとアレンは、観測局近くの高台を歩いていた。


 下では街の灯り。


 遠くにはリング。


 そして少し離れたところには、ノクティア艦隊の監視光。


 アレンが言った。


「変な話やな」


「何が?」


「会ったの、まだ数日やで」


 ミラは少し笑う。


「そうやね」


「でも、何年も前から知っとる気がする」


 ミラの顔が赤くなる。


「百光年分しゃべっとるけんね」


「確かに」


 二人は少し黙った。


 リングの光が揺れる。


 アレンがぽつりと言った。


「ミラさん」


「ん?」


「もし全部終わったら」


「うん」


「今度は戦争とか関係なしに来て」


 ミラは立ち止まった。


 アレンは慌てる。


「いや、変な意味やなくて」


「どっちの意味?」


「え?」


「どっち?」


 アレンの顔が真っ赤になる。


 ミラも真っ赤。


 その時だった。


 草むらの向こう。


 ヒカリとユウ。


 完全に覗いていた。


「来た」


「来たね」


「今の告白一歩手前たい」


「九十点」


「あと一押し」


 そこへ。


 税関職員の青年と案内スタッフの青年までいた。


「何やってるんですか皆さん」


「観察」


「恋愛実況」


「やめなさい」


 四人は慌てて伏せる。


 しかし。


 石につまずく。


「うわっ!」


 全員転倒。


 派手な音。


 ミラとアレンが振り返る。


 沈黙。


 ヒカリが立ち上がる。


「こんばんは」


 ミラが叫んだ。


「お前ら何しよるんじゃー!」


 その頃。


 ノクティア艦隊。


 若い兵士カイルは窓の外を見ていた。


 アステリアのリングが遠くに見える。


「なあ」


 隣の兵士に言う。


「もし戦争始まったら」


「うん」


「俺ら、あの人たち撃つんかな」


 隣の兵士は答えなかった。


 少ししてから言った。


「笑った相手は撃ちにくいな」


 カイルはうなずく。


「うん」


 その言葉は、小さい。


 けれど確かな迷いだった。


 政府は敵と言う。


 だが。


 恋をする人もいる。


 家族と笑う人もいる。


 お好み焼きを失敗する人もいる。


 そういう相手を、本当に敵と呼べるのだろうか。


 リングの空。


 三つの月。


 百光年を越えた声。


 笑いは国境を越えた。


 恋も越えた。


 そして今。


 兵士たちの心にも、小さな疑問が生まれ始めていた。


 次回予告


 ノクティア政府は、ついに艦隊へ強硬命令を下す。


 だが兵士たちの迷いは広がるばかり。


 一方、ヒカリと税関職員、ユウと案内スタッフにも急接近の予感。


 そしてミラとアレンは、ついに二人だけでリング観測ツアーへ。


 次回、


 第22話

「命令と本音のあいだ」


 従うべきか。考えるべきか。

 その問いは、兵士だけのものではなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。