4.幕間―旅を始めたきっかけ―
小野先輩は私よりも二つ上で、大阪支社の営業部若手エースとして大規模契約を担当していた。
会議での取りまとめや鋭い指摘、メール返信の速さ、資料の作りこみ、同僚への気遣い、上司への進言、どれをとっても若手離れしていると鬼の課長ですら困り事があるといの一番に相談する相手だ。
そんなスーパーエースとコンビを組む私ははっきり言って凸凹コンビ感を感じる。どうにか足を引っ張らないようにしないと。
そんな気持ちで毎日がてんやわんやになりつつも、小野先輩と共に過ごしていた。
夏が過ぎ、秋になり、冬が訪れて、また、春になった。異動から約一年が経ち、大阪での仕事にも徐々に慣れ始めてきたころだった。
「へえ、甲斐。アンタ、カメラ好きなんや」
定時後、デスクでカメラバッグをリサーチしているときに声をかけられる。小野先輩だ。
「あ、小野先輩。まあ、下手の横好きですけど。今度、大学が一緒だった友達に神戸を案内してもらうんです。海と山が近くて景色がいいと言われたので」
「神戸か。ウチの地元やな。まあ、楽しんでおいで」
「はい!」
しかし、私は神戸に行くことなく、その日、自宅でごろごろしていた。その原因はひとえに。
(雨……しかも来週以降行こうと思ってたけど……はあ。予定が合わない……なんて日だ)
こうして私のカメラデビューを期した日は訪れることはなかった。
翌日。
「え? 結局行かんかったん?」
デスクでコンビニのナポリタンを食べる。やっぱり地元の洋食屋には到底かなわない味だ。いや、コンビニの人もきっとすごく考えて作っているのだろうけど。
「はい……雨が降ってしまっていて。来週以降、なかなか友達とも都合があわなくて……」
「あぁ……まあ、今日も雨やもんな」
小野先輩は少し考えるようにしながら総菜パンとブラックコーヒーを飲む。窓の外はずっと雨が降っていた。
「じゃあ、ウチが案内したろか? 神戸」
「ええ? そんな先輩に悪いですよ」
「いや、ええよ。ちょうど来週、実家に帰る用事もあったし」
こうして、私と小野先輩の旅が始まりを告げるのだった――
「幕間 旅を始めたきっかけ」いかがだったでしょうか。
旅行好きな人は月に何度も行きますね。私はよくて半年に一回くらいですが、地元のスーパーでその場にしかないものを見るのが楽しいです。




