2.幕間―出会い―
私が関西にやってきたのは就職してから二年経ち、働くことにようやく慣れ始めた時期だった。
小学校から社会人になるまで実家を出たことがなかった私にとって、関西という場所は縁もゆかりもない場所。しかも働く先は大阪支社という東京に次ぐ大都会だった。
なんとか自転車で通うことができるワンルームを借りて車の多さにおののきながらも、私は大阪支社にたどりつく。
(異動かあ……まあ、サラリーマンだし、仕方ないか……にしても、大阪なんて京都の修学旅行のときにちょっと寄ったくらいの場所なんだよなあ……)
大阪支社は御堂筋の一流企業が入るビルにテナントの一角として占めており、一応は自分も上場企業の端くれであることを思い出す。
リクルートスーツから新調した似たような黒いスーツにリュックサックを背負い直すように私は跳ねる。
(甲府の営業所とは全然違うなあ……)
だだっ広いエレベータホールでエレベータが来るのを待つ。後ろに誰か一人並ばれる。ああ、嫌だ。知らない人とエレベータに乗るのはとても苦手だ。
重厚感があるのにとても静かなエレベータの扉が開き、私はそさくさと乗り込む。
しまった。
事務所がどこのフロアにあるのかをど忘れしてしまった。
「何階、行かれますか?」
声をかけてきたのはベージュのパンツスーツに手足の長い、スラリとしたモデルさんみたいな女性だった。
「あ、あの、私、この度は『一つ星商事』の甲府営業所からやってきました甲斐と言います。支社のビル何階か分からなくて……」
何を言ってるのか。この人が私と同じ会社の人とは限らないのに。
ワイヤレスイヤホンを外し、切れ長の瞳に長いまつげが少し瞳を丸くしながら笑う。
「ああ、甲府から来るって言ってた若い方やね。じゃあ、同じ八階か」
エレベータはぐんぐん上昇しながら目的の階層へと登る。
「あ、忘れてたけどウチは小野。たぶん、甲斐さんよりニ年くらい先輩になるはずやで」
これが私と小野先輩の出会いだった。
「幕間 出会い」いかがだったでしょうか。
登場人物の名前を考えるのが苦手です。なので、地名から拝借することが多いです。




