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王都の騎士団は物理耐性? ならば鎧ごと筋肉で噛み砕くまで

聖女リアの目の前で、世界の判定システムが保障する「デバフの概念」を拳一つで殴り砕いたレオン。その噂は、怨嗟公マレフィクスの死と共に、王都にある聖王国の心臓部へともたらされた。

「……概念防御に続き、即死デバフの設定までもを物理で……? 馬鹿馬鹿しい」

聖王国の軍事統括府、重厚な石造りの会議室にて、第一騎士団長・ヴァルガスは報告書を机に叩きつけた。

「報告にある『真空破砕拳』だの『細胞の微振動によるデバフ相殺』だの、全てはデタラメだ。古代魔法の身体強化を無自覚に使っているに過ぎん。所詮は地方の脳筋重戦士だ」

「しかし、ヴァルガス様。聖女リア様も、怨嗟公マレフィクスの呪いが霧散したのを目の当たりにしたと……」

「リアは清らかだが、世間知らずだ。地方のペテン師に騙されているだけだ」

ヴァルガスは、鋼鉄の鎧に身を包んだ巨体を揺らし、立ち上がった。

「そのレオンとやらが王都へ招かれるというなら、いい機会だ。我が第一騎士団――通称『鋼鉄の牙』が、その化けの皮を剥いでやる。物理攻撃を95%カットする我が団の『鋼鉄の加護』の前では、奴の身体強化魔法など無力だと、思い知らせてくれるわ」

ヴァルガスは、嘲笑と共に、拳を机に叩きつけた。

数日後。王都へ到着したレオンとエレナ、そして聖女リアを待ち受けていたのは、歓迎の宴ではなく、ヴァルガス率いる第一騎士団による「査問」という名の、武力行使であった。

「貴様がレオンか」

王宮の練兵場。ヴァルガスは、鋼鉄の鎧に身を包んだ数百人の騎士たちを背に、レオンを見下ろした。

「地方で少し魔物を倒した程度で、王都にその名が轟いたと、調子に乗っているようだな」

「……誰だ、貴様?」

レオンは、呑気に首を傾げた。

「無礼な! 私は第一騎士団長、ヴァルガスだ! 貴様のその、魔法による身体強化の嘘を、我が団の『鋼鉄の牙』が砕いてやる!」

ヴァルガスが叫ぶと、背後の騎士たちが一斉に、鋼鉄の鎧を響かせて構えた。

彼ら第一騎士団は、世界の判定システムが保障する「物理ダメージ95%カット」のパッシブスキル、《鋼鉄の加護》を持っていた。これは、本来なら後半のダンジョンに配置されている強力な物理耐性であり、物理攻撃しかできない重戦士にとっては絶望的な相性だ。

「貴様の魔法による身体強化が、我が団の95%物理カットにどこまで通用するか……見せてみろ!」

ヴァルガスが杖を振ると、数百人の騎士たちが一斉に、レオンに向かって突撃した。

「レオン! 止まりなさい! 第一騎士団の鎧は、世界の判定システムが保障した、95%物理カットなのよ!? 物理で殴っても、ダメージは一切通らないわ!!」

「ほう、95%物理カット、か。いい仕様だ」

レオンは大剣を抜かず、数百人の騎士たちを前に、腰を落とし、半身に構えて右拳を極限まで引き引いた。

「要するに、それは世界の判定システムが『俺の攻撃は5%しか通らない』と計算しているわけか」

「そうだ! それがこの世界の真理! データこそが絶対なのだ!」

「なるほど、いい仕様だ。なら――」

レオンは腰を落とし、数百人の騎士たちに向けて右拳を突き出した。

「その判定プログラムごと、俺の筋肉で殴り砕くッ!!」

「は……? 貴様、何を――」

レオンの全身の筋肉が、異常な微振動を始めた。細胞一つ一つが爆発的な運動エネルギーを生み出し、熱と光を放ち始める。

95%物理カット? データの設定? 物理耐性?

知るか、そんなデータの設定。

「俺の筋肉が、この瞬間に求めているのは『100%の物理伝播』、ただそれだけだ!」

レオンの拳に、世界の判定システムが判定した「物理耐性の概念」を、物理的にねじ切る超・運動エネルギーが宿る。

判定プログラムが、俺の攻撃は5%しか通らないと判定するなら、その判定プログラムのサーバーごと、俺の筋肉で殴り壊すッ!!

世界のシステムそのものを脅かす、純粋物理の奔流。

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラッ!!!」

レオンが、数百人の騎士たちに向けて、右拳の連打を放った。

――ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドンッ!!!

世界の判定システムが保障した、95%物理カットの鋼鉄の鎧が、悲鳴を上げた。

レオンの拳から放たれた真空破砕拳の衝撃は、第一騎士団の物理耐性を、空間ごと、物理的に粉砕した。

砕け散ったのは、瘴気だけではなかった。

パリリンッ! という、ゴルゴス戦でも聞いた、概念が砕けるガラスのような音が広場に響き渡る。

ヴァルガスがこの団に刻んでいた「物理耐性の概念」――世界の判定システムが保障する物理カットの設定そのものが、レオンの圧倒的な運動エネルギーに耐えきれず、物理的に粉砕されたのだ。

「な……に……!? 我が団の物理耐性が……鎧の設定が……物理的に……砕かれた……だと……!?」

ヴァルガスが驚愕に歪む。

「……あれ? 騎士たちの鎧が……消えた……?」

騎士たちを蝕んでいた鋼鉄の鎧が一瞬にして消え去り、彼らは傷つきながらも立ち上がった。ヴァルガスもまた、鎧の重圧から解放され、目を見開いた。

「物理耐性がある? 鎧の設定がある? 物理カット? 笑わせるな」

レオンは、騎士たちの鎧を粉砕したその拳を、そのまま実体化して慌てふためくヴァルガスへと叩き込んだ。

――ズバァァァァァァァァンッ!!

衝撃波が広場を完全に吹き飛ばし、第一騎士団長ヴァルガスは絶叫を上げる暇すらなく、その巨体を粉微塵に破砕されて瘴気へと霧散した。

崩れ落ちた岩石の中で、レオンはゆっくりと挙げた拳を引き、息を吐き出した。

「ふぅ……。物理耐性の概念を殴るのは、少し細胞が疲れるな」

レオンは、少しピクピクと動く自分の拳を見つめて、満足げに頷いた。

こうして、聖王国の第一騎士団の物理耐性は、レオンの「設定ごと筋肉で殴り砕く」という、世界の判定システムを無視した圧倒的物理によって、一撃で幕を閉じたのであった。

聖女リアとエレナは、鎧が晴れた広場で、拳一つで物理カットの判定を粉砕した男の姿を、ただ呆然と見つめることしかできなかった。

逃げ延びた騎士たちは、瘴気が晴れた広場から現れた、拳一つで第一騎士団長を粉砕した男の姿を、ただ呆然と見つめることしかできなかった。

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