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20 転校初日(?)にやってきた留学生美少女の好感度が俺にだけ最初からマックスな件

どんよりとした雨続きの予報はどこへやら、今日も朝から突き抜けるような快晴だった。

 今日もいつも通りに、始業五分前に教室へと辿り着いた。

 クラスメイトたちに軽く挨拶をしながら、自分の席へと落ち着く。

「お前らー、席につけ。ホームルーム始めるぞ」

 担任教師のガラガラ声と共に、ガヤガヤとしていた教室が一気に静まり返る。

「早速だが、今日からこのクラスに、新しい仲間が加わることになった。まぁ、すでに噂で聞いてるやつも多いと思うが……よし、入ってこい!」

 教師の合図とともに、開いたままの扉から、一つの小さな影が入ってきた。

 次の瞬間。教室中の空気が凍りついたのも一瞬のこと。

 瞬く間に、地鳴りのようなざわめきが一気に沸き起こった。

「うわ、マジかよ!」

「すげー! 超かわいいっ…!」

 クラスの異性たちの目が、文字通り釘付けになる。女子たちからも「お人形さんみたい……」と感嘆の息漏れが聞こえてくるほどだ。

 教壇の横に立ったのは、光を反射してきらきらと輝く、淡いブロンドの長い髪を持った少女。

 くりっとした大きな瞳が、興味深そうに教室を見渡している。

 昨日、屋上で見たのと同じ、我が校の制服を完璧に着こなしたシャルロリアである。

「げっ…!」

 浮かれるクラスメイトたちは正反対の声を、希亞樹が出す。

 ――同じクラスかよ……。

 思わず、窓際の席で背筋を正した。

 昨日、誰もいないはずの屋上で出会った、どこか浮世離れした異国の美少女。

 まさか、自分のクラスにやってくるとは夢にも思わない。

「ほら、静かにしろ。自己紹介できないだろうっ!」

 ぱん、ぱんっと教師が大袈裟に手を叩き、教室の空気を支配する。

 担任に促され、シャルロリアが一歩前に踏み出した。

 端正な顔立ちに、すっと綺麗な微笑が浮かぶ。昨日、屋上でスカートを摘まんでいた時とは違う、まさにお嬢様といった佇まいだ。

「シャルロリア・フォン・フリードリヒです。ドイツから来ました。ボクのことは、シャルっでもロリアでも好きに呼んでねっ。みんな、よろしくっっ!」

 鈴を転がすような澄んだ声に、完璧な日本語と、雨上がりの空のようにカラッとした極上の笑顔。

 教壇に立つ彼女の姿は、まるでそこだけスポットライトが当たっているかのように眩しい。

 シャルロリアの挨拶に、教室は割れんばかりの拍手が巻き起こった。特に男子たちのテンションは早くも最高潮に達している。

「シャルちゃん! 彼氏いるのー!?」

「日本のアニメとか好きなの!?」

「ボクっこかっ! かわいいねっ!」

 飛び交う質問の嵐に、シャルロリアは「いないよー」「好きかなー?」「あはは」と丁寧に答えていた。

「よし、フリードリヒの席は……あそこだな。一番後ろの窓際、羽衣の隣だな」

「え、俺!?」

 思わず声を上げた希亞樹に、クラス中の男子から一斉に嫉妬の視線が突き刺さる。

 当のシャルロリアはというと、担任に指定された席――つまり希亞樹の隣の席を見た瞬間、その翡翠の瞳をこれ以上ないほど輝かせた。

「あっ! きあきくんの隣だっ! うれしいなぁっ!」

 再びクラスメイトたちの「え、なんでアイツの名前知ってんの?」「知り合い!?」という無言の驚愕と嫉妬の視線が、痛いほど希亞樹に突き刺さる。

 そんな周囲の動揺などどこ吹く風で、シャルロリアは小走りに希亞樹の元へと駆けてくる。

「ねっ、今日はちゃんとスパッツはいてきたよ?」

 ピラっとシャルロリアは照れる素振りも見せずに、スカートを捲り上げた。

「どわッ!? ぉ、ぉま、なにしてんだ、よッ…!!」

 ガタタッ! と教室内で何人かの男子が椅子から転げ落ちる音がした。

クラス全員の視線がシャルロリアの太もも辺りに釘付けになる。しかし、そこから覗いたのは、昨日見た眩しい「白」ではなく、彼女の健康的な細い脚のラインにぴったりと張り付いた、黒い一分丈のスパッツである。

「ほらね、きあきくんの言う通りにしてきたよ! えらいでしょ?」

 シャルロリアはスカートの裾を握ったまま、満足げにふふんと胸を張る。

 スパッツを穿いているとはいえ、女子生徒が教室でスカートを堂々と捲り上げている光景はあまりにも刺激が強すぎた。

 おまけに、本人は一切照れる素振りがない。

「っ、見せるなバカ! 降ろせ、早くスカートを降ろせ!」

 希亞樹は視線を斜め上に逸らしながら、シャルロリアのスカートの裾を掴んで引き降ろさせた。手にかすかに触れたスカートの生地と、彼女の指先が、希亞樹の焦りをさらに加速させる。

「えー、だって、きあきくんがスパッツ履けって言うから、ちゃんと履いてきたよって見せたのに……」

 シャルロリアは不満そうに頬を膨らませた。その翡翠の瞳は、まるで「せっかく褒めてもらえると思ったのに」とでも言いたげに、ほんのりと潤んでいる。

「だ、だからって、みんなの前でいきなり見せつけるやつあるかっ! スパッツを穿いてりゃ何してもいいってわけじゃないんだよ!」

「そうなの? 日本のルールは難しいねぇ」

 クスクスと楽しそうに笑うシャルロリア。その笑顔とは裏腹に、教室内は一触即発の空気に包まれていた。

「……羽衣、お前」

「おいアキ……後で体育館裏な。ちょっと話がある」

「やだー羽衣ってそういう趣味だったの……」

 男子たちからは血の涙が出そうなほどの嫉妬の視線が、女子たちからは「朝から何を見せられているんだ」という冷ややかな視線が、またまた突き刺さる。

「羽衣! 騒がしいぞッ! お前は後で職員室に来い!」

「な、なんでだよ……」

「あはは、きあきくん、また顔が赤くなってる。やっぱり面白いね」

 シャルロリアはクスクスと楽しそうに笑うと、隣の席にストンと腰掛けた。

 ふわりと、甘くて優しい香りが希亞樹の鼻腔をくすぐる。

 これから毎日、この距離で彼女に振り回されるのだと確信した希亞樹は、低気圧も過ぎ去ったというのに、激しい頭痛を覚え始めていた。

 希亞樹は、これからの学校生活が、昨日までの「普通」とは程遠いものになることを、確信せざるを得なかった。 

 


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