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聖剣使いの俺と無限魔力の妹で異世界生活してますがなんか思ったのと違う  作者: ペロロンチーノ


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4/7

日常と少し先の未来

 魔物騒ぎの後、俺たちの日常は一見、何も変わらなかった。


 相変わらず朝は早く、倉庫での荷物運び。


「ほら、さっさと動けー」


「はいはい……」


 年上の少年に急かされながら、今日も木箱を運ぶ。


「(俺も随分慣れてきたな……)」


 最初は持つだけで精一杯だったそれも、今ではなんとか運べるようになっていた。


 理由は分かっている。


「……ふっ」


 軽く意識を集中させると、体が少し軽くなる。


「(これが聖剣の身体強化か)」


 あれから何度か試してみて分かった。


 この聖剣、地味だが確実に効果はある。


 ただし――


「やっぱ地味だな……」


「何が?」


 隣で桜が聞いてくる。


「いや、なんでもない」


 桜の方を見る。


 こっちは相変わらず規格外だ。


 軽々と木箱を運びながら、時々こっそり魔法の練習もしている。


 小さな火を出したり、光を灯したり。

 魔導書はまだ買えないため、ほかの魔法は覚えられないが、それでも着実に強くなっている


「(無限魔力、便利すぎだろ……)」


通常なら魔力は消費されればそれに伴い疲れるものだ。

 

 だか桜の場合は疲れる様子が一切ない。


 完全にチートだ。


 羨ましいぞ!



 そんな日々が、しばらく続いた。


 数日。数週間。


 そして――数ヶ月。


「(……だいぶ慣れたな、この生活)」


 気づけば、この世界での暮らしにも違和感はなくなっていた。


 言葉にも困らない、食事も数ヶ月も暮らせば慣れる。


 体も、この年齢なりの感覚に馴染んできている。


「おにーちゃん」


「ん?」


「今日さ、帰りにちょっと寄り道しない?」


「寄り道?」


「本屋っぽいとこ見つけた」


「……マジか」


 それはちょっと興味がある。


「魔導書とかあるかも」


「行く」


 即答だった。



 


 連れて行かれたのは、小さな店だった。


 看板は読めないが、中には本らしきものが並んでいる。


「(それっぽいな……)」


 店内に入ると、独特の匂いが鼻をつく。


 紙とインク、それに少しの埃。


「お、子供か。何か探してるのか?」


 店主らしき男が声をかけてくる。


「えっと……」


 桜が少し考えてから言う。


「魔法の本ってありますか?」


「……ほう」


 男は少し意外そうな顔をした。


「あるにはあるが、安くはねえぞ?」


「いくらですか?」


 値段を聞いた瞬間、二人で黙った。


「(高っ)」


 今の俺たちの稼ぎでは、手が出せる額じゃない。


「……また来ます」


 桜がそう言って店を出る。




 帰り道。


「高かったね」


「だな……」


 しばらく沈黙。


 だが、桜はすぐに笑った。


「でもさ」


「ん?」


「これで目標できたね」


「……ああ」


 確かに。


 ただ働くだけの日々とは違う。

 せっかくの異世界転生だ、なにか目標があればそれだけでやる気にもなる。


「(魔導書、か……)」


 あれを手に入れれば、桜はもっと強くなる。


 そして――


「おにーちゃんも、剣強くならないとね」


「……分かってる」


 聖剣を見る。


 まだ力は戻らない。

 未だに身体強化ぐらいしか使い道がない。


 


 でも、神は言っていた。


 “徐々に力は戻る”と。


「(やるしかないか……)」


「(この聖剣を取り返しに襲われることもありそうだしな……)」

 



 その日を境に、俺たちの行動は少しずつ変わっていった。


 仕事の合間に体を鍛え。


 剣を振り、剣を使うことに慣れるようにした。


 桜は空いた時間で魔法の練習を続けた。


 そして――


 季節がいくつか過ぎた頃。



「……なんか、でかくなったな俺ら」


 水に映る自分の姿を見て呟く。


 子供だった体は、すでに少年と呼べるくらいには成長していた。


「ほんとだね」


 桜も少し背が伸びている。


「(時間、結構経ったな……)」


 この世界に来てから、数年。


 前世での中学生と呼ばれる年齢にまで成長した。



 その日の帰り道。


 街の中心で、一枚の掲示板が目に入る。


「……なんだこれ」


 人が集まっている。


 近づいてみると、そこには紙がいくつも貼られていた。


「依頼……?」


「冒険者ギルドだって」


 桜が読んでいる。


「(ギルド……)」


 その言葉に、心が少しだけ高鳴る。


 異世界といえば、やっぱりこれだ。

 鍛える中でこの世界のことを調べていた。

 その中で冒険者として働ける仕組みがあることは知っている。


「なあ、桜」


「ん?」


「……そろそろ、いいんじゃないか?」


「うん、私も思ってた」


 顔を見合わせる。


 言わなくても分かる。




 荷物運びの生活。


 それはそれで悪くなかった。

 何年もやれば自然と慣れ、職場のみんなとも仲良くなった。

 


 でも――


「せっかく異世界に来たんだし冒険者に!」


 桜がそう言う。


「ああ」


 俺も同じ気持ちだ。


 剣を握る。


 少しだけ、力を込める。


「(せっかく聖剣を貰ったんだ、だったら冒険者として強くなってみせる!)」



 

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