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聖剣使いの俺と無限魔力の妹で異世界生活してますがなんか思ったのと違う  作者: ペロロンチーノ


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頼れる妹と頼れない聖剣

 人だかりの隙間から、なんとか中の様子を覗き込む。


「(……あれか)」


 そこにいたのは、犬のような見た目をした怪物だった。


 普通の犬とは違う。


 体は一回り大きく、目は赤く濁り、口元からは鋭い牙が覗いている。


 低く唸る声に、周囲の空気が張り詰めていた。


「おにーちゃん、どうするの?」


 隣で桜が小声で聞いてくる。


「……せっかくだしちょっと、やってみる」


 自分でも無謀だとは思う。


 だが――


「(せっかく異世界来たんだしな……)」


 腰の剣に手をかける。


 記憶は曖昧だが、自らが願った聖剣らしきもの。


 見た目は普通だが、さすがに何かあるはずだ。


 そう信じたい。


「無理しないでね」


「ああ」


 人混みを抜けて前に出る。


「ガルルッ!」


 魔物がこちらに気づき、低く唸る。


「……来いよ」


 剣を構える。


 その瞬間――


 頭の奥に、微かな感覚が走った。


「(……なんだ?)」


 熱のようなものが、体の内側を巡る。


 自然と、力が入る。


「(これ……身体が強化されてるのか?)」


 理由は分からないが、さっきよりも体が軽い。


 もしかすると――


「(これが聖剣の力か?)」


 そう考えた瞬間、魔物が飛びかかってきた。


「っ!」


 今度はさっきよりも、はっきり見える。


 動体視力も上がっているらしい。


 タイミングを合わせて――


 振る。


 ――ガンッ!


「……っ」


 手応えはある。


 だが――浅い。


「(やっぱり弱い!?)」


 確かに当たった。だが致命傷には程遠い。


 切れ味も、せいぜい少し良い程度。


「ガァッ!」


 反撃が来る。


 咄嗟に避けるが、バランスを崩す。


「(やばい……!)」


 このままじゃ押し切られる。


 その時――


「おにーちゃん!」


 桜の声。


 次の瞬間。


 ゴォッ――!

一瞬熱気とともに、なにかが横を通った。


 強化された目で見ると、炎が、一直線に魔物へと向かっている。


「ギャウッ!?」


 魔物は悲鳴を上げ、一瞬で焼け、倒れる。


 体は焼け焦げていて、完全に動かなくなった。


「……え?」


 一瞬、状況が理解できなかった。


「大丈夫?」


 桜が駆け寄ってくる。


「……ああ、なんとか」


 助かったのは間違いない。


 だが。


「(今の……まさか魔法か?)」


「なんとかしなきゃと思ったら、なんか出せた」


 あっさり言う桜。


「いや、なんかで済ませるなよ……」


 明らかに威力がおかしい。


 俺の攻撃とは比べ物にならない。


「(これが桜の転生特典ってやつか……?)」


 そう思った瞬間――


 視界が、白く塗りつぶされた。


――


 気づくと、そこはどこか見覚えのある空間だった。


 何もない、真っ白な場所。


「……ここ」


「おにーちゃん、これって」


「ああ……たぶん」


 目の前に、あの“神っぽい存在”が現れる。


「お久しぶりですね」


「やっぱりか……」


 妙に落ち着いた自分がいた。



「どういう訳か貴方たち2人は、ここでの出来事をよく覚えていないようですね」

 

「あなた達には、改めて説明しておくべきことがあります」


 神はそう言って、まず桜の方を見る。


「妹さん。あなたに与えた力は“無限魔力”です」


「無限……?」


「その名の通り、尽きることのない魔力を持ちます」


 桜は少し驚いたように目を見開く。


「魔法をいくらでも使えるし、魔力による身体強化も可能です」


「……そういえば魔法をガンガン打ちたいって言ったかも……」


 荷物運びの時のことを思い出す。


 やはり魔力で強化していたのか、これなら納得はできる。



「ただし」


 神は続ける。


「あなたには残念ながら、魔法の才能がほとんどありません」


「え?」


「現状では、簡単な光魔法と、適性のある火属性のみ使用可能です」


「……あー」

「確かに魔法の才能とかは願ってなかったかも……」


 桜は少し納得したように頷く。


「でも、魔導書を読むことで新たな魔法は習得できます。 頑張れば水、風、氷、地などの属性や、それらに属さない魔法も含めて」


「へえ……」


 今はまだ制限はあるが、それでも十分すぎる。


 むしろ強すぎるくらいだ。


 次に、神は俺を見る。


「そしてあなた」


「……俺か」


「あなたの持つ聖剣ですが――」


 そこで一拍置く。


「それは、かつて別の国で召喚された勇者に渡したものです」


「……は?」


 予想外すぎた。


「その勇者は、貴方と同じように聖剣を望、私より聖剣を授かり、国を救いました」


「いや、ちょっと待て」


「そして王となった勇者が保管していたものです。」


 つまり――


「それ、国宝とかじゃないのか?」


「その通りです」


「……」


「現在、その国では聖剣が無くなったことにより、大騒ぎになっています」


「だろうな!?」


 頭を抱えたくなる。


「(そんなもん持たされてんのかよ……)」


「ですが安心してください。あなたが持っていることはまだ知られていません」


「いや安心できねえよ……」


 で、一番大事なこと。


「それで、この剣なんだけど」


 神を睨む。


「なんでこんな弱いんだよ、聖剣てもっと強いイメージだったんだが」


 正直すぎる疑問だった。


 神は少しだけ間を置いてから答える。


「長い年月使われていなかったため、本来の力を失っています」


「……は?」


「国を救ったあとは、ろくに手入れもされずに保管されており力が発揮できません」

「さらに、あなた自身に剣の才能がありません」


「……は?」


 追い打ちがひどい。


「現在使えるのは、身体強化と切れ味の強化程度です」


「それ、ちょっと強い普通の剣じゃねえか?」


「正式な所有者となった貴方が使うことで、徐々に力は戻ります」


「……マジかよ」


 思ってたのと違いすぎる。


「てか新しい聖剣くれればよかったんじゃ?」

「それなら俺もちゃんと力を使えたし、この聖剣があった国も騒ぎにならないで済んだのに」

 


「聖剣は強力な武器ですから、何本も地上にあってはいけないのですよ」

「それに私が授けたのは勇者ですので、その勇者が亡くなったあと他のもの達に利用されるのは許してませんので」

「話は以上です、あなた達には特に使命などもありませんので、それらをどう使うかは自由です」

 

――


 次の瞬間、視界が元に戻る。


 気づけば、元の場所に立っていた。


 周囲の人々がざわついている。


「すげえ……倒したのか」


「今の魔法……」


 どうやら、あの空間に居たのは一瞬だったらしい。


「おにーちゃん」


「ん?」


「なんか、色々大変なことが分かったね」


「ああ……」


 剣を見下ろす。


「……まさかこんなに弱いなんてな」


「でも、これから強くなれるんでしょ?」


「まあな」


 完全に役立たずな訳ではない。


 ただ――


「なんか思ってたのと違う」


「それは最初からじゃない?」


 桜は笑う。

 

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