『課金すれば勝てるって?それは本当かい?』
こんにちは。最近、風邪をひいた霧々雷那です。さて、今回のお話は半分重く、半分ギャグです。まぁ、リアル事情ですしね。もしかしたら当てはまる人もいるかもしれませんね。
広い大海原。見渡す限り海しかないが、空を見上げれば満天の星空がプラネタリウムのように雲一つなく存在している。
都会の光が一切なく、月明かりだけのため、星の光がより一層強く感じられる。時刻としては一日目の夜だ。とりあえず、逃走から戦闘は起きていない。かなり距離をとったおかげかもしれない。
今日の成果は上々だ。
食料はきちんと二日分存在していて、困ることなど何もない。食料が奪われたとしても大文字の釣りスキルさえあれば大丈夫であるため、心配事などまさに皆無……のはずなのだ。けれど、私の胸は少しざわついていた。
なにか、嫌な予感がする。
近くで連結している舟を見ると、大文字が監視していて、夜桜は疲れたのか寝てしまっていた。私もそろそろ眠らなければならない。
だが、なかなか寝付けないのだ。何かが私の眠りを妨げているかのように……。
目を閉じてみる。
聞こえてくるのは波が舟の横を叩く音だけだ。それ以外の音はまったくしない。私はその音に耳を傾け意識を集中させる。すると、少し昔のことを思い出した。
この世界じゃない話。そう、現実の話。
いつだったか……。
たしか、4年ほど前の出来事だった。
私はなにかの事件に巻き込まれたらしい。
ちなみに、私が“らしい”、と言うのには理由がある。詰まる所、私は憶えていないのだ。
私の本体であるリサ・テーリヒェンは4年前からの記憶しか保持していない。つまり、四年以上前の記憶が存在しないのだ。
時折、思い出すのは自分が歌っている記憶だけ。それは何かが歪んでいて、何かがおかしかった。
目覚めた時は異世界にいるような気分だった。周りの人が言っている意味が分からないのだ。医者が言うには私はざっと一年ほど目を覚まさなかったらしい。それしか理解ができなかった。それからというもの、リハビリに明け暮れた。
病院を出て、家族の元に戻っても家族は何も話してくれなかった。私にはそれが本当の家族なのかもわからないというのに……。
父親と思しき人物が唯一口にした言葉は『どうして、こんな誠実な子があんな目に……』だった。これは今の私にも理解できない。勉強して高校に進学し、来年は受験を控えている。
周りの人たちとは一歳、歳が違っている。けれども、両親と思しき人たちは私の背中を押してくれた。まるで、何かをためらうかのように……。
記憶はなくとも体は憶えていた。歌を歌いだすと何故か止まらないのだ。前に私がCDショップで聞いていた時、少し奇妙なことが起こった。私はなんとも思わなかったのだが、気付くと私は嗚咽を噛み締めていた。何かを叫ぼうとしたが、それが何であったのかわからず、出てくるのは嗚咽だけだった。
その曲の名前は『もう一度その手を』だ。初めて聞いたはずなのに親近感がわいてきたことは鮮明に覚えている。歌詞はプロが書いたのか思えないぐらい稚拙だった。歌詞を書いた人は『比翼連理』という人らしい。私が効いた曲はもともとこの『比翼連理』というグループが歌うはずだった歌のカバーらしい。このグループをネットで調べてみても、手がかりはつかめなかった。未成年のため、名前が伏せられていたからだ。そのグループは5年前に謎の解散をしたらしい。理由はすでに消えていてどこにもなかった。
それからというもの、こころの穴が広がったような気がした。元々、開いていた大きな穴が余計に広がったのだ。ただ、私はそれが何であったのか憶えていない。家には昔のアルバムが一切なかった。だから、記憶の欠片を頼りにするしかなかったのだ。
そして、その大きな穴を埋めるかのように手にしたのが『ジョグラトルオンライン』だった。今でも少し後悔している。
けれども、ここにいるカノンは私の分身であり、私でない。そう思うと、多少気が楽になったような気がした。
◆◇◆◇
数時間後に私は目を覚ます。どうやら考え事をしているうちに寝てしまったらしい。そろそろ見張りの交代時間だ。私は今見張りをしている大文字と代わろうと、立ち上がり大文字の方を見る。
すると、彼はぐっすりと眠っていた。彼もフェンリルの件でいろいろ疲れていたのだろう。私は彼を起こさないように見張りを開始する。全員が動き出したのはちょうど二日目の朝の日差しが昇り始めたころだった……。
◆◇◆◇
全員が目を覚まし、朝食を食べ終わると同時に、少し高潮がやってきた。それは立った一度だけだった。だが、私は……いや、わたし達は見てしまう。遠くの海に局地的な豪雨が訪れているのだ。
それと、ほぼ同時に雄叫びのような低い声が聞こえてくる。どうやら私の嫌な予感は的中したらしい。
私は神妙な面持ちで隣にいる夜桜と大文字に話しかける。
「これは……。ボスクラスでも到来したんですかね?」
「十中八九そうだろうな。どうする?倒しに行きますか?」
大文字は提案してきたが、夜桜は当然の如く否定する。
「いやいや。行くだけ無駄でしょ。ここにいれば安全だし」
安全?たしかに直接的な被害には会っていない。だが、本当にここが安全なのだろうか。もし、ボスの範囲内にいるすべてのプレイヤーがやられた場合、ボスの次の行動は容易に予測できる。そう、移動だ。
残りのプレイヤーを狩るかのように移動する。だから、ここは必ずしも安全とは限らない。そして、たいていの場合、ここで挑戦する選択をしなければ死ぬ。もちろんメタ読みだが……。
「夜桜さん。安全な場所なんてないですよ。このステージには陸がないんですから……」
「えっと……。それはこのフィールドすべてがボスの移動範囲になりえるってこと?」
「その通りです」
私は相槌をうって再び異常気象の方を見る。未だに天候は変わらない。たが、時間が遅れればそれだけ、こちらに味方する戦力が少なくなる。だからできるだけ急いだ方が良い。
「行きましょう。勝てないとわかったら逃げればいいんです」
「そう……ですね……」
私たちは移動を開始した。近づくたびにその全容が見えてきた。だがボスの全身は見えるのだが動いている気配がない。
雨雲の下に入り、周りを見渡してみるとプレイヤーがチラホラいる。だが、皆戦意を見せていない。それどころか、罵りあいさえしている。
聞こえてくるのは『お前が出せよ!』、『いやだ。これは使うんだ!』
などと言う声だ。私たちはそれらを無視してボスに近づいていく。ボスは大きな海竜のようだ。名前は……『レヴィアタン』。
うん。レヴィアタンだ。『レヴィアたん』じゃない。海竜とか怪物とか、神話生物の方の『レヴィアタン』だ。決して女の子ではない。
とりあえず。レヴィアタンには触れずに周りを一周してみる。
すると、ちょうど正面にお賽銭箱が存在していた。とりあえず近づいて隠れている文字をポップさせる。
そこには『1000万Gをささげよ。さすれば我は動かん』と、書かれていた。それを見た三人は次々と同じ言葉を言う。
「課金……ですよね」
「課金だな」
「課金ね」
命が惜しくば金を出せときたか。汚い、運営さすが汚い。反吐が出るほど汚い。
夜桜は1000万というお金を見て苦笑いしながら喋りだす。
「それにしても10Mねぇ……。この世界じゃそこまでレートが高騰してないから相当な大金よねぇ……」
「えっと……すみません。10Mってなんですか?」
私はMの意味が分からなくて訊ねた。私はこれが初めてのVRMMOだからだ。すると、夜桜は私の質問に少し驚いていた。
「もしかして、あなた。VRMMOはこれが初めて?」
「はい。そうですが……」
「なにそれ、怖い」
夜桜が私から少し距離をとった。そこまで驚くことなのだろうか。だが、夜桜はため息をつくと、すぐにこちらに近づいて解説してくれた。
「えっとね。まず、お金の単位を簡略化するためにネトゲでは独特の単位を使うの。まずは『K』 ね。これは『㎏』の略で俗にいう1000のこと。次にさっきの『M』。これはメガとかミリオンとかの略で100万のことを指す言葉。まぁ、さらに単位を増やす場合は『G』とか、『T』とかってあるんだけど、ここじゃ使わないと思う」
「Gはゴキブリの略だよ」
大文字が薄笑いを浮かべながら口を挟んできた。
それに対し夜桜は少し機嫌を悪くしながら声を張り上げる。
「そんなわけないでしょ! ギガの略よ。信じないと思うけど、ギガだからね。ゴキブリじゃないからね!」
一瞬信じてしまった私がここにいた。
「ちなみに、Tはテラの略だから。Gが十億。Tが1兆よ。ちなみに、私の親が昔やってたパソコンでのMMOでは、レートがあがり過ぎてPとかEを導入した方がいいんじゃないかってものもあったみたい」
まぁ、と夜桜は付け加える。
「なんども言うけど、このゲームはβテストだからレートはそこまで跳ね上がってない。まぁ、当然ね。だから覚えるのはMまででいいから」
「ありがとうございます。夜桜さん」
夜桜はお辞儀する私に対し、少し違和感を覚えているようだった。どこに違和感を覚える場所があるのだろうか……。
私たちがいろいろ話していると、近くで乱闘が始まっていた。でもそれは一日目のような真剣勝負ではなく、小汚い小競り合いのようなものだった。
「さっきはこっちから出したんだ。次はお前らからだせや!」
「アぁ!? なんでうちらが出さなきゃいけねんだよ。テメェラ弱いものどもが怯えてるからだだろうが! うちらは別にあんな化け者たおせんだよ!」
そんな罵りあいを聞いていた私は大文字と夜桜の方を見ずに冷静な口調を装いながら喋りだした。
「これ。起こしましょうよ。多分、攻撃すれば起きますよね」
「あぁ。なんたって倒せるらしいからな」
正直に言えば、今の私たちの顔の方が相当に酷かったと思う。だが、人間の小汚い一面をずっと見ているようだったら起こした方がいいとさえ思ったのだ。
「あんたら……。まぁ、いいわ。借りを返させてもらうわね」
夜桜が戦闘態勢に入り、呪文の詠唱を始める。もちろん標的は課金海竜レヴィアタンだ。
「ファイア!」
夜桜の火球が寝ているレヴィアタンの額に命中しレヴィアタンの閉じていた目がゆっくりと開く。そして、全開すると同時に海を震わすような咆哮をした。
その脅威の咆哮に先ほどまで争っていた人物たちがこぞって真ん中の海竜を見た。喧嘩が一瞬にして止まったのだ。
それを確認した大文字は背中の大剣を抜き、私は杖を構えた。立ち向かうのは課金海竜レヴィアタン。そして対する私たちは未だ無課金の寄せ集め。勝利の行方はどちらに行くのだろうか……。
さて、どうでしたか?ちなみに私は無課金派です。ダメですよ。親のスネをかじって課金するのは……。やるなら、自分の収入でやるべきですよ。課金の話はここに置いておいて、今回はカノンの過去ですね。私はキャラを作ると、そのキャラのバックグラウンドまで考えないと気が済まない派なので、なぜか、キャラの相図が渡鬼状態www
今回。多分、ニ周で終わらせたらダメなんだろうな。と、思い、もう一周回すことにしました。だから、がんばってください。
それでは今回はこの辺でノシ




