ほのかな恋心
さて、自分の小説をひさしぶり更新した霧々雷那です。さて、今回の話ですが、日常回になっております。ギャグではないですけどね……。お楽しみを……。
私は今、新規参戦した麒麟と共に狩りをしていた。前衛は麒麟のテイムされたモンスターが務め、麒麟は中衛、私は後衛を務めている。バランスが良いとは言い難いが、この程度のモンスターなら何とかなる。
モンスターを狩っている麒麟は私とは違い、とてもはしゃいでいた。そんな時間が数時間ほど過ぎたころだろうか、急に麒麟が立ち止まる。森の中のため、草木は生い茂っている。
周りにはモンスターの気配はなく、休憩には良いところだ。それを感じ取ったのか、麒麟が立ち止まってこちらの方を振り向く。
「ここら辺で休憩しませんか?」
「えっ……えぇ……」
少し、オドオドしながらも地面に座り込む。休憩をしはじめると、少しずつだがHPやMPが回復を始める。私と麒麟は持ってきた昼食を食べながらスタミナを回復させ始める。
空気は……静かだった。
どちらも口を開こうとしない。いや、本当は私がその空気を作り出しているのかもしれない。
そんな折、麒麟が口を開いた。
「夜桜さん。最近は楽しんでいますか?」
「えっ!? 何を言って……」
「お節介だったらごめんさない。でも、何だかあなたは少し無理をしているように感じるのです」
そう言えば、自分のことなど最近考えたことがなかった。今、思い返してみるとちょっと自分の気持ちに嘘をつきすぎたと思い始める。
「ははは……。鋭いんですね。おっしゃる通りなのかもしれません」
「そうですよね。だって、あなたのミルさんへの接し方は……」
「気づいていたんですか……。まぁ、その通りなんですけど……私はミルのことが好きじゃありません。けど、それは恋愛敵としてじゃなくて、一人の人間として苦手なんです」
「おもしろいこと言うんですね」
「まぁ、そうでしょうね。だって、彼女の言動は……まるで……機械……みたいなんですから……。決められたセリフや、決められた行動しかとれないAIのような、そんな気がするんです。まるで、人じゃないみたいな……。これはさすがに失礼ですね。でも、近所の子供たちと比べると、ちょっと人間らしさが無いに等しいんです」
麒麟はしばらく目をつぶり、そしてゆっくりと口を開いた。
「結局、あなたは何がしたいんですか?たまには自分の意志に従ってみるのもいいのかもしれませんよ?」
「親切なんですね。でも、私はリョウを譲る気はないですよ?」
「あれ? 気づいてました? もう少しで恋敵が完全にいなくなると思ってたのですが……」
「あまいですね。でも、あいつは変態だよ?それでもいいの?」
「いいんです。彼は変態であっても、ロリコンじゃありませんから」
「わかってるじゃない。でも、きっと最後には……」
「勝負は最後までわからないものですよ?」
その問いかけに対し、私は口を噤む。別に言い返せないからではない。言い返す必要がないのだ。この先は話をしなくてもわかる。そんな気がするのだ。
私は結局、だんだんリョウが遠くに行くことを恐れていただけなんだ……。でも、本当は遠くになど行っていない。そんなことすぐに気付けたはずなんだ。だってリョウはいつでも私の後ろにいる。ただ、背中合わせでいるだけなんだ。だから、いつかきっと……。
「負けませんよ。夜桜さん」
「夜桜でいいわよ」
「じゃあ、こちらも麒麟でいいです」
そう言って私と麒麟は互いに握手を交わした。それと、ほぼ同時だっただろうか、草陰から突如として巨大な熊が飛び出してくる。
『ウガァァァァ!』
熊の毛並みは赤く、普通の熊とは程遠い。この縁でポップするレッドベアだ。私と麒麟はほぼ同時に武器を構える。だが、そこであることに気が付いた。
熊のHPが著しく削れているのだ。すでにオレンジゾーンを割り、レッドゾーンまで突入している。誰かが狩ったのだろう。
私は熊にとどめを刺すために魔法を唱え始める。
瞬間―――――
熊の後方から飛び出した何者かが、熊の体を真っ二つにする。それと同時に熊はポリゴンの欠片となって砕け散る。
熊が死んだのを見て右手の片手剣を背中の鞘にしまった人物がいた。その人物を夜桜は完全に見覚えがない。
その人物は男性で、男性は装備も軽装で体も細い。身長もそこまで高くなく、肉付きもよくない。顔もかなり幼く見えるほど丸い。茶髪で、目も茶色に限りなく近いこげ茶だった。
私がその男性を認識すると同時に男性が驚いて、後方に飛び退く。
「おわっ! あんたっ!」
「えっ何!?」
私が首を傾げると、男性は納得したように落ち着き始める。
「よかった。憶えてない……」
男性が安堵の息をつくと同時に、男性の後ろに突如として女の子が現れた。
少女はショートの黒髪に猩々緋色の丸い目。丸い顔立ちはかわいいネコの姿を想像させた。頭の上は髪の一部が折れ曲がってネコ耳のような形をしていた。
「タツヤ……。あまり単独行動をとり過ぎると、危険度が増す可能性があります。わたしの元を離れないでください」
その少女すらも私を見た途端に、驚いて硬直する。そんな少女の頭をタツヤは軽くなでる。すると、少女が急に落ち着き始め、不思議そうな目でこちらを凝視する。
「たく……。お前は僕のことを心配しているのか、保護者目線で見てるのか相変わらずわからないよな……」
「その質問はあなたには開示できません。それよりも、この状況の説明を願います」
「えっと……偶然出くわした? まぁ、そんなところだな。すみませんでした。僕たちはここを離れますので……」
そう言って離れようとする二人を私は大声で呼び止める。
「すみません。名前……なんていうのですか?」
「えっと……。僕がタツヤで、こいつがアサミです。それでは今度こそさよならです。夜桜さん」
そう言って彼らは去っていった。彼らの姿が完全に見えなくなったところで私はふと、あることに気が付いた。
そう言えば、なんであちらは私の名前を知ってたのだろう……。
たいしたことでもないため、麒麟と共に再び行動を開始する。すると、数分後に単独行動をして歩いているリョウに出くわした。
リョウもほぼ同時にこちらの存在に気がつく。
「あれ? 残りの二人は?」
「あぁ、ちょっと野暮用があって待ってもらってる。そっちは上々か?」
「ぼちぼちですわね」
麒麟がお嬢様のように髪をなびかせながら華麗に言った。リョウは特に何の反応も示さない。やはり朴念仁だ。
「そっか。こっちはまぁ……。ちょっと―――――――――――」
『いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――っ!!』
リョウの声を遮るように少女の悲鳴が聞こえてくる。声のトーン的にミルではない。その悲鳴に三人に戦慄が走る。けれども、私はいち早く我に返って行動し始める。
「リョウ! 先にみんなと合流してて!」
「おっ……おう!」
私は駆けだしたが、リョウが追いかけてくることはなかった。なんとなくわかっていたことだが、やはり辛い……。
私が声のした方に向かうと、そこには倒れているアサミを抱きかかているタツヤがいた。近くには響が立っている。
「おい! しっかりしろ! くそっ! こんな時に……」
アサミの口は何かに怯えるように声にならない声を出し、瞳孔は激しく開閉を繰り返している。発作に近い何かかもしれない。素人目でいえることはただならぬことが起きている……ということだけだ。
察するに、先ほどの悲鳴もアサミのものなのだろう。
「ごめん。僕のせいで……。今、元気にするから!」
そう言って響はギターで何かを弾こうする。だが、それよりも早くタツヤの怒声が飛んだ。
「やめてくれ!」
だが、その言葉と共に、自分が失礼な言葉を言ったタツヤは苦しそうに目線を逸らす。響の方も動揺の色が隠せない。
「すみません……。でも……今ここではやめてください……。アサミが……。いえ、これは後で説明します」
「ちょっと待って……」
私は急に飛び出して、アサミにリカバーをかける。だが、アサミの様子はまったく変化しない。つまり、これはステータス異常などではなく、精神的なものである確率が高い。
「すみません。本当にすみません」
「大丈夫ですよ。僕は気にしてませんから……」
そう言って、タツヤは重そうにアサミを背負って、アイテムから二人分の帰還結晶を取り出した。それとほぼ同時に響も帰還結晶を取り出す。
「夜桜さんもご迷惑をお掛けしてすみません」
その言葉と共に、私の制止を聞かずに三人は消えていった。本当は追いかけたかったが、私の立場的に関わるのは迷惑のためできない。だから、私は静かにリョウたちの元に戻った。
私が戻るとすでに全員が合流していた。合流すると同時にリョウが話しかけてくる。
「なんかあったのか? 酷い顔してるぞ?」
「別に……。なんでもない……」
「そっか……。ならいいけどさ……」
少しだけだけれども心配してくれたことがうれしかったことは内緒だ。まぁ、麒麟には気づかれていると思うのだが……。それから、私たちは再び狩りを開始した……。
これで私の回は終わりですか?
『あなたの答え』
何言ってるんだ。まだ、俺のバトルフェイズは終了してないぜ! 速攻魔法発動『折り返し地点』ッ! 睡眠と根性を削り、効果を発動! こいつは折り返し地点というだけで、話しの話数を合せるために二話の連続投稿をすることができる!
――――――と、言うことで、まだもう一話あります。今度は真面目にどのキャラを扱うかですね。まぁ、今回の話の伏線は回収できないものですね。理由は簡単です。この事実を知っているのは夜桜のみで、リョウは知りません。つまり、リョウが知るためには夜桜が話すか、それとも他者が伝えるかです。
前者はすでに夜桜が否定しているので、人を巻き込もうとはしないでしょう。
後者は響が伝えるとも思いませんし、なによりそれをする人はヒトデナシのクズ扱いになりますねwww
なんでそうなるのか?わからない人は、自分の胸に手を当て、他者の気持ちになって考えてみてください。そうすればすぐにわかると思います。
それでは一話目はこれで終わりです。




