甦る歌声
奈良都です^^
「さてと、んじゃテキトーに始めますか」
フェルベルトもさすがにミルがいるためもあり、まじめに戦うだろう。俺も俺の仕事をしよう。
「うりゃああぁぁッ!」
ミルの鎌によって引き去れた敵が苦しそうにもだえながらポリゴン化している。先日死神領で出たレア強化アイテム《魂喰ラフ死霊ノ欠片》により鎌を強化し、攻撃を与えたダメージの5パーセントを回復できる武器へと進化を遂げた。そのおかげもありレベルの若干の開きによる防御の低さは十二分にカバーできている。むしろ俺より硬いかも……。
「よいしょっと」
敵のレベル的に必要性も感じなかったため《アーマーブレイク》を使わずに敵をなぎ払っていく。フェルベルトはというとミルにいいところを見せようとしてなのか鬼のように敵を狩り続けている、奴はレベルが上がらないが、俺やミルは経験値が何割か入る。この前は奴がサボったんだ今回は俺がサボらせてもらうとしよう。
『……と……け……』
「ん?」
一瞬何かが聞こえたきがして振り返る。しかしそこには何もなかった。
「どうかしたんですか?」
不思議そうにミルが見上げてくる。若干不安そうな顔はどこかそそられるところが……いかんいかん。
「ちょっと気になることがあってな、フェルベルト! 少しミルのこと頼む」
「ふ、言われなくともそのつもりだ」
奴が真のロリコンならば絶対に彼女に手を出すことはない、そうロリコンはロリを神として崇めているため、供物を収めることがあっても、手を出すことはない。それを信じ、俺は声のしたほうへと進むことにした。
「行ってらっしゃい」
手を振るミルに笑顔で返すと、そのまま音のほうへと向かっていく。
◇◆◇◆◇◆
「あれは!?」
プレーヤーがモンスターに囲まれている、かなりまずい状況ではないだろうか。
「クッ、早く逃げろ」
『君にこの声が届くまで、いつまでもいつまでも僕は歌い続ける』
しかし割り込んだ瞬間彼女は何一つとして、まずい状況に陥ってはいないということに気づいた。
「モンスターが攻撃しないだって……」
『いつかこの声が尽きたとしても、まだ歌は終わらない』
響はギターを片手にモンスターに囲まれながら歌い続けていた。モンスターは攻撃することもなくただ見ているだけ、心なしか穏やかな目をしている。
『時に君が悲しみにくれても、僕の歌を思い出して』
自然と戦意が消え俺も構えていた剣をおろした。ようやく彼女の言いたかったことが分かった。たしかに言葉だけじゃ理解はできない。いや言葉だからこそ理解できなかった。しかし目の前にいる彼女を見て、その声を聞いて俺はすべてを理解した。
『そこに……ッ!』
ブチっと言う音と共に響のギターの弦が一本切れる。
「切れちまった……」
「……」
歌が終わるや否やモンスターたちは森の奥へと消えて行ってしまう。
「ごめんな、ありがとう。また聞きに来てくれよ」
このことが現実ならモンスターは心、もしくはそれに近い感受性を持っていることになる。興味深いことだが実際俺はバカだからわからない。
「なんかすげぇな」
「そう? 昔からずっとこれでレベル上げしてたけど」
「は!? どういうこと?」
「え、だってこれそういうゲームでしょ? モンスターに歌を聞かせて、経験地とお金もらうゲーム」
マジですか……。
「ところで僕に何か用?」
「いや、声が聞こえたから……」
すると響の表情が急に明るいものになった。
「ホント!? え、聞こえたの?」
「あ、あぁ」
「そっかぁ~、聞こえたんだ」
にんまりとして二回頷くとギターを調節し始める。
「さて、これを修理しないと」
「俺は使ったことないけど、それってどうなってんの?」
弦が切れるところを見ると、弦一本一本に耐久度があるようだ。
「基本、ギター本体には耐久度がないんだけど、弦には耐久度があるんだ。基本弦は買うしかないんだけど、なかなか店では扱ってなくてさ……」
「大変だな……」
ふと少し前に手に入れた素材を思い出す。
「これ使えないか? ちょっと前に手に入れたんだけどさ」
《銀狼の髭》を手渡すとそれを使って弦を張り始める。それを弾きながら音を調節していき、弦は元通りに修復される。
「すごい……、思ったように音が出るよ」
「そっか、よかった」
「これどうしたの?」
「銀狼ってモンスターの髭、ちょっと前に手に入れる機械が会ってさ」
「そっか、会ってみたいな~」
「会えるよ、仲間でテイムした奴がいてさ」
響の目がきらきらと輝く。
「そっか~じゃあ、いつか会いたいな」
「そういやさ、俺ギルド作ったんだけど」
「ごめんパス」
即答。
「そんな悲しい顔しないでよ、僕だってまだやりたいことがあるんだから」
「いや別に……」
「でも一つは叶ったよ、僕の歌が誰かに届きますようにって」
「そっか、ところでジョブはどうしたんだ?」
彼女は苦悩の末、自らジョブを破棄している。今はどうなっているのか気になるところだった。
「実はここだけの話……3次転職してるんだ」
「え……!? マジ?」
「そ、《歌姫》だってさ。性別とかいろいろ規定があったけど何とかスルーしてさ」
「《歌姫》か、お前らしいな」
「でも内容はアーティストとほとんど変わらないよ」
笑いながらそう響が答える。
「気持ちの問題だろ?」
「そうかもね」
さてと、と立ち上がり響は言った。
「僕はもう行くよ、仲間によろしくね。それとありがと」
「おう、元気でな」
こうして彼女の歌声は甦った。
えっと順番を変えます!
雷那さんまで行ったら逆回転でスタートしますのでよろしくお願いします




