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ろぐ☆あうと  作者: 奈良都翼
女帝
36/64

そして俺らはカーニバル

こんにちは。霧々雷那です。

 今回、パロネタがかなり多いですね。でも大丈夫なはずです。若干変えているし……。あぁ、そう言う問題ではない。まぁ、さすがにあそこに喧嘩を売るつもりはないですがね。ハハッ!

――――――っ!! 


 わたしは静かに一人、紅茶を楽しんでいた。

 白いプラスチック製の椅子と丸テーブル。周りは半径15メートルほどで切れており下は見えないほど高い。けれども、太陽に近く、日の光は温かい。それに、ここから見る景色は絶景だった。

 何故、わたしがこんなところにいるのかというと、それは……


 「やぁ、ずいぶんと落ち着いているね」


 少し小さ目の身長。少しパーマがかかった髪に、褐色の肌。眼鏡をかけていてずる賢そうなキャラの顔をしている男が突然目の前に現れた。

 そう、わたしはこの人に連れてこられたのだ。


 「終わった?」


 「あぁ……。アリアの寝顔がかわいかったよ……」


 「いや、そうじゃなくて、墓石の破壊は終わったの?」


 顔がにやついてるんだが、わたしはどういう反応をすればいいのだろうか……


 「あぁ、そっちか……。終わったよ。君も見てただろう?」


 「あ、うん。まったく、余計な真似してくれるね……」


 「別にいいじゃないか。君には今回の件の礼としてだな……」


 この場所の正式名所は、目の前のロリコン曰く、『観測(リーディング)者の(シュタイナー)部屋(ルーム)』……と、言うそうだ。なんか、厨二病くさい名前だが、本当に世界の全てが見れるので、わたしもこの名前には納得する―――――が、同情はしない。まぁ、わたしの場合は略してRSRと呼んでいたりする。もちろん理由は言いにくいから……。ここにいればわたしに記憶の齟齬が発生する心配はない。


 「余計なお世話よ。それに、あなたとはギブ&テイクの関係だったじゃない……。それも今回だけの」


 「そうだったね。でも、これで契約は終了だ」


 「そうね。わたしもそうさせてもらうわ」


 わたしは、紅茶を一気に飲み干し、イスから立ち上がった。

 

 まず、この男との関係を説明する前に、あの事件の裏で起きていた全てを説明しなければならない。長い旅路になりそうだが、ここから先を知るために付き合ってもらうしかない。それでは、一緒に……


 ◆◇◆◇◆◇



 時は、わたしが夜桜に襲われた時に遡る。

 爆炎の中、わたしは自身の召喚獣をだし、すぐさま、アイテム欄を開いて、そこにあるアイテムをすべて捨てた。もちろん、アイテム欄の下に、全アイテム放棄。というボタンがあるのでそれを押しただけだ。

 そして、わたしは水中にもぐり、あらかじめ取り出していた『盗賊の衣』を装備する。これで、わたしのHPバーは完全に見えなくなる。

 爆炎が止むとともにわたしはゆっくりと海面に浮上する。目の前には、わたしの存在に気が付かずに去っていく夜桜の姿がある。計画通りだ。わたしは再度、召喚魔法を唱える。


 「吸血鼠(バット)……」


 わたしの右腕の上に現れたコウモリはわたしが軽く上に腕を上げると、夜桜を追って飛び立ち始める。これであっちの様子も確認できる。

 わたしは夜桜の姿が完全に消えると、アイテムを全て回収し、ある場所へと向かった。


 ◆◇


わたしは《ネフティス》の墓場にやってくる。夜桜がわざわざわたしを魔法で殺そうとしたことから、そこまで管理者権限は残っていないはずだ。だとすれば、わたしが死んだことを認識するのはここしかない。


 来たことがない場所だったが、無事に来れた。わたしはこの場所が嫌いだ。何故か、自分の過去に死んでいった周りの人たちの墓を連想させ、わたしを不快にさせる。だから、今まで一度も来なかった。


 「《シャドウスライム》……」


 わたしは先ほども自身の犠牲となったモンスターを召喚する。シャドウスライムの効果はいたって単純。その場に一番多いものに化けるのだ。あの時、一番数が多かったのは人間。つまり、シャドウスライム人間に化けたのだ。そして、この場所で一番多いのは……


 わたしは周りを見渡す。周りで一番を多いのはもちろん墓だ。

 ほんの予備動作のつもりでやったが、ここで少し障害が生じる。シャドウスライムは確かに墓に化け、わたしの目の前に現れた。しかし、シャドウスライムは生きているため、ほんの少しだが動いている。それどころか、墓石には名前が彫られていなかった。これでは誰の墓かわからない。その上、シャドウスライムには効果時間があるため、知り合いが来た時を狙って出さなければならない。


 わたしはこの状況を打開しようと策を考えた――――――が、なに一つ浮かんでこない。

 そんなとき、彼が現れたのだ。


 「やぁ、お困りかい?」


 目の前には、少し小さ目の身長。少しパーマがかかった髪に、褐色の肌。眼鏡をかけていてずる賢そうなキャラの顔をしている男がいて、その男は眼鏡を少し手であげ、ドヤ顔をした。


 「あなたはだれ?」


 「私はフィルベルト……。まぁ、このゲームの製作者の一人と言ってもいい」


 わたしは少し驚いたが、わざわざ手にかけることはしなかった。おそらく、目の前の男は絶対に死なない。そんな感じがしたからだ。


 「その製作者の人が何の用?」


 「そうだね。私は君と契約しに来たのさ。なぁ、君。私と契約してアリアを救ってくれよ」


 「救う? 誰から?」


 「誰って決まってるじゃないか。カーディナルだよ」


 当然のごとくいう、彼だがわたしはどこか彼とは相いれない気がしていた。だが、手段は択んでられなかった。


 「製作者なら何とかできるんじゃない?」


 フィルベルトは残念そうに首を横に振った。


 「できたらすでにやっているさ。残念ながら私が担当したのはキャラクターデザインと一部のシステムデザイン。このゲームは複数の製作者で作られている。けれども、互いに自分の情報は明かしていない。もちろん実名すらもね……。私達の組織の理念は『己が欲のためだけに……』だ。だから、カーディナルはカーディナルシステムを作った人物にしか止められない」


 「そこで、わたしというわけ?」


 「あぁ。それと、私にはアリアを超至近距離で見たいという願望があってね。だから、全てが終わった後に君の姿を少しだけ貸してほしい。もちろん変なことはしない」


 「本当に?」


 「本当だとも。なぜなら、私はロリにしか興味がないからだ!」


 何か、キリッ!っと言っているけど、少々締まらない。だが、前にも言った通り、わたしには時間と方法がなかった。だから、彼の言葉は少しだが、うれしかった。


 「ギブ&テイクの関係ってことね」


 「あぁ、そう言うことだ。悪い契約ではないだろう?」


 「そのとおりね。わかった。その提案乗るわ」


 「フっ! それでよい。だが、提案ではなく、契約だ!」


 ドヤ顔をしながら、フィルベルトは軽く指を鳴らす。すると、チョコチョコと動いていたシャドウスライムが停止する。そして、その石碑にわたしの名前……すなわち『liria』という文字が刻みこまれた。


 「私の今の権限ではこれが限界だ。では、健闘を祈る……」


 わたしが墓石をもう一度確認して振り向くと、すでにそこにはフィルベルトの姿はなかった。これで本当に良かったのだろうか……


 「おーい!! リリア!!」


 わたしが悩んでいると、後ろからわたしを呼ぶ声が聞こえてくる。わたしは一瞬、ヤバイと感じたが、時はすでに遅かった。

 気が付いたときにはすでに目の前にはわたしより頭一つ分ぐらい大きな男性が立っていた。男性はぼさぼさとした黒髪に、引き締まった顎のラインは、今まであったどんな人物よりも輝いて見えた。体格も筋肉質で申し分ない。彼の名前はリュージ。わたしをゲー研に引き入れ、わたしを変えてくれた人物のもう一人。そして……………我がギルド、《蒼い鳥》のギルドリーダーだ。わたしはギルドリーダーではない。

 彼は腰にも背中にも何も装備していない。そのかわり、拳にグローブをはめ、額には長いハチマキを着けている。軽装で、そこまでDEFが高くはないのも特徴だ。そして、彼の腰には装備とは言えない代物……つまり鍛冶師用ハンマーが着けられている。鍛冶師はサブ職であるため、メインと重複できる。鍛冶師用ハンマーは威力が初期のナイフ並しかないが、耐久度は無限だ。つまり、壊れない。だからと言ってリュージの武器がハンマーなのでない。ハンマーはリュージが勝手に『ハンマーは鍛冶師の魂だ!!』などと言って持ち歩いているだけだ。特に意味はない。


 「何ですか? リュージ先輩」


 「あー。なんかアヤに新しい刀を創って届けるために帰ったら、アヤがお前のことを探してたぞ? あまりに帰りが遅いから、殺されたんじゃないかって……。後探すのはここだけだから、そのうち来ると思う」


 「マジですか……?」


 「うん……」


 わたしはリュージの胸倉をつかみ、リュージを連れて全力ダッシュを開始する。遅くなればそのうち他のメンバーが着て計画が水の泡になってしまう。


 「先輩! 説明は後でしますか!」


 わたしはリュージを引っ張りすぐさまその場を後にした。



 ◆◇



 とりあえず、わたしとリュージは《ネフティス》の宿屋の一室を借りて中に入った。そして、今知りえる情報とわたしがしようとしている計画を全て打ち明けた。このまま、隠し通せる自信がわたしにはなかったからだ。


 「なるほど……それで、逃げたわけか……」


 「はい……。でもこれはちょっと時間が足りないんです。それに大金が必要になる……」


 転移結晶は高価だ。わたしたちのギルドの倉庫からお金を絞り出しても一個買えるかどうかだ。だとすると、大ギルドに頼むしかないのだ。


 「あい、わかった! 転移結晶の方はオレが何とかしよう。だから、リリアはマップの方にまわってくれ!」


 「いいんですか?」


 「何言ってんだよ。オレらは家族みたいなもんだろ?」


 「そうですね……。いや、それ以上ですよ……」


 「そうだったな……」


 わたしたちは互いの顔を見つめ、満面の笑みで笑った。元から、武器の元となるレア素材をソロで集めに行く、バカな人なので、戻らなくても誰も心配しない。だから、協力しているのもばれないはずだ……



 ◆◇◆◇



 わたしは灼熱のマグマのようなステージをとにかく突っ走っていた。攻撃力もなく、防御力もないわたしだが、AGIとINTだけは2:1の割合で振っているので異様に高い。計画中、わたしはカーディナルを焦らせるために、一撃死ができるように装うが、できるわけがないので、ハッタリをかますことになるだろう。だが、演技だけは得意だ。


 わたしは出てくる岩の男性に触れることなく通り過ぎる。戦えば負けは確定だ。パーティでかなわないのにソロでかなうだろうか、いやかなわない。なんか古語みたいになったが、これが一番しっくりくる。

 わたしはスタミナを確認しながら時に走りながらパンをほおばる。食パンなので何かしらのエロゲーやギャルゲーを彷彿させるが、ここはダンジョンで角から出てくるのはモンスター。恋など始まらない!!


 わたしは全力疾走のまま扉を開け放つ。そしてそのまま一歩前に入り、即座に離脱する。ダンジョンを踏めばよいのでこれでいい。何かボスの間によくわからない機材があったが、スルーしておこう。いや見なかったことにしておこう……。だってあれは……。いや、言わないでおこう。言ったら気持ち悪くなる。簡単に言うと、釣り動画でよく使われているあれらの道具だ。これ以上は言いたくない。


 わたしは時間が無いので、なけなしの金をはたいて買った帰還結晶を使って街に戻る。わたしの体は光に包まれ、視界が一旦、フェードアウトした。



 ◆◇



 わたしの視界が再びフェードインしたのはあらかじめ登録しておいた《始まりの街》の噴水前の広場だった。

 これですべて周ったわけだが、少々疲れた。ずっと気を張っていたせいかな……



 刹那―――――――



 わたしは直感的に嫌な予感がし、フードを被った。焦ったせいか、ハイドをし忘れたことはこの後、終わってから気が付いたのだった。


 目の前にはわたしの家族以上の存在である《蒼い鳥》の面々が怒りを露わにしながら歩いていた。おそらく、わたしの墓を見たからだろう。だが、わたしはこんなところで止まれなかった。けれども、目の前を歩く集団にわたしは気が付くと声をかけていた。


 「少し待って」


 一同はまったく振り返らず、わたしの横を通り過ぎようとしていた。


 「忙しいから、また今度……」


 アサミは無表情のままそう、静かにつぶやいた。静かなアサミでさえもあんなになっているのだ。わたしは少しの罪悪感を覚え始める。


 「……リリア」


 「――――――ッ!!!」


 一同が一斉に振り向きわたしのことを見てくる。羽田氏はようやくそこで自分のハイドが解けていることに気が付く。まぁ、時はすでに遅いのだが……


 「お前……何故その名を?」


 「ここじゃお別れしか言えない。また生まれ変わった世界ではお話ししましょう……」


 そう言ってわたしはほほ笑み、マントをとった。その姿にギルドの面々は驚く。まぁ、当然だ。


 「リリア……生きていたのか……」


 「うぅん。わたしはすでに死んでる。だから、もう時間がないの……」


 「そんな、私にはまだお前に話したいことが――――――」

 「さよなら……。今まで楽しかったよ。それにありがと―――――」


 アヤの言葉を遮り、最後に言い放った言葉を言い終える前にわたしは再度フードを被り、ハイドする。そして、抱きつこうとするアヤの腕をバックステップでかわした。


 アヤは腕を空振りし、力なくその場にへたり込む。アヤの顔に月光が反射し、煌びやかな光を放つ。

 わたしは数秒間止まっているアヤを透明の体のまま見続けた。もちろん、あちらからは見えていない。


 「おい……」


 アヤはドスの効いた低い声を出しながらゆっくりと立ち上がる。なんだか、気配が変わったようだ。

 アヤはわたしに気が付くことなく背中を向ける。


 「リョウを殺しに行くぞ。このままでは収まりがつかん……」


 その言葉を聞いた途端、わたしは頭を抱えた。

 本当はアヤを止めたかったのだが、どうやら逆効果だったようだ。わたしは自分のしたことに少し後悔した。だが、そんなに後悔しても始まらないと思い、先を急ぐ。あとは、リュージがもってくる転移結晶を三つ受け取り、リョウの元に向かうだけだ。そして、全てに決着をつける。



 ◆◇◆◇◆◇



 ここから先は語る必要はないだろう。君たちはもう知っている。そう、わたしは見事に成功し、そしてリョウを高ぶった感情で殴ってしまった。

それだけだ。もちろん、あの時、あの場所、あの瞬間、リリア=エカルートのアバター……すなわち、リリアを操っていたのはフィルベルトではなく、紛れもなくわたし自身だ。でなければリョウを殴ったりしない。あのときリョウに言った『失ったらもう戻ってこない』という言葉はわたしの境遇に重ねてしまったものだ。それに、この言葉は本心からだった。誰も真似などできるはずがない。


 わたしは空中庭園で最後にフィルベルトの顔を見た。彼にはいろいろと助けられた。そこは感謝しなければならない。


 「ちょっといいかい?」


 「はい?」


 わたしは疑問の顔を浮かべる。この後に及んで何かあるのだろうか。


 「君に話しておきたくてね。あの三人の処遇のことを……」


 「どうなるんですか?」


 「なーに。カーディナルは彼らのことを消したりしないさ。なんせボスだからね。簡単に言えば、彼らの役目が少し変わったのさ。彼らは戦闘の装備から変わった。そう、メンタルケアAIへとね。だから、一人個人の人間付きまとうことはできなくなったし、戦闘はもってのほかだ。けれども、必ず君たちの目の前に現れるだろうね。まぁ、アリアは今、傷の修復のため眠っているがな」


 「そうですか。わたしは彼女に恨みは無いので何もしませんよ。それで、あなたはリョウに心配をかけないようにあんなこと言ったのですね。」


 「それを聞いてほっとしたよ。まぁ、幼女が痛めつけられるのも――――――いや、これはアリアでは無理か……。やはり、もっと気の強い幼女に作るべきだったか……。あぁ! リョウくんには私からの配慮だよ。本当は私たちの権限ではカーディナルに任せるしかない。それが現実だからな。このことはリョウくんに秘密にしておいてくれよ? あぁ、でも、やっぱりアリアが絶望しきったほうが……」


 なんだか悩みだすフィルベルトよそに、わたしはドン引きした。至極当然のことだが……。数秒後に悩みを抛り出したフィルベルトは私の目を見て、眼鏡を少しだけ上げる。


 「あぁ、最後に、君との契約を終わらす最後の儀式をしよう」


 「儀式……ですか?」


 「そう儀式だ」


 フィルベルトは再度軽く眼鏡を上げ、その位置を整える。そして、軽く指を鳴らし、わたしに言い放った。


 「わたしと一局……打ってもらえないかな?」


 目の前には突然、全自動の麻雀卓が現れる。かなり高そうだ。まぁ、今の彼なら趣味で作りかねないものだ。


 「東風でいいですか?」


 「あぁ、それでいい。持ち点は30000だ」


 わたしは静かにフィルベルトと反対の席に着いた。二人が対峙すると、フィルベルトは再び指を鳴らす。すると、地味なオッサンが二人現れる。

 わたしは麻雀が得意ではないが、とりあえず負けてもいいのでやることにした。どのみち、彼がシステム権限を使わないと帰ることはできない。もちろん現実には、不可能なのでゲームの世界にだ……が。彼の権限ではわたしたちを返すことは無理らしい。


 そうして、わたしの勝負は始まった。


 東風戦、第一局……オッサンその位置が親だが、速攻でフィルベルトがあがる。


 「カン!!」


 フィルベルトは出てきた牌を見て、にやりと笑い、それを指ではじいて上にあげる。そして、空中で受け取り、そのまま麻雀卓のヘリに上に飛ばした牌を叩きつけ、残っていた自分の牌を倒す。


 「嶺上ツモ、清一色 ドラドラ、対々、三槓子!!」


 わたしはその瞬間、この男がかなり強いことを実感した。

 オッサンAの親が飛ばされ、次はフィルベルトになる。

 これが運命の決するところとなった。


 「ロン! 平和、清一色!!」


 わたしの持ち点は次々と削られ、気が付くと、周りが死屍累々だった。わたしの持ち点はすでに3000を切っている。対してフィルベルトは余裕の10万点越え……


 「ロ、ロン! リーチのみ!」


 わたしも必死で抵抗したが、彼に抵抗することは難しかった。いや、彼はどこか別次元で戦っていた。

 ようやく、彼の親が終わり、オッサンBの親となったが……


 「ロン……。清一色、断ヤオ、ドラ……」


 彼はどこかさびしげにそうつぶやいた。オッサンBの親が速攻で終わり、わたしの親番が回ってくる。これで終わりだ――――――そう思ったのは彼があることを口にする前だけだった。


 「つまらない……。実につまらないね。この、ロリコン清一色使いの私を楽しませてくれると思ったのだがね……」


 「清一色……使い……?」


 「そうさ。私の元には必ず清一色ができる。簡単なゲームだろう?」


 「―――――っ!」


 わたしは歯噛みした。そんなことがあっていいのだろうか、彼は確かに強い。でも彼の能力はどこか化け物じみている。まるで……魔王!!


 「なぁ、ちょっとしたルール変更をしよう! 君が勝ったら無事に返してあげるよ。でも、君が負けたら、君はここで死ぬ……。どうだい? 簡単だろう?」


 「――――――っ!! なっ!!」


 「まぁ、驚かないでくれよ。気楽に行こうじゃないか。君は幸運にも親だ。勝ち目はまだある。そうだろ?」


 確かにそうだ。でも、すでに点差は十万点に及んでいる。それをどう巻き返すというのだろうか……。

 いや――――――ちがう!!


 やれる、やれないの問題じゃない!! やるんだ!!!


 わたしは沈んでいた心に闘志を燃やし、顔を上げる。


 負けられない。負けられないんだ! わたしは必ず戻ってみせる! みんなの元へ!!


 「おぉ! やる気みたいだね!」


 フィルベルトは嬉しそうに笑った。やはり、彼は本当に麻雀が好きらしい。でも、私はいくら彼が強かろうと負けるわけにはいかない。わたしは負けない。絶対に!!


I am bone of my luck.

体は幸運で出来ている。

Fate my body, and destiny my blood.

血潮は運命で、心は宿命。

I have created over a thousand doom.

幾たびの悲運を越えて不敗。

Unaware of death.

ただ一度の死亡もなく、

Nor aware of survival.

ただ一度の生存もなし。

Spin pain to create fortune waiting for one's arrival.

担い手はここに独り幸運の丘で因果を紡ぐ。

I have no regrets.This is the only future.

ならば、我が未来に意味は要ず。

My whole life was "unlimited fortunate works."

この体は、"無限の幸運で出来ていた"。



 体全体に変な力を感じ、それはやがて、わたしの右手の先へと集まっていった。

 全自動の麻雀卓がうなりを上げ、わたしの目の前に伏せてある牌が並べられる。わたしは自分の運を信じ、それを一気に上げようとする。いや、結果はもうわかっている。だからわたしは、自分で見ることはしない。だって、感覚で、なにが今着ているのかわかっているから……


 わたしは、牌をそのまま裏返して、全員に見せる。これでいい……


 「どういうことだい?」


 当然のごとく、フィルベルトは聞いてくる。


 「こういうことですよ!!」


 そしてわたしは、山から最初の牌を取り出し、麻雀卓に叩きつける。その途端、全員の顔が変わった。牌は旋風のごとく回転し、数秒後にようやく停止する。おそらく、わたしの目は何らかの光で輝いていただろう。


 「ツモ……大三元……字一色……四暗刻単騎待ち…………天和……」


 「…………な……なにぃぃぃぃぃぃいいいいいい!!」


 数秒の沈黙ののち、目の前で起きた事象に誰もが驚いた。戦慄が走り、一瞬のうちに誰もが黙る。わたしだって同じだ。まさかこんなのが出るとは思ってもみなかった。


 フィルベルトは怒ることなく、一度黙り、そして笑い出した。


 「面白いですね!! まぁ、約束ですし、あなたを帰しますよ。まったく、すごい強運ですよ。死に際のあなたは……」


 「まぁ、なんとなく自覚はしてたんですけどね……」


 わたしは自嘲気味に笑って見せた。


 「あぁ、最後に……。君は今回のカーディナルの行動をどう思う?」


 「そうですね。多分、カーディナルはプレーヤーがクリアすることを促したんじゃないですか? あの時は、二人のパーティでは死ぬから止めた……とか……。でも、途中から、変わったんだと思います」


 「うむ。私はね……実に許せないんだよ! 私のアリアを勝手に操り、勝手に操り! 勝手に操りぃぃぃぃぃぃいいいい!!」


 「とんだ変態さんですね」


 「変態じゃない! 変態という名の紳士だ!!」


 「保健所に送りますよ?」


 わたしがこういうと、彼はさわやかに会話を止めた。


 「君は、再度あの三人とボスの間で対峙した時に戦えるかい?」


 わたしは彼に背中を向け、顔だけ彼の方を向きながら笑った。そして、消えゆく自分の体を感じながら、彼に言い放つ。


 「当然ですよ。わたしには蒼い鳥(守りたい場所)がありますから……」


 その言葉を彼に伝えられたのかわからないが、気が付いたときにはわたしは《始まりの街》の路地裏にいた。目立たないところに転移させてくれたのだろう。

 わたしはじめじめとした路地裏から出て、背伸びをした。

 仮想の空気と朝日だが、今はそれが気持ちよく感じられた。


 その時、目の前にシステムメッセージが現れる。


 『今から、女帝攻略を開始します。参加される方は至急、所定の場所まで集まってください。―ギルド:《リアライズ・ワールド》ギルド長、カノンより―』


 わたしはそれを見て、静かにほほ笑んだ。


 「さて……いっちょ行きますか!!」


 わたしは明るく、そして、仲間とともにあるこの体を噛み締めながら、明日への一歩を踏み出した。


 そして、物語は今へと至る――――


 


 ◆◇◆◇◆◇



 わたしは作戦会議にぎりぎりのタイミングで参加することができた。前回の攻略と比べ、人数は激減している。

 最初の攻略の時に死者が出たのが未だに響いているのかもしれない。


 30人……。ちょっと少ないかな……。


 わたしたちのギルド……すなわち、《蒼い鳥》からの参加者はわたしとアサミと、タツヤのみ。前回は全員で参加したが、今回はアヤとリュージは不参加だ。まぁ、前々回はわたしだけだったのだが……。


 作戦会議の前にリョウがこちらの方を見てきた。あの敵意のない視線から、まだわたしのことをフィルベルトと思っているのだろう。まぁ、今のところはそうしておこう。だが、わたしはリョウとの縁りを戻す気などさらさらない。わたしは許せなかった。命を軽んじ、親しい人物を大切にしなかったことが……。せっかくのフィルベルトの配慮だが、ここは致し方ない。



 グループの組み合わせが決まる。わたしは……Bか……。


 グループ集合場所に行ってみると、そこにはすでにわたし以外の人物が皆集まっていた。この中に、《センブルクの風》のヴァルヴァディアと《リアライズ・ワールド》のカノンがいないことから、AかCのどちらかに入ったことになる。そうすると、三大ギルドのトップのうち、誰かが同じグループになるはずだ。ヴァルヴァディアさんとカノンさんが同じグループになるのは大丈夫なのだが、《天魔帝国軍》のギルに関して言えば、あまり一緒になるべきではない。ギルはあまり集団向きではない。だからと言って、慕われていないのではなくむしろその逆で、ギルド内では絶大な人気を誇っていたはずだ。ただ、彼のジョブがジョブなだけに一人の方が闘いに向いているのだ。彼のジョブは三次職で、あまりいない。かくいうわたしのレベルも37で、もう少しで、三次職の40レべへと到達する。他の蒼い鳥のメンバーもそんなものだ。アサミとタツヤはどうやらAグループのようだ。リョウと何かしらのいざこざを起こさなければいいのだが……


 「さぁ、オレ達Bグループも行くぞ! みんな! オレ様について来い!」


 なんだか、王様気分のリーダーだが大丈夫なのだろうか……。まぁ、どちらにせよ、Bグループが最後になるのはしょうがない。強いと思われるプレイヤーがいないのだから……。

 知り合いと言えばヒビキだが、彼女の表情は何処かしら曇っている。今はそっとしておこう。わたしは使い魔であの時の状況を確認していたし、わざわざ聞く必要もない。


 先頭に立つ、オレ様野郎の槍使いのリッドルの後に続いて次々とダンジョン内に突入していく。わたしは最後尾でついていった。



 ◆◇◆◇◆◇



 ダンジョン攻略は快調とは言い難いが、順調であることは間違いなかった。そんな中のわたしの役目は前線が取りこぼしたモンスターを狩ること。まぁ、攻撃も防御もないし、妥当な線だろう。

 そうこうしている間に前線が取りこぼした斧持ちの犬のモンスターがこちらの方に向かってきた。わたしはため息をつきながらそちらに対応し、倒すために接近する。

 わたしが使っている短剣は《魔法剣リライト+5》というものだ。両刃で刃渡り30㎝ぐらいの短剣で、光属性を持つ。《女教皇》からドロップしたユニーク武器だ。その効果は相手に与えたダメージの3%を回復するというかなり良いものだが、生憎、わたしにSTRがないので、あまり回復効果は望めない。それでも、攻撃力はなかなかのものだ。ちなみに《+5》という表記は強化した回数のことである。強化は鍛冶師の腕によって異なるが、三回目までは順調にできる。ただ、四回目以降から失敗すると様々なペナルティが出る。例えば、強化のランクが0に戻るなどである。これはもちろん酷い時の例だが、軽くて武器の耐久値が減少だろう。レベルを上げるごとに失敗の確率は高くなる。それに何度も強化できるのではなく、強化回数制限もある。この短剣は最高8回だがそこまでやる気にはなれない。だから、何度でも挑戦などという甘い考えはできない。つまり、強化するにはそれなりの覚悟がいるのだ。わたしは5回目を成功させたあたりでストップさせた。まぁ、5回も成功させたのだから、さすがはリュージというべきだろう。ちなみにそんなリュージの世間での通り名は《熱血拳の一発屋》。とても鍛冶師の通り名とは思えないとこは置いておくとして、リュージは完全受注生産をしているので、店は営んでいない。


 犬がこちらに向かって突っ込んでくる。わたしはそれに合わせて、短剣を振るおうとした。


 刹那――――――



 わたしの足もとが急に崩れ、体勢がよろける。


 「く――――――っ!!」


 わたしはすぐさま足元を確認した。そこにはまるで落とし穴のような空間ができている。穴の底には無数の針があった。ただ、軽く踏み出したことが幸を制したのか、完全におちることのなかったわたしの体はどうにか片方の足だけ向こう側へと到達させる。

 片足だけで一気に跳躍し、迫ってくる犬の頭上を軽々と超える。

 わたしはそのまま体を縦に回転させ、犬の後頭部に踵蹴りをいれる。もちろんダメージはほとんどない。先ほども言った通り、わたしにはSTRがほとんどない。

 けれども、犬の目の前には先ほどわたしがはまりそうになった落とし穴がある。犬の体は一瞬だけよろけ、そのまま落とし穴の中へと落ちていった。穴はかなり深く、上がってくるのは無理だろう。数秒後にはポリゴンの欠片になること間違いなしだ。



 「どうした? 先に進むぞ!」


 前方のリッドルがわたしのことを心配し、声をかけてくる。わたしはそんなリッドルに苦笑いをした。


 「大丈夫です。えっと……。わたし、忘れ物したのでパーティを一旦抜けます。後で追いつきますので先に向かってください」


 「そうか! まぁ、オレ様はだれよりも早くたどり着ければそれでいいんだがな!!」


 「ありがとうございます。すみませんでした」


 わたしは一礼して、集団が消えていくのを見送った。本当は忘れ物などしていない。ただ、一つだけ気になることがあったのだ。


 「さて……と……。《ラビット》!」


 わたしの足もとに白色の魔方陣が現れ、くらい城の中を明るく照らす。けれどもそれは一時的ですぐに光は弱まり、そのかわりに一匹のウサギが目の前に現れる。《ラビット》の効果は詮索能力で、近くのアイテムや隠し通路を発見する召喚獣だ。

 ウサギは静かに走り出し、壁際によって止まった。


 「そこか……」


 わたしは軽く壁のようなものに手を触れる。何も変化がない。今度は軽く叩いてみた。すると、中に空洞があるような音が聞こえてくる。わたしはその岩から数歩離れる。一緒にウサギもついてきた。


 「《アモン》!!」


 《アモン》はプレーヤーとともに戦ってくれる、戦闘専用の召喚獣だ。嘴の尖った鳥の姿をした悪魔はわたしの目の前の城の壁を見て、目を輝かせる。


 「ギガ……ビーク……ブレイクゥゥゥゥゥゥ!!」


 《アモン》は自身の体を回転させ、そのまま城の壁に突っ込んでいく。そして、激しい火花を散らしながら、壁を貫通し、破壊したところでようやく止まり、光の粒子となって消えていく。先ほどまで壁があった場所には未来(さき)へと続く穴ができている。


 わたしはチャット画面を開き、《ギルドチャット》を使って、アサミとタツヤにメッセージを送る。この先は一人では不測の事態に対応しづらい。だから、仲間を呼んだのだ。ギルド内なので、所在地はつかめているはずだ。

 わたしは二人の到着を待って召喚したウサギと戯れた。


 ◆◇


 数分後に二人はきちんと到着した。


 「どうしたんですか?」


 「いや……。あれね……」


 わたしは穴の開いた通路の方を指さした。それでタツヤは納得したように首を上下させる。アサミは眉ひとつ動かさない。


 「警告。この先、隠しルートによって難易度が上昇する可能性あり。二人は潜入の最終確認をとることを推奨します」


 相変わらず無表情で、かまずにさらさらと言ってのけるアサミに、タツヤとわたしは同時に頷いた。最初から覚悟はできている。


 「了解。私も援護します」


 アサミは腰からハーモニカを演奏を始める。ココロが安らぐような清らかな旋律が道に響き、わたしたちの心を落ち着かせる。それとともに、バフが付与され、一時的にステータスが上昇する。

 アサミのジョブは《吟遊詩人》だ。パーティ後方で、パーティを支える重要な役と言える。また、そんなアサミの振り方はAGIとINTの極振りで、特にAGIが高いため、逃げ足だけは素早い。化け物じみた反応速度だけ(、、)見れば、《駆逐師》のギルにも劣らないぐらいの速さを持つ。

 ちなみにタツヤのジョブは《ソードマスター》で、主要武器は片手剣と小さな盾だ。


 わたしを含めた三人はゆっくりと中へと足を踏み入れていった。



 ◆◇◆◇



 通路の中はモンスターがまったくポップせず、むしろ不自然だった。だが、ゆっくりと前に進むと、明るく光っている部屋が見えてくる。廊下の角から光が漏れ、中に誰かがいるように物音が聞こえてくる。

 わたしたちは廊下の角で様子をうかがった。中では数匹の装備をした犬たちが何やら話していた。


 「おぉ! 作戦は成功だな!」

 「あぁ、戦力を集中させることで、一番弱いグループの被害を大きく出来たぜ!」

 「これで、わが主の手助けとなれば……」

 「いや、きっとなる。イエス! ユア・マジェスティ!」

 「「「イエス! ユア・マジェスティ!!」」」


 わたしたちは首をひっこめ、作戦会議を始める。もちろん、とても小さな声で……


 「どうする?」

 「どうするってそりゃあ……」

 「目標を殲滅します……」

 「デスよねー」


 そこから、まさに虐殺と思われる惨劇が繰り広げられ、瞬く間にそこの部屋にいた犬たちが殲滅された。部屋の犬を殲滅したわたしたちはゆっくりとボスの間へと戻って行った。




 ◆◇◆◇◆◇



 A,B,Cすべてのクループがそろったボス直前の間では、最後の打ち合わせが開かれていた。そして、打ち合わせを終えた集団は一斉に立ち上がり、扉の前に対峙するのであった。その時はまだ、リリア、アサミ、タツヤの三人の姿はなかった。

 ただし、ふんどし一丁のリョウの姿はあったが……


ふぅ……。あぶない、あぶない。とりあえず、麻雀の解説でもしましょうか? リリアの最後に出した、ありえないぐらいのやつですが、実際に実現することは可能なはずです。まぁ、そんなこと起きるはずがないですがね。一応、わたしのキャラで原作がある物に関しては、その原作のオリキャラの能力を使っています。ただ、リリア、大文字→登場済み。 アヤ、タツヤ、リュージ、アサミ→未登場。 ですがねwww いずれ、名前だけでも出てきますよ。ちなみに、ヴァルヴァディア、カノン、リッドルに関してはこの小説だけの完全オリキャラです。

 長いあとがきになりました。それでは今回はこの辺でまわしたいと思います。次回はついにボス攻略なのかな……。

 それでは~ノシ

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