駆逐系男子&魔法剣士 (物理)
ならと翼です
いろいろ忙しく書くのが遅れましたすいません^^;
それでは本編どうぞ
次第にはっきりしてくる天井を見上げため息をつく。現実世界での体力的衰えのためか、起き上がるのすら気力がわかなかった。
「なんだったけな、……そうだ夏輝を見に行くんだ」
顔を洗い、母からの仕送りであるレトルト食品を口に含む。しかし次第に食欲が消え、ひどい吐き気が俺を襲った。
「なんだよ……いったい」
立っているのもつらくなり、その場にへたれこむ。まさか体力がここまで落ちていたのだろうか。
「くそ、こんなんじゃ行けねぇよ」
この体が夏輝のとこへと行くまで体力を維持できるとは思わなかった。仕方なく携帯を取り出し母に電話をかける。
「もしもし……母さん」
『良なの? 元気じゃなさそうだけど、何かあったの?』
「俺のことはいい、それより夏輝は今どうしてる?」
『今は分からないけど、昨日お見舞いに行ったときはいつものように寝てたわ。少し痩せた気がするけど、何かあったの?』
「なんでもない、大丈夫だ。ありがとう」
そういって電話を切る。所々起きている俺ですらここまで体力が落ちているのだ。ずっと寝続けている夏樹はそれ以上に衰弱しているに違いない。
「戻るか」
それよりあそこにいた夏樹は一体誰だったのだろうか? それだけがいまだに謎のままだ。目を閉じ電源を起動する。俺は向こうの世界へと吸い込まれて行った。
「戻ったか」
ボス攻略の時間までさほどなかった、それまでに言われていた所定のエリアに行かなくてはならない。
「急ごう」
走りながらふと思った、《蒼い鳥》のメンバーはおそらくいまだに俺に何かしらの疑心を抱いているに違いない。仲間とはいえ彼らの行動は見張らなくてはいけないだろう。《天魔帝国軍》とは初めて会うことになるだろう、どんな人間か正直不安だ。
「ここかな」
もう数名がそこにいた。刈上げの男、眼鏡をかけた長髪の女性とも男性とも取れる奴、金髪のオールバックの男。おそらくこの三人が《天魔帝国軍》のメンバーだろう。
「これで5人目だ」
ぽつりと刈上げの男がつぶやく。その言葉の意味を汲めばここにもう一人いることになる。あたりを見渡すと岩陰に一人フードを被ったプレーヤーがいた。杖を持っていることから魔法系のジョブだろう。そして3人とその他のメンバーの顔を知っている以上彼女が誰だかは知っていた。
「お待たせしました」
ひょろりとした弱々しい体つきの男が現れる、タツヤだ。その後ろには《蒼い鳥》のメンバーが続いている。アサミと目が合う視線だけで俺を殺しかねないほどの敵意を込め俺をにらんでくる。それに続き大文字が来た。
「よし、では自己紹介をしようか。俺はゲイル、《天魔帝国軍》のリーダーをしている。よろしく」
「……ギルだ、馴れ合うつもりはない」
そう告げたのは先ほどの刈上げの男だ。装備軽装で、奇妙な形をした薄い剣と腰から伸びる変な管が特徴だ。
「まあ、物言いはこんな奴だけど腕は確かだ。僕らのギルドで唯一三次転職を終えている」
その言葉にあたりがざわめく。俺も三次転職を終えた人間を見たことはなかったが、彼がそうらしい。大型ギルドで一人のみなのだから。おそらくゲーム内でもまだ数名しか三次転職を終えてないのだろう。
「おっと僕はユーリ、よろしくね」
騒ぎが収まるとこを見計らい彼? が付け足す。こいつは男なのか? 女なのか?
「さて俺たちはもうすでに自己紹介をした、次はあんたたちだ」
ゲイルがそういう。それに促され《蒼い鳥》のメンバー、大文字が続く。
「で、そこのお前は?」
ギルが俺に向かいつぶやく。
「リョウだ、よろしく」
自己紹介したとたん鼻で笑われる。
「バカみてぇな名前だな。センスのかけらも感じられねぇ」
「三次だか十三次元と十二次元の狭間だか知らないが、俺の両親が付けた名前だバカにすんな」
それを聞きますます声を荒げ笑うギル。
「アバターにリアルネームとか、ぷははッ! バカだバカ」
「何を!」
「悪かったな、気に入ったよ。そうかリョウか、よろしくな」
先ほどまでの不干渉な態度と打って変わり手を伸ばしてくるギル。
「あぁ、よろしく」
その手を握り返す。
「そんで、そこのあんたは?」
ゲイルがそこにいる彼女に話を繋げる。
「……」
黙っている彼女は全体の視線を奪っていた。
「今から一緒に行動するんだ、もう少しコミュニケーションを取れよ」
彼女……一之瀬夏輝はゲイルをにらみ一言つぶやいた。
「……一之瀬夏輝」
ギル以上の不干渉な態度にあたりの空気が悪くなる。
「さて、そろそろ出発するか」
それを打ち消すようにギルがつぶやく。
「極力戦闘は避けつつ、敵の中枢に入り込む。いいな?」
そのゲイルの問いに全員が頷く。歩きながら数分たつころには敵が何体か見えてくる。
「ここは任せろ、三秒だ」
ギルはそう言うと目の前から姿を消した。だが実際は俺たちが目視できないほどのスピードで敵の後ろに回りこんだのだ。刃を敵の急所に当て一撃で犬がポリゴン化する。仲間の突然の死に動揺したのか犬たちの動きは鈍くなっていた。そしてまたギルは加速すると一匹また一匹と一撃で仕留めていく。
「弱い、二・五秒だったな」
最後の犬をしとめ、つぶやく。
「彼はアサシンの上位ジョブ、駆逐師だ」
「駆逐……師?」
「防御は紙だが、スピード、一撃の攻撃力は全ジョブ最高だ。そしてそこに彼の操作技術、うちのギルドの戦力の半分以上とっても過言じゃない」
「ちッ、剣の消耗が激しい。なるべく戦闘を避けるべきだな」
そう言うと剣身がはずれポリゴン化し、ギルはそこに新しい刃を取り付ける。
「行くぞ」
彼のおかげもあり全グループ中で一番早くたどり着くことができた。
「どうやらほかも来たみたいだな」
おそらくBグループだ。人数はちゃんと10人そろっている。
「さすがは隊長、やっぱり俺たちじゃかなわねぇや」
「お前らが弱いだけだ」
そんな会話の中にギルへの仲間からの思いを感じた。
「Cグループが遅い、……一体何が?」
Bグループの面子を見る限りでは響の姿はない。おそらくCにいるのだろう。
「くそ、行ってくる」
「まてリョウ、……まったく」
ギルの静止を振り切り俺は走り出した。何かあったに違いない。
「ったく、そういうのをしていいのは力がある奴だけだ」
俺に並走しギルがぼやく。
「力なんてないけど、俺は俺にできることをしたいんだ」
「やっぱりお前、他の奴となんか違うよ」
クスリと笑うとギル。走るうちに砂埃のエフェクトが見えた戦闘が起きているのだ。
「やだ、俺はまだ死にたくなぁぁああッ!」
プレーヤーが一人ポリゴン化する。そこにいる無数の巨大なモンスターはその豪腕を振り回している。残っているプレーヤーは6名ほどだ。その中に響の姿があったが、いつもと様子が違う。いつも彼女の歌を聞けば力がみなぎり集中力が高まったが今日はそうではなかった。
「いったい」
「ぐずぐずしてると、あいつらみたいになるぜ」
剣を抜きギルが構える。振り下ろされた豪腕を避けそれを駆け上り、巨大モンスターのうなじのところに立つ。
「ったく、動くなよ。うまく切ねぇだろ」
剣が一閃し、巨大モンスターのHPが一瞬で尽きる。ギルは崩れる体を蹴飛ばし他の巨大モンスターの背中へと飛び移る。
「やっぱすげぇな、……俺だって」
響に攻撃をしていた巨大モンスターを切りつける。《海楼》はすんなりとモンスターの厚い皮膚を引き裂き、HPをがつりと削った。
「すげぇな」
その力に興奮を覚えながら、響の方を見る彼女は歌い続けているのにもかかわらず、戦意は高まらない。その声は虚しくそれに吸い込まれていく。
「一体どうしたんだ」
巨大モンスターの攻撃を交わしながら止めを刺す。《海楼》の威力は想像したもの以上だった。
『新しいスキルを手に入れました』
レベルアップの表示と共に、視界をその文字が横切る。スキルの名前は《アーマーブレイク》というものだった。
「なんか威力が高そうだ、MP消費は……98パーセント!?」
あいにくMPは使用していなかったため使うことは可能だった。
「物は試しだ、《アーマーブレイク》ッ!」
その瞬間、装甲がはじけ飛ぶ…………俺の。
「え……えぇッ!」
体に纏っていた防具はすべて消え、そしていまふんどしだけが俺の体を包んでいる。
「しかし、力があふれてくる、不思議だ……」
気づくと巨大モンスターの豪腕が俺の目の前にあった。
「……止まって見えるぜ」
その拳を避け、相手の懐に入る。
「だあああぁぁぁああッ!」
巨大モンスターにアッパーを繰り出す。その一撃に敵の巨体はゆれる。
「オラッ! オラッ! オラオラオラオラッ!」
地面に着地するまでに相手に無数の打撃を与える。その攻撃に巨大モンスターのHPはすべて消えた。
「ふふふ、ふははははッ! 俺の拳は無敵だ」
剣を持っていることを忘れただひたすらモンスターに拳をぶつける。一匹また一匹と俺の拳は獲物を仕留めていく。途中から剣のことを思い出しそれで切りつける。すると敵は先ほどの比ではないほどあっさりと落ちていく。
「なかなかやるな」
ギルが最後の巨人をねじ伏せそうつぶやく。
「お前もな」
俺はふんどし一丁で答えた。
「一体なぜ大型モンスターがこれほど……」
「それより仲間は? 何人死んだ?」
そこには二人を含め7人がいた。おそらく戦ってるうちにも一人死んだのだろう。
「響、無事か」
言葉をかけたとたんその場に崩れ落ちる響。
「だめだった、戦いを止めさせることはできなかった……」
改めて彼女を見たとき先ほどまでの違和感のわけに気づいた。
「お前ジョブは?」
「…………僕は違うんだ、僕はボーカロイドにもアーティストにもなりたいわけじゃない。争いを歌で止められる、そんな風になりたいんだ」
彼女はジョブを破棄していた。今は完全に初期状態といってもいい。
「歌で戦いをとめられると思っているなら、お前は間抜けだ」
「ああそうさ、結局とめられない。僕は間抜けだ」
自分の格好と話の内容がまったくといっていいほどかみ合っていなかった。まるで某尻尾たちシリーズでコスプレのままイベントを迎えてしまったなんとも言えない気分。
「でも、それはお前が選んだ道だ」
「え?」
「バカでも間抜けでもでも最後までやりぬけ、俺はそんなお前が一番正しいと思う」
「俺は行く、お前がどうするかはお前で決めろ」
そして俺は歩き出した、ふんどし一丁で。
「話は済んだか?」
「ああ」
「ところでいつまでその格好何だ?」
「知らん」
一之瀬夏輝、Cグループを襲った巨大モンスター。多くの謎を残したまま俺たちはボスに挑む。……ふんどし一丁で。
駆逐してやる、一匹残らずこの世から
って感じなわけです、はい
それじゃ雷那さんよろしく^^




