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ろぐ☆あうと  作者: 奈良都翼
カーディナル&女教帝
32/64

その場所、その時、その瞬間

『時は戻らない……。それが自然の摂理……』

これは某ゲームの、某キャラクターが秘奥義の最後で言う言葉ですが、今回はこれのみが唯一のギャグとなっています。それは何故かって? それは読んでのお楽しみです。あとがきの方できちんと理由をいいますよー。のヮの

言い忘れたぜ!

こんにちは。霧々雷那のまえがきでした。


 これは本当に他愛もない物語……


 わたしの生まれた国は先進国で、衣食住に困らない幸せな日々を送っていた。近所の友達と笑いあい、共に育っていった。けれども、そんな幸せは一瞬にして崩れ去った。


 高校に進学したわたしは、修学旅行に来ていた。初めのうちはみんな楽しく過ごしていた。悲劇が起こるまでは……


 テロ


 世の中ではそう呼ぶのが良いのかもしれない。でも、それはテロなどという生易しいものではなかった。テロをやさしいものとするわけではない。わたしが体験したものを例えて言うならば……。そう、『虐殺』だ。


 銃器や爆薬を持って、逃げ場のない海の上で、友人や先生を殺していく覆面集団……。わたしはその光景を見て脚が竦み、動けなくなった。

 奇跡的(、、、)にわたしは生き延びたが、けれども、わたしを庇った先生はわたしの目の前で死んだ。銃口を突きつけられ、己の死を実感した時は、一瞬だが走馬灯を見たような気がした。

 生き延びたわたしを含めた十数人に起こった次の悲劇は、乗っていたフェリーの沈没だった。大海原に投げ出されたわたしが生き残ったのも奇跡(、、)としか言いようがなかった。後から聞いた話だが、わたしはどこかの島の海岸にたどり着いたみたいだった。

 わたしを含め、最終的に生き延びたのはわずか数人にも満たなかった。その中で、わたしの友人の名は一つもなかった。みんな死んだのだ。

 わたしを庇った先生の心臓を貫き、わたしの右腕を掠った弾丸の傷跡は未だに残っている。そして、わたしの心には『銃を向けられる』と起こるトラウマができた。銃口を向けられると、吐き気が込み上げ、その場で動けなくなってしまう。だから、ゲームはFPSなどの銃撃系は論外だった。


 わたしは両親の勧めで教養のために海を渡った。わたしがたどり着いたのは『日本』という国だった。初めは日本語に不慣れだったが、元々、物覚えが良いわたしはすぐに日本語をマスターした。祖父のもとで暮らす生活は悪くはなかった。けれども、学校に復学したわたしは、何処か高貴な存在として扱われた。告白されたこともあったし、やさしくされたこともあった。けれども、それらは全てわたしの心に開いた大穴を塞ぐことができなかった。



 そんなわたしに転機が訪れた。今思えば運命的な出会いだったのかもしれない。

 なんの夢もなく大学に進んだわたしだったが、大学のキャンパスでわたしは出会ったのだ。

 帰ろうとするわたしの前に突然、男女二人が立ちふさがったのだ。

 男性はぼさぼさとした黒髪に、引き締まった顎のラインは、今まであったどんな人物よりも輝いて見えた。体格も筋肉質で申し分ない。

 女性は腰まであるきめ細やかな黒髪に凛々しい顔立ちをし、顔を引きしめる二つの黒い瞳はまるで大和撫子を連想させた。


 「君、ゲームには興味ない?」


 男性の方がわたしに聞いてきたが、わたしは眼中にいれることすらせず、その場を離れようとする。わたしに言い寄ってくる奴にろくな奴はいない。

 けれども、男性は即座にわたしの前に再び立つ。


 「逃げないで、答えだけは言ってくれよー」


 「あんたが変人だからじゃない? この子、困ってるじゃん」


 「いやー。オレはこの子を見た途端、何かビビッときたんだよ!」


 わたしを容姿だけで選んでいない? そんな考えがふとよぎったが、わたしはすぐさま、そんなはずはない。と、否定した。


 「じゃあ、連れてく?」


 「うん。まずは見てもらった方が良いね!」


 二人はわたしの答えを聞かずにわたしのことを連行し始めた。わたしは何かに導かれるように二人の後をついていった。

 二人に連れてこられたのは小さな部屋だった。その理由はとても単純。部屋の大半がゲームソフト、またはゲーム機で埋め尽くされているのだ。

 わたしはその光景に魅せられた。

 景色的なものではない。わたしを魅せたの空気だ。この部屋には幸せが満ち溢れていた。

 笑い、涙、怒り、喜び


 すべてが立った二人の場所にもかかわらず、満ち溢れていたのだ。全て、わたしが数年前に無くした感情だった。


 「どうだい? ここはオレらゲー研の部屋なんだぜ?」


 胸が締め付けられたような痛みがわたしに走った。


 「最近、創ったのに何言ってるのよ……。おぉ、ほっぺたが赤ちゃんみたいだ……」


 女性がわたしの頬を指でつついた。そして、それだけではとどまらず、わたしに覆い被さるように抱きついてきた。

 けれども、そんなことはこの時のわたしは気にしていなかった。わたしの瞳からは涙があふれだし、止まらなかった。


 「おいおい! どうしたんだ?」


 男性がわたしのことを心配し、声をかけてくる。だが、わたしは以前として放心していた。


 「あんたが怖いんじゃない?」


 「何言ってるんだよ。彩がその子に抱きついてるからだろ?」


 「いいじゃない! 唯が最近私に冷たいんだもん!」


 「君は、実の妹に同じようなことしてるのか?」


 二人の会話はまるで家族のようにも感じられる。けれども、わたしの中ではそれ以上の何かを感じ取っていた。

 そう思った瞬間、わたしの唇はゆっくりと動いていた。何時ぶりだろうか、きちんと口を開いたのは……


 「わたしも……この中に入っていいんですか……」


 わたしの言葉に二人は驚いたが、すぐに満面の笑みを浮かべ、わたしの目の前に立った。そして、二人はわたしに片手を差し伸べてくる。


 「もちろん! ようこそ。我らゲーム研究会へ……」


 その後、一年ほどたち、新しい仲間が二人ほど加わった。




 ◆◇◆◇◆◇◆


 

ポセイドンを倒し終えた俺らは歓喜の中にいた。クエストを達成したのにもかかわらず、未だにアリアは消えていない。どうやら、アリアは本当に消えないらしい。俺にとって喜ばしいことなのやら……

 錆びたシリウスは完全に外れているため、アリアが俺の元の権限下から離れたことは確かなのだが、アリアは消えない。どうやら、アリアは個人として俺について来ているらしい。他の二人も同じだった。


刹那――――――



 複数の殺気を感じ、俺たちは一瞬で静まり返った。

 今、俺の視界に映っているのは、《蒼い鳥》にギルドメンバー―――すなわち、アヤ、アサミ、タツヤの三人だった。三人はゆっくりとこちらの方に歩み寄ってきた。


 「おぉ! 久しぶりだな! こんなところで会うなんて奇遇だな!」


 俺は陽気にその三人に話しかける。すると、アサミとタツヤが俺以外の人のところへ歩いて行った。アヤのみがこちらに歩み寄ってくる。


 瞬間―――――


 アヤの腰の刀が即座に抜刀され、俺が気付いたときには、その銀色の刀身が俺の首元まで迫っていた。

 俺はとっさに後ろに飛んで難を逃れた。あと少し遅ければ、クリティカルを確実にくらっていた。


 「あぶねぇな! いきなり何すんだ!」


 「危ない? リリアを殺しておいて何を言う……」


 その瞬間に俺を含めた全員に戦慄が走った。だってそれは、動揺を誘う効果がかなりのものだったからだ。

 大文字が戦意を無くし、大剣を地面に転がす。まともに立っているのは、リリアを知らない、ゴウ、ヤス、エン、それと夜桜のみだった。そんな事実に俺は信じられず、当たり前のことをする。


 「騙されるな! そんなのウソに決まっている!」


 俺の言葉を聞き、残された三人は必死の抵抗を始める。しかし、それはタツヤ一人に圧倒され、まるで意味をなしていない。アサミはタツヤの後ろでハーモニカを奏でている。おそらく、あれでタツヤを補助しているのだろう。

 アヤは怒りをどうにか抑えながら、俺と対面していた。今にも、再度、攻撃を仕掛けてきそうだ。


 「ほぅ……では、この状況をどう説明する!」


 「そんなの、あんたが俺を殺すための口実を作ってるだけだろ? ふざけんな! そんなことで俺を巻き込んでんじゃねぇ!」


 アヤがうつむき、静かに語り始める。先ほどまでより殺気が増しているように感じられる。さっきは見えない刃として俺の頬にピリピリとした感覚を与える。


 「キサマは私達がそんな理由で動くとでも思っているのか……」


 「当たり前だろ? どうせ、お前らは俺のアリアの力を嫉んでいるんだろ? 本当はリリアのことなんかどうも思ってないくせに!」


 その瞬間、アヤが激昂し、獣のように荒々しくなる。どうやら、完全にスイッチが入ってしまったらしい。

 

 「リョウ! キサマぁぁぁぁぁぁぁぁああああああ!」


 アヤが咆哮し、リョウに突進する。フィールドのため、ここではPKも容易に可能だ。

 アヤの刀が銀色に輝いた。


 俺は一瞬のうちに肉薄したアヤの速度にビビりながらとっさに《多刀流》で出した《クレーパー》で防ぐ。

 アヤの銀刀と俺の《クレーパー》が交差する。


 刹那―――――


 アヤの刀が淡いライトエフェクトを放つ。


 「切り裂けぇぇ!」


 アヤはそのまま刀を振りぬく。バギリッ、という嫌な音が聞こえ、《クレーパー》が粉々に砕け散り、ポリゴンの欠片とかす。

 アヤは腰を低くした体勢から立ち上がり、軽く刀を振った。


 「キサマのその剣は所詮、初級モンスターから作った雑魚剣だ。わたしの魂がつぎ込まれた刀の前では何の意味も持たない」


 うそだろ……仮にもボスドロップの武器を加工して作ったものだぞ……いや、たしかにボスドロップだったかもしれない。だが、俺は大切なことを忘れていた。そう、これは現実世界ではない……と、いうことだ。つまり、武器を加工するためには一度、分解を経なければならない。つまり、その武器からのインゴットは入手できるものの、実際にできる剣は元の武器の十分の一いや、何百分の一にまで低下するのだ。

 だから、結果として初級武器となる。俺はユニーク武器を単なるハンドメイド武器へと変えてしまうというタブーを犯したのだ。


 「何が魂だよ……あんたはリリアを失って暴走してるだけだろ!」


 「だまれぇぇぇぇぇぇえええええええええええええええええ!!!!」


 再び、アヤが咆哮し俺の元に突っ込んでくる。今度はきちんととらえることができた。俺は落ち着いて残りの《桃源針(とうげんばり)》、《パープル・ガロウ》で迎撃する。


 しかし――――


 振り下ろした二つの剣の間を縫うようにアヤは突っ込んでくる。

 ガキンッ! ガキンッ!

 甲高い金属音が鳴り響き、幾度となく俺とアヤの武器がぶつかり合う。けれども、俺の二つの剣の耐久値はすぐになくなり、二つともポリゴンの欠片とかした。

 これだけでアヤは止まらない。


 俺は自身の手で持っているシルバーソードを構える。


 刹那―――――


 俺のシルバーソードはアヤの刀に吹き飛ばされ、空中を舞う。

 その途端、アヤの黒い瞳が怪しく光ったような気がした。


 鈍い痛みが俺の胸辺りを襲い、それとともに俺のHPバーが半分減少する。俺はこの瞬間に万事休すと思い、静かに目をつぶった。


 ガキンッ!


 鈍い痛みが再び走ると思いきや、再び甲高い音がなった。他の誰かだろうか。いや、それはアヤの仲間が足止めしているはずだ。じゃあ、いったい誰が……


 俺は恐る恐る目を開ける。

 そこには茶色いフードを被った誰かがいた。


 「ダメ……この人は何も悪くない……」


 どこかで聞いたことのある声……

 でも、いったいどこで……

 そうだ。今のうちにアリアを呼び出して!


 「アリア!」


 俺は心の限り叫んだ。すると、俺のすぐそばに幼女の姿をしたアリアが俺のすぐ横を通り抜ける。そして、持っていた大剣を振り下ろそうとした。その攻撃対象は、アヤ……ではなく、茶色いフードの人物だった。


 茶色いフードを被った人物は一瞬のうちに腰の短剣を抜き、アリアの大剣を防いで見せる。衝撃波が発生し、俺の体とアヤの体は2~3mほど吹き飛ばされた。それとともに、アリアの攻撃を受けた人物の茶色いフードの風によってとれる。


 その人物の姿を見て、誰もが目を疑った。 その人物は容姿がまだ幼さが残る顔立ちに薄紅色の目、身長は俺よりも低い。髪型はウェーブのかかったショートカットである少女。

つまり、死んだはずのリリアだったのだ。


 「あくまで攻撃対象はわたし……か……」


 リリアはふてぶてしそうにつぶやいた。そして、アリアの大剣を弾いてから、バックステップをして、一旦距離をとる。


 「リリア……なんで……」


 アヤが驚愕の表情を浮かべ、リリアのことを見た。

 俺も当然のごとく、驚愕の表情を浮かべる。当たり前だ。目の前の人物の墓はすでにあり、死んだはずなのだ。なのになぜ……


 「アヤちゃん……説明は後でいい? 今はこの少女を何とかして……」


 「えっ!?」


 自身の敵に背を向けるリリアの姿にアヤは驚き、放心していた。


 刹那―――――


 アリアがそこに問答無用で大剣を振りまわした。リリアはまるでその攻撃がわかっていたかのように振り向き、体を屈め、アリアの横振りを避けると、アリアの顎にアッパーを決める。

アリアの体が仰け反り、地を這った。


 「アヤちゃん!」


 リリアの叫び声でアヤはようやく我に返り、リリアの背中を護るように立ちふさがる。

 リリアはアヤにアリアを任せ、向こう側で戦っている夜桜の方に近づいて行った。


 「こんにちは、夜桜さん。いろいろとヒントをありがとうございます」


 「あら? 生きてたの? これは残念……」


 「まぁ、死んでいることにした方がいろいろと動きやすかったですしね。でも、あなたがあの時、いろいろ話してくれたおかげで、推測が確証になりましたよ……」


 「世迷言? それとも戯言? どっちなのかしら?」


 「さぁ? それはあなたが決めることでしょ? 夜桜さん……いいえ、カーディナル!! あなたが全て仕組んだことでしょう?」


 一瞬のうちに静寂が襲う。あたりの音が消え、世界の全てが制止したようにだれも動かなくなる。皆、リリアの言ったことに放心しているのだ。

 そんな中、夜桜は下卑た笑いを始める。


 「ふふふふふふふ……はははははははははははははははははははは!!! おもしろい推測ね? でも、私がカーディナルということは正解…… いつから気付いたの?」


 「あなたがわたしにいろいろとしゃべってくれたおかげですよ…… 決闘のルールについて見れるとか見れないとか言ってましたよね。決闘のルールが見えることは両者の同意、もしくは仲介人がいなきゃダメでしょ?」


 「あら? でも、私なら可能なのじゃない?」


 「それ以前に、体力が全損した時点で何であれ、死ぬんですよ。だから、全損して生きるなんてことはありえない……」


 「ふふふ……でも、それも私なら変えられるんじゃない?」


 「なんでも変えられるという設定で行きますか……」


 「当然じゃない。疑われたままで終われないでしょ?」


 余裕そうな夜桜を見て、リリアは少しだけ笑ったような気がした。


 「そうですね。でも、あなたには重大な矛盾が存在するんですよ。あなた……ずっと寝ていたはずなのになんでそのことを知っているの? それになんでたったの一日で元気になっているの?」


 「あら? そんなのリョウから聞けばいいことじゃない。それに、一日で元気になる可能性だってあったでしょ?」


 リリアは首を横に大きく振った。


 「うぅん……それはおかしいんですよ。最初から全てを見ていたリョウに聞けば多分こう答えたんじゃないですか? 『アリアから最初に攻撃した』って……それに、こっち方は生きるのに必死だったことも伝わっているはずですよね? それがどうして、『殺そうとした』の一つだけに変わってるんですか? これは明らかに被害を受けた誰かの目線ですよね?」


 「あなたはなにが言いたいの?」


 「あなた……あの時、リリアを操っていた正体なんじゃないですか?」


 「そんなのただの推測じゃない。呆れるわ、まったくもう……」


 夜桜は深いため息を吐いた。そんな夜桜を見て、リリアは再び笑った。


 「あなたは言いましたよね。『どれもこれも推測の域を脱しえない情報ね』って……じゃあ、あなたに問います。警察はいったいなにを使って犯人を特定するんですか?」


 「そんなの決まってるじゃない。物的証拠よ……」


 「いいえ、それは確定するときに使うものです。それじゃあ、あなた、推理はしないんですか? 推理なしでどうやってその証拠を犯人のものと結びつけるんですか?」


 「そんなもの……」

 「あるわけないですよね。だって、あなたは推測のできない単なるプログラムなんですから……。あなたはその事実が起こった、起こらないでしか決められない」


 夜桜の声をかき消すようにリリアが割って入った。


 「でも、それは断定的な情報じゃない……」


 「面白いこと言いますね。でも、実体験なら断定的な情報になるんじゃないですか?」

 

 「あなたが実体験? そんなのどこで受けたのかしら? そんなのないじゃない」


 「あなたは本当に見ていることしか信じられないんですね。なら、教えてあげますよ」


 リリアは深く深呼吸した。


 「じゃあなんで、あなたはわたしとリョウが対戦した後すぐに目覚めて、わたしに連絡できたのでしょうね。それに、あなたの言動はまるで、あの指輪たちを擁護している。『倒れた理由とクエストを結びつけるのは無理がある?』じゃあ、他の二人との共通点は何ですか? リョウが吐き気を覚えていた理由はなんですか?」


 「そんなのこのゲームに入っているからじゃないの? そんなことも考えられないのかしら?」


 「言葉を変えましょう。どうやってゲーム内の人を気絶させるんですか?」


 「そんなの簡単じゃない。ヘッドギアを通じて、無理やり血流を悪くして血管を収縮……」


 「面白いことを言いますね? カーディナルさん」


 その瞬間に夜桜の表情が険しくなった。


 「貴様! 図ったな!」


 「図ってなんてませんよ。あなたからの情報を頂いただけです」


 夜桜が杖を握る手を強めたのを見て、リリアも短剣を握る手を強めた。


 「いいですか? これらすべての推測でしかない情報は、ある一点へと結びつくんですよ。つじつまが綺麗に合う。それを『推測でしかない』と切り捨てるのは少し乱雑すぎませんか? あなたの行った小細工は面白かったですよ。実に笑えました」


 おそらく、リリアは俺の前に見た情報と、後に見た情報に相違があることを言っているのだろう。でも、それは夜桜の中にいるものがシステム権限で操作できるのだとすれば、ありえることなのだ。


 「そういうあなたはどんなことをしたのかしら―――――っ!!」


 夜桜は苦し紛れか、リリアに火球を放つ。

 リリアはそれを軽々とステップして回避する。その途端、リリアの表情が笑った。


 「まったく……弱い真似するのも疲れましたよ……こんな小細工がわたしに見破れないと?」


 刹那―――――


 リリアは一直線に夜桜の元に走って行き、一瞬のうちに腕を固めて、後ろをとる。

 夜桜のコントロールでリリアに迫っていた火球が夜桜の元に突っ込んでくる形へと変わる。


 「く――――――っ!!」


 夜桜はやむなく火球を地面に叩きつけて自分に当たるのを阻止する。リリアはそれを見て、何がしたいのか攻撃せずにもう一度距離をとった。


 「なめるな! 《バベルガ・フレイガン》!!」


 リリアの周りに青白く光る幾何学模様が浮かび上がり、一瞬のうちにしてリリアを包み込んだ。

 けれども、リリアはまったく焦ることなく、むしろ億劫そうにため息を吐いた。


 「さよなら……」


 「《シャドウ・スライム》……」


 火柱が起きる直前、小さくリリアの声が聞こえたような気がした。

 火柱がHPバーをすり減らしていき、すぐに0となりポリゴンの欠片とかした。火柱が収まるとそこにはリリアのと思われる装備とアイテムが落ちていた。

 その瞬間―――――俺はリリアが死んだと錯覚した。



 刹那――――――――


 夜桜が急に硬直した。夜桜の後ろを見ても誰もいない……

 すると、夜桜のすぐ後ろから声が聞こえていきた。


 「まったく……だから、避けられないとは言ってないでしょ……」


 その直後に、フードをとったリリアが夜桜の後ろに現れる。リリアは夜桜の首筋に短剣を当てていた。


 「あなたはわたしが予備武器や麻痺結晶を持ってないとでも思ったの? あなたがわたしを呼び出した時点で嫌な予感はしましたからいろいろ用意させてもらいました。」


 「なんで……あなたはポリゴンの欠片となったはず……」


 「あぁ? あれ? あれはわたしの召喚モンスターだよ。それともその体力をわたしの体力と勘違いしたのかな? それにわたしは別にMPを回復できないわけじゃないよ?」


 つまり、リリアは持っていた麻痺結晶を即座に使い、自身の持っていた持ち物を全て排出し、そしてあのスキルを発動し、召喚モンスターに身代わりをさせた。これが減っていったHPバーとポリゴンの欠片の正体だ。そして、その後、事前に用意した盗賊の衣を装備し、火柱が終るまでの間にその場に隠れたのだ。ここで、好都合のことが起きた。それは、カーディナルが『確率召喚(フェノメノン・サモン)』の効果を履き違えていたことだ。確率召喚(フェノメノン・サモン)は確かにMPを全て消費するが、別に回復できないわけじゃない。その魔法自体のクールタイムが24時間のだけなのだ。つまり、リリアはあの時、普通に魔法を使うことができたのだ。

 そして、そのトリックを今ここで再現した。

 リリアは呼び出された時点でわざわざハイド効果のある盗賊の衣を用意していたのだ。だから、たとえ脱出系の魔法やアイテムが使えなくても生き延びたのだ。なぜなら、リリアは脱出していないのだから……


 「なんで、あなたはあの時、私に抵抗しなかった……」


 「決まってるじゃない。夜桜さんが死ぬかもしれなかったから……あなたの言動が夜桜さんのいつもの言動と違う時点で推測は確定にいたりましたよ」


 リリアは夜桜の命を護るために、一度わざと死んだのだ。そのために演技し、嘘をつき、味方すらも欺いた。

 それに、夜桜の言動がおかしかったことを一瞬で見抜いていたのだ。前にリリアは夜桜が指輪を擁護していたと言った。だが、俺の知っている夜桜ならばそんなことはしない。むしろ、進んで指輪を壊しそうなタイプだ。だから、擁護することなどありえないのだ。


 「でも、カーディナルならすぐにわたしが生きてることがバレると思ってたけど、あんたがその前にバカをやらかしたおかげで助かった……」


 「私がやらかすだと……」


 「あら? それはあなたが一番よくわかっているんじゃない? 《多脳管理システム》……これはこのゲームに使われているカーディナルのシステムでしょ?」


 《多脳管理システム》。俺も聞いたことがある。たしか、カーディナルが複数存在することによって、一つのカーディナルの暴走を防ぐ機能を持つものだ。つまり、目の前のカーディナルの一角はアリアの仕様変更によって他のカーディナルから追われることとなり、やむなく夜桜の中に入った。そして、唯一、単独でボスを倒す恐れのあるリリアを抹殺しようとしたのだ。だから、システム権限がまったく使えなかったため、夜桜の魔法をそのまま使うしかなかった。それに、リリアの追跡も不可能だったのだ。その上、カーディナルが魔法の効果を履き違えたのも、コアへとアクセスができなかったから……すべてはアリアの復活を最優先したが故の失態だ。


 「あなたはこの状況を脱出できない……。あなたは、ミズキさんとトモキさんを最後に一度だけ操ることで、他のカーディナルからの最重要監視下に置かれているはずです。つまり、あなたはこの状況を夜桜さんの体で何とかしなければならない……。このまま夜桜さんと一緒に死になさい……」


 リリアの頭上をコウモリに似たモンスターが飛んでいる。おそらく、あれで俺らのことをずっと見ていたのだろう。


 「くっ……させるかぁぁぁあああああああ!!!」


 刹那――――――


 今まで戦意を無くしたミズキとトモキの元で主人に従うように待機していた安部ルシフェルと黒子美晴が同時に動き出す。それとともに俺の指輪の中にいたはずのアリアが勝手に現れ、アリアも他のものと同じようにリリアに向かっていった。

 そして、各々の武器を持ち、一斉にリリアに襲い掛かる。


 「終わりなのはお前だ……」


 にやつき、自分の勝利を確信した夜桜に対し、リリアはまったく動じていなかった。むしろ、この時を待っていたかのように静かに笑っていた。


 「いいや……終わりなのはあなたの方……」


 リリアはすぐさま夜桜から離れ、それぞれの指輪の精霊に向けてある物を投げた。そのものを俺は見たことがあった。

 そう、転移結晶だ。帰還結晶よりも高価で何個も所持できるものではない。でも、リリアはそれを3個持っていたのだ。転移結晶は対象の者を行ったことのある場所ならば任意で飛ばせるものだ。

 三体は周り空間ごとどこかに掻き消える。


 「まったく……あとで、三大ギルドの長にお礼を言わなきゃね……」


 「貴様! 奴らをどこへやった!」


 「元の場所に戻しただけよ……あなた自身が言ってたし、あなたならわかるでしょ? あの3人がどのボスなのか……」


 「ふん! そんなものまた呼び寄せれば……」


 おそらく、夜桜はもう一度、カーディナルの力を使って強制的に三人を呼び寄せようとしたのだろう。


 「へ――――――っ!」


 腑抜けた夜桜の声とともに、前に突き出した夜桜の手の前に一つのシステムウィンドウが浮かび上がった。それは、決してコードを書き換えるような画面ではない。そう、システムからの警告だ。


 直後―――――


 けたたましいサイレンが俺たちの耳に響いてきた。それとともに夜桜の周りに浮かぶたくさんの『Warning』の文字……

 そう、カーディナルがシステム権限を使ったことにより他のカーディナルに危険認識されたのだ。


 「貴様ぁ!!」


 「大変だったんだよ。戦闘すればやられるから、全部逃げてボスの間までたどり着いたけど……」


 リリアは必死に咆哮するも動けない夜桜に背を向けた。


 「Досвидания(ダ スヴィダーニァ)……」


 夜桜は咆哮空しく、無力のまま白目をむいた。もう、削除が始まったのだろう。

 数秒後、夜桜は憑りつかれていた何かが抜けるようにその場に倒れこんだ。リリアはそれを受け止めることをしなかった。どうやら、そこまでの同情はしないらしい。

 それ以前、俺はリリアに対し、少しだけ怒りを覚えた。クエストはすでにクリアし、《錆びたシリウス》は外れている。つまり、俺のアリアはもう戻ってこないのだ。それなのに、リリアはそれをまるで他人事のように消しとばした。俺はそれが許せなかった。


 「リリア! お前!」


 リリアは俺を蔑むような目で見てくる。いつもの天真爛漫なリリアとは大違いだった。

 リリアは睨む俺にゆっくりと近づいていく……


 「歯ぁ……食いしばれ!!」


 俺の頬にリリアの拳がめり込み、突如として俺は床に転倒させられた。俺は床に転がされから数秒経って、ようやく自分が殴られたことを理解した。俺は殴られた頬をさすり、リリアを睨み返す。


 「何すんだよ!」


 「なにすんだ!?」


 咆哮する俺にリリアはしゃがんで俺の胸倉をつかみあげる。


 「よくそんなふざけたこと抜かせるな……。最初はいつものことだと見逃してたけど、やっぱりダメ……」


 「お前何言ってるんだよ!」


 「あんなに変わってて気づかない方がおかしいわよ! あんたは夜桜さんをなんだと思ってる! 都合のいい人形か? それとも装備以下の存在か! 失ったらもう戻ってこないんだよ!」


 咆哮して俺をもう一度殴ろうとするリリアの手を誰かが止めた。


 「やめろ……。もういいだろう……」


 アヤはリリアの振り上げた腕を掴んで止めている。リリアはようやく我に返り、掴んでいた俺の胸倉を放した。

 リリアはそのままうつむいて、立ち上がり、アヤのそばによる。


 「けっ! お前こそ俺のアリアを消したくせに何言ってやがる……」


 この言葉を言った途端――――俺の周りに批難の視線が集まった。


 「キサマ……本当に言っているのか……」


 「あぁ、わりぃかよ! 俺は夜桜のことをどうとも思ってないし、むしろ、アリアを消したあんたらを憎んでいるんですけど!」


 急にアヤの視線が険しくなる。あれは人間ではなく……鬼。……そう、鬼という例えが一番正しいだろう……


 「あの少女は消えてなどいない。未だにボスとして健在だ……だが、お前は自分の仲間が倒れているのにどうとも思わないと……」


 「あぁ……あいつなんて俺をこき使ってばっかで正直清々したぜ」


 「その言葉……。わたしが今、リリアを止めた身でなければお前のことを殴ってたぞ……」


 アヤはそう言って、リリアとともに俺に背を向けた。


 「行くぞ……。わたしたちは帰る……」


 その言葉にアサミとタツヤは無言で頷き、すぐさま帰還結晶で消えていった。俺は倒れた夜桜と立ちぼうけている三人の姿を見る。皆、特にHPが削れている様子はなかった。おそらく、《蒼い鳥》の面々が手加減をしていたのだろう。


 「何だよ! クソッ!」


 俺は不貞腐れたまま残りの仲間とともに街に戻った。

 《始まりの街》は普段となんら変わらない日常を過ごしている。胸糞悪いぐらいに……アリアはもう戻らない。奇跡は起こるはずがないのだ。



 ◆◇◆◇◆◇



 数日後……


 あれ以来、誰も俺に連絡をしてこなかった。

 そんな中、俺はある噂を耳にする。それは確かにアリアの生存報告だった。でも、決して味方ではない。そう、ボスモンスターとして……だ。


 聞いた話によると、アリアは《星》の空間で、たった一人、結晶の中で赤ちゃんのように眠っていたのだという……


 おそらく、俺たちがアリアと対峙するのは相当先になるだろう。あれ以来、夜桜と俺は一度も連絡を取っていない。俺は何を間違えたのだろうか。わからない。俺にはわからなかった。それと、話が変わるが、聞いた話によると、もうすぐ《女帝》ダンジョン攻略とボス攻略が始まるらしい。

 俺はその一大イベントに……

はい。まえがきの解説いたしましょう。今回、最初は戦闘だけで終わる予定だったのですが、なにか天からリリアの隠し設定明かしちゃえよ、とかいう声が聞こえてきたのでやったら、文字数がやばいことに……。ということで、ギャグをいれる予定だったのを取りやめ、この話が完成したわけです。一応、VRMMOということで、そんな感じのトリックにしてみました。いろいろと生まれてる矛盾の活用? てきなことをしました。ただ、一つ、どうしようもできなかったのは、二周前の主人公の視点に関しての矛盾です。あれだけはどうしようもなかった……。このトリックを考えた時、『証拠はどう作ろう』と考えました。結果→無理じゃね?これ、ゲームだし……。という境地にいたりました。ということで、事実を積み重ねていく形をとり、どうにか一つにつなげました。まぁ、リリアも復帰したし、まぁいいかな?そう言えば、私が一つだけ伏線を置いたことに気づきましたか?気づかなくてもいずれ書くことになるのかな?

 長くなったあとがきで最後に一つだけ……

 『これはゲームであって現実ではない』

それでは~ノシ


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