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ろぐ☆あうと  作者: 奈良都翼
カーディナル&女教帝
28/64

騒ぐ騒ぐ俺の血が……

こんにちは。霧々雷那です。

特にまえがきで言うこととかアルカナ?

はい、壮大にずっこけましたね。

茶番はこの辺にして本編の方へどうぞ。


 仮想世界の日の光が降り注ぐ中、いやそれ以外にも通りかかる人々の視線がこちらに向いている中……俺は土下座していた。

 いやー。痛い! 視線が痛い! ここで親子連れとか通りかかったら『お母さんあれなにー?』『こら! 見ちゃダメ』とかいう会話が切り拡げられていることだろう。まぁ、仮想世界なのでそんな人がいるのは稀だけど……

 と、いうかなんか少し気持ち悪いな……ちょっと吐き気がする。


 説明しよう。何故俺がこんなことになっているかというと、ときは数時間前に遡る。

 あれは今から二時間前だったか……いや、三時間前だったか……まぁ、いいだろう。彼女には様々な通り名があった。そうだな……あの時は確か……『魔王』。そう呼んでもいいだろう。

 俺がロリコンと言われてからずっと俺は夜桜の機嫌をとっていたわけだ。初めはすぐに何とかなると思ってたが、やっぱり今回もダメだったよ。あいつは怒ると人の話を聞かないからな……そうだな。次はこれを見ている君たちにも読んでもらおう。早ければ二時間ほどで説得できるんじゃないかな……それではよい旅を……


 ――――――と、言うわけで、俺は夜桜をなだめるために今ここで土下座をすること早30分。いい加減足が痛い(気分的に)。そしてなりより周りの視線が痛い(わりとガチで)。

あっ! ヤメテ! そんな目で俺を見ないで……


 「で? 私にリョウは何をしてくれるのかなぁ?」


 完全に上から目線の夜桜に俺は反論できない。ていうか言ったら殺される。死なないけど!


 「えっと……もう、わき目を振りません」


 「他には?」


 怖い! ガチで怖い! おい! お前は般若か! 見てるだけで怖いってどういうことだよ!


 「えっと……一生あなたと共にいます……」


 「え――――――――っ」


 急に夜桜の威圧感が吹き飛び、俺の体に自由が戻ってくる。俺が恐る恐る夜桜を見上げると、夜桜は頬を赤くして、目線を逸らしていた。

 でも、何で?


 「その言葉、わすれないでよね!」


 夜桜は人差し指をビシリッとこちらの方に向け、俺の言った言葉を再確認させる。俺には意味不明だけど……


 「わかったよ……」


 どうやら機嫌取りは成功したようだ。よくわからんけど……


 「約束だか――――――――」


 刹那―――――――


 言葉を全て言い終えないうちに夜桜の体が急に倒れた。俺は空中でそれを何とか受け止めた。

 夜桜の顔を覗き込むと夜桜はまるで死んだように眠っていた。


 「おい! ふざけるのもいい加減にしろよ?」


 しかし夜桜からは何の反応もなかった。それどころか眉一つ動かさない。


 「こんなところで寝るなよ!」


 俺は夜桜の体を激しくゆすったが、結果は同じ……

 俺の頭が困惑の一色で染められた。


 瞬間――――――


 視界の右上が緑色に光った。どうやら誰かからささやきチャットが来たらしい。

 ささやきチャットとは他人に聞かれたくない内容のものを二人だけで会話するものだ。パーティチャットのさらに狭いものである。

 俺は困惑しながらもそのチャットを開いた。

 差出人はリリア……


 『そっちは大丈夫?』

 

 どういうことだ? あちら側で何かあったのか?


 『急に夜桜倒れたんだが、どうすればいい?』


 『今、そっちに向かうから場所を教えて』


 数分後。

 俺は駆けつけたリリアに連れられ、糸の切れた人形のような夜桜を背負ってある場所へと案内された。



 ◆◇◆◇◆◇



 「入って……」


 容姿がまだ幼さが残る顔立ちに薄紅色の目、身長は俺よりも低い。髪型はウェーブのかかったショートカットである少女。すなわちリリアの後を追い、俺の木製のドアをくぐった。

 中は白レンガの涼しげな建物で、中にはさまざまな家具が置いてあった。どうやらここはギルドの基地らしい。

 でも、リリアのギルドってなんなんだ?


 「おじゃまします……」


 俺が完全に入ると、リリアはわざとドアを閉め、完全に俺を包囲する。どうやら、俺を逃がすつもりはないらしい。

 俺が未だに困惑していると、今度は目の前に小さな少女が唐突に現れた。いや、多分そこにいたのだろうけど、気配を消していたのかわからないが、俺が気が付くと、そこにいたのだ。

 少女はショートの黒髪に猩々しょうじょうひ色の丸い目。丸い顔立ちはかわいいネコの姿を想像させた。頭の上は髪の一部が折れ曲がってネコ耳のような形をしていた。

 首元には夏なのに青いマフラーを巻いていた。

 その少女は静かに俺の前に立ち言葉を呟いた。


 「指輪を確認……この人物はクエストを受けたと考えられる」


 俺がまばたきした瞬間。少女の姿はすでに無くなっていた。


 否――――――


 少女はいなくなったのではない。俺の後ろに移動していたのだ。

 少女は俺の背中に力なくもたれかかっている夜桜を見つめた。


 「指輪の存在は確認されず……けれども、患者二名と同症状がみられるためこの人物もクエストを受けたと考えられる」


 「それ。本当? アサミ……」


 「私の言うことだから間違いない……」


 ようやく俺が、アサミという少女が俺の後ろに移動したことに気が付いて後ろを振り向くとそこにはすでにその姿が確認されなかった。

 再び俺が少女の姿を認識したのは家の中の白いソファの上だった。

 アサミは落ち着きながら湯呑でゆっくりとお茶を飲んでいた。


 「わかった……」


 リリアは少し悲しそうに奥の方の扉の前に立った。

 

 「タッちゃん!! お客さん来たから!」


 「ちょっと待って今行くから!」


 部屋の奥の方から声が聞こえ、階段を駆け下りてくる音が聞こえてくる。俺は即座にイケメンフラグを考えたが、その予想は大きく外れることとなる。


 出てきたのはひ弱そうな男性だった。

 装備も軽装で体も細い。身長もそこまで高くなく、肉付きもよくない。顔もかなり幼く見えるほど丸い。茶髪で、目も茶色に限りなく近いこげ茶だった。


 「お客さんでしょ? ほら、せんべいもって来たよ」


 アサミが耳みたいな髪の毛をピクリッと震わせた。


 「いや、そうじゃなくてね。上まであの人を運んでほしいんだ」


 リリアは苦笑いしながら、夜桜のことを見た。目で合図したらしい。

 次の瞬間―――――少年の手からはせんべいが消え、まるでワープでもしたかのように籠に入ったせんべいは籠ごとアサミの膝の上にのっていた。

 アサミはその1枚をおいしそうにほおばり始める。


 「あっはっはっ! そういうことね……」


 「うん」


 「――――――って! 嫌だよ! 大体今日何人目だよ! 3人目だっけか? 見ての通り僕は筋力無いんだけど! ねぇ! 僕は重いものもてな――――――」


 タツヤの言葉が中途半端に途切れる。理由は簡単。首元にランプに反射してより鋭く見える一振りの刀が飛び出てきたからだ。


 「女性のことを重いなどと言わない方がいいぞ……」


 暗闇から顔を覗かせたのは美しい女性だった。

 和服に腰まである長い黒髪……そして凛々しい顔立ちに顔を引き締める2つの黒い瞳……

 その女性の威圧は直接受けていない俺でさえも肌にピリピリとした感覚を味わうほどに強い。


 「はい……すみません。只今、お運びいたします……」


 タツヤは汗をだらだら流しながら手を挙げ、怯えた口調で固まった。

 けれども、すぐにこちらに駆け寄り、本当に重そうに夜桜を背負って奥の方へと消えてった。


 「もう! アヤちゃん! お客様の前なんだよ!」


 「これは失礼……」


 リリアに怒られ、和服の女性は刀を腰の鞘へと戻した。

 チンッという刀をしまうとき特有の甲高い音が聞こえ、女性はようやく手に持つ刀から手を放した。


 「ようこそ。我がギルド《蒼い鳥》へ。わたしは副ギルド長のアヤだ」


 「無所属のリョウです……」


 俺は謙遜して声が少し小さくなった。けれども、アヤはまったく気にせずこちらを見て微笑んだ。


 「君が聞きたいことは『何故、突然彼女が倒れた』……と、言うことだろう?」


 「えぇ……もしかしてわかるんですか? クエストとか何かですか?」


 「ン? まぁ、そこらへんは難しいのでわたしの管轄外だ。詳しくはアサミにでも聞くと言い。アサミ。説明してもらえるか?」


 俺はアサミのいる方。すなわちソファの方を見たが、そこにはすでにアサミの姿はなかった。気が付くと、アサミはすでに俺の前に立っていた。


 「人体に及ぼす負荷の限界とその因果……コード21A330897654231Fは負荷量を設定し忘れている。イベント発生条件は困難。且つ低確率だが、それはイベントとして破綻している。すぐに修正コード23B757945854632Fに書き換える。もしくはイベント自体を消すべきである」


 「すまん……わかりやすく……」


 「人体がその機能を停止する条件は一つのみ。血管の収縮によって成せるが、それを外部から起こした場合の負荷の計算。ゲームを現実と履き違えることによって起こる事件。現実のことを起こそうとしたのが全ての原因。決して、私利私欲がまずいのではない」


 なにいってんだ、コイツ? 言っていることが意味不明だぞ? というか、顔色を全く変えず、口調も変えずによく坦々としゃべれるな。重要な部分のアクセントが一切ない。


 「ごめんね。わたしから詳しく説明するね」


 リリアは苦笑いしてアサミと俺の間に割って入った。いや、正確にはリリアが割って入る直前には、すでにアサミは元の白いソファに腰かけていた。


 「えっとね……簡単に言えば、わたしたちが着けているヘッドギアについてなの。まず、こういうフルダイブのVRMMOで寝落ち、もしくは気分が悪くて気を失った時どうなる?」


 「そりゃあ……強制ログアウトだな」


 「うん。でも、このゲームはログアウトできないの。でも、聞いた話によると、あるクエストでは気絶をプログラムによって起こしているみたい。まず、人間が気絶するには脳を揺さぶる。もしくは血管が収縮することが必要なの。だけど、前者は不可能。だとすると、考えられるのは後者でしょ。後者を実行する身体の個所として、鳩尾、顎、そして延髄が最も効果的。この中で、鳩尾と顎はヘッドギアにはない場所。だから、考えられるのは延髄」


 「その延髄がどうしたんだよ?」


 「さっき言った通り、気絶するためには血管を収縮させる必要がある。それで、延髄には運動神経が通っていて、多分、それごと一気に圧縮させたんじゃないかな?」


 「はぁ!? どうやって……」


 「電気信号を逆流させ、延髄付近の筋肉を締めた―――――でも、これは延髄ごと巻き込むわけだから負荷が大きすぎる。普通だったら、強制ログアウトして2、3日嘔吐で苦しむとかそれぐらいで済むと思うんだけど、ログアウトできないからそれができないの。むしろ、夜桜さんがここまでもっていたのが不思議なぐらい……あっ! ごめんね。わたしたち、同じところでゲー研やってて、それで詳しんだ」


 ゲー研……これはゲーム研究会の略である。名前の通り、ゲームを作ったり吟味したりするサークルであることは間違いない。


 「でも、リョウが気絶してないのがわたしには不思議に感じるんだよね……」


 リリアは俺の体をまじまじと見てきた。その途端、後ろに立っていたアヤの頬が一瞬引きつったように見えた。


 「実は俺も少し気持ち悪くてな……」


 「そうなの!? ごめんね。立ち話なんかして……今夜は泊ってく?」


 再び、アヤの頬が引きつり、眉がピクピクと動く。


 「いや、いいよ。夜桜のことよろしく頼む……」


 「夜桜さんは多分、1週間もすれば全快すると思う。多分、残りの二人も……」


 「そうか……いろいろありがとな!」


 「うん。あと、そのクエストクリアするにはイシス海底洞窟の謎を解かなきゃいけないと思うよ?」


 リリアは俺の指輪を指さして言った。忘れていたが、俺はまだクエストをクリアしていなかった。イシス海底洞窟の謎? なんだそれ……


 「よかったら説明するけど? 明日にでも一緒に行く?」


 再び、アヤの眉が痙攣のごとく、動く……


 「助かるよ。じゃあ、明日の朝7時に《始まりの街》噴水前でいいか?」


 「うん。じゃあ、おやすみ」


 そう言ってリリアは先に奥の方に消えてった。俺はそれを見送ってから、このギルドの家を出ようとする。


 刹那――――――



 俺は殺気を感じ、一歩退いた。それが幸を制したのか、幸運なことが起きる。俺の首筋には半身の刀……そして俺の顔の横にはアヤの顔があった。

 俺は思わず眉唾を飲んでしまう。

 アヤは俺にしか聞こえないぐらいの小さな声で耳打ちした。


 「これは忠告ではなく警告だ。少年……もし、リリアに手を出すようなことがあれば……」


 「あれば……」


 背中に嫌なものを感じ、唾も思うように飲み込めない。

 アヤの殺気は夜桜とは比べ物にならないぐらいにヤバイ……あれは普通に人を殺せる目だ。アヤはいったい何をこの世界で生き残るための糧にしているんだ……


 「殺す……殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して、存在も戸籍記録もこの世からなかったことにしてあげるわ……覚えておきなさい……」


 そう言って、アヤは俺から離れた。その瞬間、俺はこの世のものとは思えない恐怖の片鱗を味わったことを知った。

 このギルド……やばいやつしかいない……

 訂正。一人以外やばいやつしかいない……


 俺はその場から逃げるようにドアを開け、外へと走り出した。そして、すぐさま路地裏に入り、ログアウトボタンを選択、タッチする。

 俺はとにかくあいつから離れたかった。それほど、奴の殺気はヤバかったとしか言いようがない。それ以外の言葉が浮かばなかった。



 ◆◇◆◇◆◇



 見慣れた天井が現れ、俺はようやく現実世界に帰ってきたことを認識する。

 頭のエッドギアを外し、周りを見渡す。この間ログインした時からあまり変わっていない。

 頭はふらつき、吐き気がする。


 俺は流動食を食べ、目覚ましをセットして眠りについた。



 数時間後―――――


 タイマー通りにきちんと起きることはできたが、まだ少しだけ具合が悪い。寝る前と比べてマシにはなっている。けれども未だに朝食を作るほどの元気はない。

 とりあえずウイナーインとカナシーメイトをほおばる。食欲は無いが、餓死してはどうしようもない。


 すべての作業を終わらせ、俺は再びヘッドギアを装着した。



 ◆◇◆◇



 視界がフェードインし、路地裏の暗い風景が目に入る。

 俺は体の自由を確認し、すぐさま路地裏を出た。体的には普通に動けるレベルまで回復している。

 周りは朝っぱらのせいか人影は少ない。そんな中だが、広場のベンチに座っている男性がいた。

 男性は青い繋ぎを着ていて、がたいもかなり良い。

 男性は胸元のジッパーを降ろして、自分の胸元を見せつけてからこちらの方を見つめてきた。


 「やらないか?」


 「ウホッ! いい男―――――ハッ!! なんだ、俺に一瞬何が起きたんだ……」


 俺は気が付くと反射的にそう返していた。まるで、誰かに意識を乗っ取られたかのような感覚だ。

 とりあえず、目の前の男子を無視して集合場所へとわき目もふらず、走る。

 

 「そうだよ……俺は……変態なんかじゃ………ない……」


 自分に自己暗示をして先ほどのことを忘れようとするが、脳裏に焼き付いて離れない。それどころか夢にまで出てきそうだ。トモキはこんな思いを味わったのか……いや、彼は向こう側へと進んでしまった。俺にはどうやらできそうにない。


 そうこうしているうちに集合場所へと到着した。集合場所の東門前にはすでにリリアが立っていた。リリアの格好は軽装で腰にはナイフが一本だけ提げてあった。


 「おはよう! 早く行こうぜ!」


 俺は先ほどのことを忘れたいあまり、リリアを急かす。リリアは首を傾げていたが特に言及はしなかった。


 「大丈夫だよ。洞窟は逃げたりしないから……それに海底洞窟の謎もまだ解けていないんだし……」


 「そういや、その海底洞窟の謎ってなんなんだ?」


 前から気になっていたことだ。ここで言及するべきだろう。この先知っておいても後悔はないと思う。


 「えっとね……イシス海底洞窟は地下3階まであるんだけど、その何処にもクエストが無いんだ」


 「クエスト? クエストってあれか?」


 「うん。『セイレーンと深海の王と人魚姫』のことだよ」


 『セイレーンと深海の王と人魚姫』ってことは俺が受けたその次の段階のクエストではない。これが『セイレーンと深海の王と3人の人魚姫~大救出作戦編~』となったのだから、単純に倒すべきボスの数が3人に増えたのだろう。

 その証拠にクエスト詳細には『ファルネウス』『アザゼル』『アバドン』の3つの名前とそのすぐ右に『0/1』という数字がある。これは討伐数だろう。そしてクエスト場所は不思議なことに一番上の『ファルネウス』しか表示されていない。おそらく、ボスを倒すごとに順次開放するのだろう。

 そして気になる『ファルネウス』の場所なのだが、俺が予想した通りの『海底洞窟B5』と表示されている。つまり、これらから考えられることは、海底洞窟にまだ続きがあるということだ。


 「クエストで表示された場所が海底洞窟の地下5階だから、明らかに矛盾するんだよね。一応、様々な人が地下3階をくまなくチェックしたんだけど、隠し扉どころか宝箱一つもなかったの。他に入り口でもあるのかな……」


 他の入り口ねぇ……そんなものあるわけ―――――

 いや、まて。あるんじゃね。もう一つの入り口……あの海の中にある無駄にモンスターが強いところとか特に怪しすぎるだろ……


 「俺、行き方わかるかもしれない……」


 「ホント! なら、今すぐ行こう!」


 リリアが俺の腕を引っ張って門を出ようとすると誰かが急に立ちふさがった。


 「ここから先は行かせることができません……」


 かわいらしい容姿にかわいらしい声……そう、俺の前に立ちふさがったのは『錆びたシリウス』ことアリアだ。


 「どうしたんだよ?」


 「あなたたは初めてこの謎を解き明かしました。ですが、計画までまだ早すぎるのです」


 いつもと違うアリアの言動に俺は少し嫌なものを感じた。まるで、そう……ロリコンの血が何か違うと訴えるように……


 「えっ――――――」


 隣でリリアのふの抜けた声が聞こえた。俺も一瞬困惑しそうになる。

 なんせ目の前には決闘開始のラウンドコールが出ているのだから……

 決闘ルールはもちろん体力全損モード。つまり、どちらかの体力がなくなるまで続けられる。そして、その対戦相手は……リリアだった。

 もちろん俺もリリアも決闘の画面など一切触れていない。


 「あなたは持ち主であるため、今はまだ殺すことができません。今は一人でも多くの生存者を出さないことを最優先事項とします」


 リリアは即座にバックステップしてアリアから距離をとる。そして、腰の短剣を引き抜き、アリアに構える。


 「抵抗は無駄です。わたしはこの世界で最高の耐久値と耐久度を与えられています。破壊は不可能と判断してください」


 俺は即座に武器画面を開いて『錆びたシリウス』を確認した。錆びたシリウスの耐久度は……


 「うそ……だろ……」


 俺は思わずふの抜けた声を出してしまう。なんせ、目の前のウィンドウに表示された数字がバグっていたのだから……

 『耐久値999/999』『耐久度999』

要はカンストしているのだ。堅い上に体力もある。どうやったらアリアを止められるんだ……


 「わたしはまだ死ぬわけにはいかなんだ!」


 リリアは短剣を強く握り、目の前の敵をしっかりと見据えた。


 「無駄だ……」


 途端――――アリアの姿は幼いものから大人の女性へと変化する。この間のボス戦で見た姿だ。味方なら心強い。だがしかし―――――


 リリアは手段を選んでいられなかった。今持っているスキルで彼女に対抗しうる可能性を持つのは一つだけ……でも、これは運要素が強すぎる。彼女に勝てるのを引き当てる確率はおそらく1%にも満たない。

 でも、目の前の少女は賭けた。生き残るために―――――


 「確率召喚(フェノメノンサモン)!!」


 リリアはそう叫んだ。

 確率召喚(フェノメノンサモン)はリリアの持つすべてのMPを消費して行う技だ。その効果はスライム相当の者からボス級までランダムで召喚するものである。だが、ボス級を出す確率は極低になっている。

 リリアの前に白い煙が現れ、視界を悪くさせた。


 「目くらましのつもりか!」


 アリアは亜麻色の髪をなびかせながら、手に持った大剣を持って、リリアに突っ込んでいく。

 あたりの白い煙が爆風とともにかき消され、大地を揺らす爆発音が鳴り響いた。

 俺はリリアの死を確信する―――――が、いつまで経っても試合終了の合図が現れない。

 俺は爆風の中、どうにか目を開け、状況を確認する。


 「なん……だと……」


 アリアの大剣はリリアの前の見えない壁によって阻まれ、それ以上前に進むことがなかった。いや、見えない壁ではない。小さな少女が素手で大剣を受け止めているのだ。その少女は黒いゴスロリ服を着ていて、肌は日光にあたっているのか疑問に思うほどの色白、胸はもちろん皆無だった。少女は足りない身長分、空中に浮いていた。容姿はどう見たって小学生にしか見えない。


 「まったく、手荒い歓迎だな……問おう。そなたが私のマスターか? って、リリアか……だが、少し違うな……」


 「私を無視するな!」


 アリアが大剣を引き戻し、再び大剣を縦に振るう。その斬撃に少女の体は引き裂かれてしまうと思われた。

 再びの爆風……俺は飛ばされないように踏ん張った。


 「まったく……どうやら、ピンチのようだな……『超幸運者(The luck)』の名は伊達じゃないということか……」


 少女の声が聞こえ、爆風の中、再びまぶたを開くと、アリアの大剣が今度は手の平でなく、頭の上で止まっていた。まるで、何かの壁があるように……

 少女は少しだけ笑い、軽くアリアの体に触れる。


 刹那―――――


 アリアの体はくの字に折れ曲がり、そのまま壁へと激突した。土煙が舞い、再び視界が悪くなる。


 「あなたは……」


 「そうだな……冥王……と、でも名乗っておくかな……」


 少女は宙を漂いながらゆっくりとアリアに近づいていく……

 その瞬間―――――冥王と名乗った少女に向かってアリアが大剣で牙突をする。しかし、見えない壁に阻まれ、アリアの大剣は目標の眼前でぴたりと止まる。


 「アハッ!」


 少女が不気味に笑い出した。俺はそんな少女の姿にロリコンの血が騒いだものの、それと同時に恐怖を感じた。


 「この……クソババア!」


 アリアが大剣を握る腕に力を入れ、どうにか切ろうとするもやはり届かない。


 「誰がババアだ!」


 少女の陰から無数の黒いもやもやとしたものが出てくる。それらは一斉にアリアの方を向き突っ込んでいった。


 「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!! 死んじゃえ!」


 魔女の笑いに似た不気味な笑いをし、少女は片手で数十もの影を操る。それらは全てアリアに向かって攻撃を仕掛ける。

 次の瞬間、ありえないことが起き始める。

 アリアの耐久値がまるでタイマーのように減少を始めたのだ。

 アリアは無数の影を倒そうとするも、その数に押され幾度となくダメージを受けていく。


 「冥土の大槍(ニブルヘイムランス)。キャハ!!」


 少女が右腕を軽く凪ぐと影で出来た大槍が生まれ、それは一直線にアリアに向かって行った。アリアは即座に反応し、自慢の大剣で受け止めた。しかし、圧倒的な力の前には無意味に等しく、アリアの大剣は砕け散り、アリアの体は爆音とともに吹き飛ばされた。


 「あれ? もう終わり? つまんないなぁ……」


 冥王はゆっくりと倒れているアリアに近づき、影の腕で頭を掴み、そのまま宙に浮かせる。


 「あが――――――っ」


 アリアは苦しそうに吐息をもらす。だが、頭を握りしめる影の腕はより握る力を強めた。


 「ほら? もっと足掻いてよ? もっと楽しませてよ! キャハハハ!!」


 「死ね、化け物!」


 アリアは最後の力を振り絞り、手の中から光の弾を出し、それを冥王にぶつけた。属性的に良かったのか、冥王の頭と右肩が吹き飛び、冥王を倒した―――――かのように見えた。


 「まったく……痛いじゃないか……」


 「――――――っ!!」


 冥王の体はまるで何事もなかったかのように再生していった。まばたきする間にすでに元の形に戻っている。


 「それに酷いなぁ……確かに1000年以上生きてるけどさ、さすがにババアは無いよ。これでもまだ寿命には程遠いんだよ? それに、大事なのは中身の年齢じゃなくて見た目だよ」


 確かに今の冥王の姿はどう見たって小学生程度にしか見えない。だが、言動は姿とかけ離れていた。


 刹那――――――


 冥王の体を光が包み始めた。


 「チッ! 時間か……命拾いしたわね―――――」


 全てを言い終える前に冥王の体は全て光の欠片となって消え失せた。どうやら確率召喚(フェノメノンサモン)の効果時間を過ぎたらしい。

 自由になったアリアの体は地面に落下し、そのまま大地に伏せる。


 「アリア!」


 俺は即座にアリアに駆け寄った。アリアの体は力を使い果たしたせいか、子供に戻り、数秒後には俺の装備する指輪へと吸い込まれていった。

 アリアはまだ死んでいない。まだ錆びたシリウスは壊れていないからだ。



 錆びたシリウス耐久値:4/999

 残りイベントボス数:3体


えっと……まぁ、言いたいことは大体わかります。こんなの幼女じゃない?

いやいや、アリアの女性になる設定を作ったのは私じゃないし、冥王に関してはむしろ本当にババアだし、見た目は幼女だけど……

さて、今回は終わらせずに続ける形をとりましたが、この後どうなるかなんて知ったこっちゃありません。冥王はもう消えたし、残るのはイベボス攻略ぐらいかな……

版権にひっかからなければいいけどね。

それでは~ノシ

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