華ガ咲イタヨ
奈良都翼です
嫌いなものはリア充
そんなもの見ようものなら……↓
「呪いって言っても何かピンと来ないんだよな、ステータスが下がったりだとかの悪い影響がないしさ」
指輪を宙にかざしながら一人つぶやく。アリアの食事が日々大盛りのカレー100杯ってことはないだろうし、というより食べるのかもなぞだ。
「食事はいりませんよ」
ほら、親切設計。
「でも指輪の装備が解除できないんでしょ?」
確かにそうだがあいにく俺は指輪をはめる予定はない。
「困ります、指輪がはめられないなんてそれじゃミズキに……」
「もしかしてトモキそれって!?」
「ああ、いつか言おうと思ってたんだが……」
「まって、その話は指輪が取れてからにしましょ? それに皆さんが見てる……」
はいはい、今すぐ汚ねえ花火になりやがってください。ファイヤーを放とうと思ったとたんトモキの指輪が光る。
「なんだ!」
するとどこからともなくトイレとベンチ、そしてそこには青いつなぎを着たいい男が座っていた。トモキは完全に言葉を失っていた。
「……やらないか?」
男はつなぎのホックをはずし始める。すると言葉を失っていたと思われたトモキが急に動き出した。
「あなたの名前は?」
「安部ルシフェルだ、話をしようあれは今から三十六万四千年前だったかいや、一ヶ月前の出来事だ。あいつには72通りの名前があった確かこれを作成したときは……リナ。あいつは思ったんだこのゲームにはあまりにもホモォ要素がないと」
トモキの喉仏が上下する。
「そしてあいつは俺を作った、デザインから何かまでな。いいんじゃないかなあいつもよくやってるし。それとあいつは始めから人の話を聞かなかったよ、そして周りの批判もかえりみずこのクエストを通して俺を登場させた」
「…………」
なんだこのゲームの製作者たちは……変態しかいない。
「さて、トモキ旅の始まりだ」
すると安部ルシフェルはトイレの中へと入っていく。するとトモキがそのあとを追ってトイレに歩き出した。
「ちょっとトモキ、まさかあんなのと!?」
ミズキがとめに入る、するとトモキは振り返りうつろな眼で答えた。
「…………ごめん」
完全に沈黙したミズキを置き去りトモキはトイレの中へと入っていった。
「いいのかホイホイとついてきて、俺はノンケだってかまわないで食っちまう人間なんだぜ」
「こんなこと初めてだけどいいんです……、僕……安部さんみたいな人好きですから……」
するとトイレが急に消えた、残されたのは絶望に心を壊されたミズキだけだった。さすがにさっきはむかついたが今は目も当てられない。
「嘘でしょ……トモキ……信じてたのに」
すると今度はミズキの指輪が光る。
「あら、どうしたの?」
ミズキの後ろに美しい女性が現れる、髪はツインロール? で手足はすらりと長い、レイカさんに負けずとも劣らないスタイルを兼ね備えている。
「……あなたは?」
「私は黒子美晴、私はヨシって人に作られたの。彼はこのゲームに百合要素がないって嘆いていたわ……そして他の二人と同じようにデザインからAIにまで携わった」
すると黒子美晴はミズキのほうへと手を添える。
「そんな悲しい顔しないで、せっかくの可愛らしい顔が台無しよ?」
次第にミズキの頬が紅葉していく。
「……お姉さまとお呼びしてもいいですか?」
「いいわよ、あんな男のことは忘れて私と遊びましょ?」
ミズキはゆっくり立ち上がり黒子美晴とともに消えていった。
「ねえ、良」
沈黙を崩し夜桜が口を開く。
「ああ、おそらく俺も同じことを考えてる」
俺も夜桜も考えてることは同じはずだ。
「「呪いを解こう」」
目の前のあまりにも恐ろしい光景に初めて二人の意見がまとまった。
「リョウはん、いつの間にお子はんできおったの?」
「いやそういうんじゃないから」
レイカさんは今その腕を買われセンブルグの風の外交官として働いている。
「リョウはん、そんな小さい子に手だすんはあかんで?」
「それでもない、俺はとあるアイテムを入手して呪われた、それからこいつに付きまとわれてるんだ」
「なるほど、つまりその呪いを解きたいと?」
「そうだ」
「えー、ずっと一緒にいようよ、お別れなんてやだよ」
その言葉にアリアが反応しだす。
「少し黙ってろ」
涙目になったアリアは上目使いで見上げてくる、かわ……いやいや騙されんぞ。俺はミズキやトモキみたいにはならない。
「リョウはん、女の子泣かせたらあかんで」
レイカさんが頬を膨らませ俺を諭す。そしてアリアの頭をなでる。それはとてもさまになっていて、まるでアリアがレイカさんの実の娘のようにも見えてくる。
「お姉ちゃん、いい人だね。ねえねえリョウ私どうせならこんなお母さんがほしい」
その言葉に俺はふき出す。何言ってんだこいつは。
「ふふっ、そうやねうちはいいで」
そう言いながら笑いながらアリアにつぶやくレイカさん、うちはいいって……その……つまり。
「リョウ、何しにここ来たんだっけ? まさかこの女に合いに来たわけじゃないでしょ?」
夜桜にゼロ距離で杖を突きつけられる。アハ、イッツスリリング。
「はは、もちろんさ」
硬直した顔を揉み解しながら再びレイカさんに尋ねる。
「それで呪いを解く方法何か知らないか? おそらくそれらしい情報なら持っていると思うんだが」
大型ギルドの外交官ともなれば、多くの情報を手にしていることは間違えなかった。
「そうやね、確か《タワー》の領土の山岳に咲くリベレーターて言う花が呪いを解くアイテムって聞いたことあるで、でも実際は見たことないからほんとかどうかは分からんで?」
「リベレーター……か、ありがとう探してみるよ」
「うちもついて行きたいのは山々なんやけど、これから他のギルドとのボス攻略の打ち合わせがあって行けへんのや、かんにんな」
「いいよ、その情報だけで十分、あとは自分で何とかするから」
そういってその場をあとにしようとしたとき、レイカさんがなにか思い出したようにつぶやいた。
「あそこには強力なモンスターが出るって聞いたことあるような、無いような」
「ああ、気をつけるよ」
「お姉ちゃん、またね」
アリアはすっかりレイカさんに懐いた。しかしさっきの言葉の意味はどう捉えればいいのだろうか。
「あまり強力ってほどではないがな」
出てくるのは桃鹿の上位変換に当たる赤鹿、確かに強暴だが手を患うほどでもない、あとオオトカゲというトカゲ、こちらはかまれると毒になるが夜桜がいるので何の問題もない。
「まだつかないの?」
山岳エリアに入る前の荒野エリアをようやく出たところだ、正直ここまで遠いとは思ってなかった。
「花は高いとこに咲くんだとさ、ここから山を登って頂上まで行くだけだ」
「えー、帰っていい?」
「よくないに決まってるだろ、第一トカゲにかまれただけで死ぬから」
以外にオオトカゲの毒は強力で放っておけば30秒ほどでHPを持っていかれる。
「ったく、仕方ないわね」
そう言いながらしぶしぶ歩く夜桜。
「ねぇ、あれじゃない?」
何かに気づいたようで夜桜が前方に指差す。今の位置より一段分高いところに何かがゆれているのを確認できる。
「とりあえず確かめてみよう」
思いのほか近いところにあったようだ、何も頂上まで行くことはなかった。
「これ……だよな、リベレーター」
朱色の花を手に取ると光に変わった、そしてアイテムポーチを確認するとそこにはリベレーターの文字があった。
「さて、後はこれを使って……」
その瞬間全身を寒気のような感覚が駆け巡った、バサリバサリと何かが羽ばたく音が聞こえる。
「何よ……あれ」
そこには巨大な飛竜が羽ばたいていた、全身から殺気を放ちこちらを睨みつけてくる。とてつもないいやな予感に硬直した体を無理矢理動かした。
「クッ」
夜桜を抱えその場で緊急回避を行う。いやな予感は的中し当たりは一瞬に炎に包まれた。
「こいつのことだったのか……」
レイカさんの言っていた強力なモンスターという言葉を思い返し全身を振るわせた。もしかしたらラバーズやマジシャン以上に強力かもしれない。
「逃げるぞ、走れるか?」
「それが……」
夜桜の足を確認すると大きく焼け爛れていた、見ただけでも相当なダメージが想像できる。
「回復はできるか?」
「かなりの時間が掛かりそう、少なくとも3分は……」
あいにく転送アイテムは持っていなかった、選択肢は3つ、夜桜を抱え逃げる。しかしそれは相手が許してはくれないだろう。二つ目はいったんここでログアウトをし3分間粘る、しかしログアウトから再ログインまでは急いでも1分は掛かるその間夜桜がこの足で逃げ切るのは不可能だ。となると3つ目……。
「早めに頼むぜ」
多少無理でもここで3分間俺が粘る。もちろん一撃でも食らったらおしまいだ。腰から剣を抜き、右の腰から本を掲げる。魔法剣士ならではの戦闘スタイルだ。
「行くぜ!」
牽制程度にファイヤーを放つ、相手のHPバーは削れたのかすら分からないほどしか減っていないようだ、もしくはダメージがないとも捕らえられる。
「なら、こいつだ」
剣を飛竜の頭に叩きつける、刃は大きな火花を散らし弾き返された。そのため大きな隙ができてしまう。
「しまっ!?」
そう思ったときには飛竜の尾が俺を吹き飛ばしていた、何度も地面とぶつかりHPがじりじりと減っていき、3分の1のところで止まった。
「くそっ、何てダメージだよ……」
ダメージ蓄積で重くなった体を立ち上がらせる、相手はこちらを意識したらしく標的は完全に俺に移っている。
「ははっ願ったり叶ったりかな……とはいっても、あとどれだけだよ」
軽く視線を夜桜に向ける。焼け爛れた足はいまだ治る兆しがない。
「くそ、きついぜ」
空気を吸い込む予備動作を見せる飛竜おそらく先ほどと同じ火炎を放つのだろう。
「間に合えよッ!」
剣と本をしまいあいてみ向かって走り出す、口が開かれ火炎が放たれる刹那、スライディングで飛竜の懐にもぐりこむ。
「ふう、神回避」
そして飛竜の肉質のやわらかそうな腹部に剣で切りつける、剣はすんなりと通り飛竜のHPバーが目視できるほどに削れた。
「これなら」
そう思ったのもつかの間だった。飛竜は大きく羽を羽ばたかせると一気に俺との距離を開いき、大きく息を吸い込む。
「まずい!」
夜桜、俺、飛竜が一直線上に並ぶ。ここで回避すれば夜桜への直撃は間逃れないだろう。
「万事休す……か」
しかし時間は一分が立ったところ。ここで俺が夜桜の盾になったとしても、残り2分を一人で耐え切れるとは到底思えない。あまり回転率のよくない頭を全力回転させ導き出した答えは……。
「ゲームオーバー」
俺は死なない以上実質そうなることはない、しかし夜桜はどうだろう? そうここでの死は現実での死を表す。俺はこのゲームに敗れた、自分が非力であるがゆえに結局大切なものも守れない。飛竜の口が開きあたりが炎に包まれる。
「諦めるのは、早いのではないか? 少年よ」
何かが光り炎が二分される。そして俺がその炎に焼かれることはなかった。
「問おう、お前は何がしたい。何が欲しい」
その声に視線を向ける。そこには凛々しく立ち、亜麻色の髪をなびかせる一人の女性がいた、その手には大剣が握られている。
「俺のしたいこと、欲しいもの……」
そんなことは決まっている。俺は夜桜を、いや夜桜だけじゃないこのゲームに囚われた皆を生きて解放させたい。そのためには俺は非力でだからこそ……。
「皆を守る力が欲しい」
「そうか、ならそれはお前のもとにすでにある」
女性の目には俺が映っている。
「行こうか、皆を守るのだろう?」
「ああ」
それと同時に俺は飛竜の本へと走り出す。女性もそれに続き飛竜に斬撃を与える。その体が大きく揺れダメージがあることを確信させた。
「だああぁぁぁあああッ!」
懐に入り込み斬撃と魔法を当て続ける。飛竜の体はさらに大きく揺らぐ。
「いっけえぇぇぇぇえええッ!」
全体重をかけた一撃は飛竜を裂きその巨体は崩れ落ちた。
「やったのか……」
おそらく俺の力ではない、女性の放った一撃が飛竜のHPの大半を持っていったのだ。
「少年よ、忘れるな……」
女性の体がゆっくりと光になり砕けたかと思うと、そこにはアリアがいた。
「あなたは決して非力じゃない、十二分な力を持っている」
「アリア……」
「短い間だったけどありがとう、楽しかったよ。忘れないで……その……」
そこまで言ってアリアが光に変わる、そのとたん喪失感が俺を襲う。
「アリア!? 嘘だろ、おい何が呪いだよ……解除できないんじゃなかったのか?」
光をつかんでもすぐに手の中で消えてしまう、そこにはアリアのぬくもりだけが残されていた。
「っ……アリアあぁぁぁああッ!」
俺の叫びは虚しく空へと吸い込まれた。
「それで、アリアはいなくなちゃったの?」
「ああ、あれから現れていない」
俺は町に戻り夜桜と話をしていた。
「結局これは必要なくなったてことだ」
俺はアイテム一覧からリベレーターを選択し破棄した。
「いいの? 売れば高く売れたかもしれないのに」
「いいんだ、俺にはもうこれは必要ない」
「本当によかったの?」
どこからか聞き覚えのある声が聞こえる。
「だからもう……」
「じゃあいつまでも私と一緒にいられるね」
確かに聞き覚えのある声だ、その言葉に振り返るとそこには亜麻色の髪をなびかせる少女がいた。
「アリア?」
「リョウ、久しぶり元気?」
以前と変わりない姿のアリアがそこにいた。
「な、なんで……消えたんじゃ?」
「ちょっと力使いすぎたから実体化できなくなっただけだよ、それに《さびたシリウス》は装備したままでしょ?」
てっきり消えたものだとばかり思ってた《さびたシリウス》は装備状態のままだった。
「なんだって……」
ふつふつと湧き上がってくる怒りとアリアをいとおしく思う気持ちが交じり合い、いつの間にか俺はアリアを抱きしめていた。
「こいつ、ふざけあがって」
「リョウ、いってることと取ってる行動がぜんぜん合ってないよ」
「ねえ、リョウ」
その言葉に振り返る、そこには笑顔がまぶしい夜桜がいた。
「ロリコン、死ね」
その後彼女の機嫌を直すために用いた時間と労働力と金銭は計り知れないものだったことは言うまでもないだろう。
どもー、二つ飛んで奈良都翼です
皆さんどうお過ごしだったでしょうか?
投稿日数があいてしまったことを深く反省してますすいません^^;
さて次回は雷那さんですよ、よろしくね^^
よろしかったらご感想ください^^




