ヤキソバの早食いには自信があるけど、のどに詰まらせないように注意、あれは死ねる。
今回からリレーに参加させていただく、「ぐれねぃど」と申します。
敬語は今回だけで、次回からは素で行かせていただきます。
今回は二千文字と少ないですが、ご容赦くださいますようお願い申しあげます。
ボス戦が終わり、沸き立つ人々をよそに俺は人気のない路地に入る。
「ログアウト」
あのあと、トマトさんの剣は《ミックスベジタブル》の人たちに返した。
彼らは「トマトの仇を討ってくれてありがとう」と言い残して去っていった。
――と、そんなことを考えているうちに現実世界での俺の目が開く。
「う、ああ~あ……」
流石に何時間も寝転がっていたせいで体からパキポキと音が鳴る。
「トイレ行こう、うん。」
体を襲う危険信号に従いトイレに向かう。
「ふぅ……」
安堵の息を漏らしながらトイレから出てさあ再ログイン! と思った時。
「おーい坂本、親御さんが会いたいそうだ!」
寮長がドアを叩いて声を上げた。
くっ……、分かってはいたが、こんなに早く来るなんて!
「今行きまーす」
俺は返事をした。
全身から嫌な汗が出る。
どうやって弁解する? そもそも母親はどれくらい怒ってるんだ?
重い足取りで寮の面会室のドアの前に行き、控えめにノックする。
「入りなさい」
ヤバイ、ガチで怒ってるよこれ……。
手についた汗を部屋着のズボンで拭い、ドアノブをひねって室内に入る。
面会室の中は絵が飾られ、革風生地のソファーが二つと、それの間にあるテーブルしか内装が無いそう。
うん、このギャグ寒いな、『無いそう。』って今、俺自身が見てるし。
母親の視線に耐えながらソファーに座る。
対面に座る母親は持参していたバッグから一つの箱を取り出した。
「これ、なんだか分かりますか?」
箱には……、『ジョグラトル・オンライン』と書いてある。
ええ母さん、俺知ってるぜそれ、さっきまでプレイしてたんだ。
……なんて言える訳もなく。
「あ、ああ、最近ニュースになってるよな……」
声が震えてしまった。
俺の母親は、昔から鬼のように厳しく叱ってくる。
泣いても許してもらえた事などない。
「それだけですか?」
鋭い視線。
「夏輝ちゃん、今どうしていると思いますか?」
これは逃げ道が無い。
俺は留守電を聞いた。
しかし『無視』した、というこの状況では、俺ができる母親への反撃は無い。
「そのゲームに、囚われてる」
無意識に母親から目をそらす。
いや、そらしてしまった。
「正直に言いなさい、何を隠しているの?」
今の俺の行動で確定したと言わんばかりに声を荒げる母親、マジ怖いです。
完全に蛇に睨まれたカエルとなった俺は、「え、えっと……」と煮え切れない態度を示してしまう。
「言いなさい」
体が震えだす。
母親の体から謎のオーラが出ている気さえしてくる。
「………………」
数十秒の沈黙、しかし俺には何時間も経った気がしてきていた。
「もういいです」
母親がため息をつく。
「私の育てた息子はクズだって事が分かりました、帰ります」
母親が席を立つ。
俺は今、見捨てられた。
そういう確信が体を駆け巡る。
奈落に落ちていくような感覚に涙が出そうになった。
その時。
「息子に見捨てられて私は悲しいです」
ふっと、感覚が鋭くなる。
そうだ、今俺は、見捨てられたんじゃない、自分から突っぱねたんだ。
なんで信じられなかった?
この母親は一回でも俺の秘密をバラしただろうか?
それどころか真剣になって聞いてくれて、解決策を講じてくれた、模範みたいな母親だった、俺はそう思う。
なら、この俺だけじゃ解決できるか分からない、命のかかっているデスゲームの事も、相談するべきじゃないのか!?
自問自答の果てに、俺は、部屋から出ようとする母親の手を取った。
「見せたい、物があるんだ」
俺は生唾を飲んだ。
自分の部屋に母親を案内する。
「少しは片付けないとモテないわよ?」
母親は少し怒りが落ち着いたようで、俺の部屋にダメ出しをはじめる。
しかし、ベッドの上のヘッドギア型の装置を見て、フリーズした。
「…………どういうことなの?」
動揺している。
「実は俺、ジョグラトルオンライン、やってるんだ」
「ログアウトできないってニュースで言ってたわよ!?」
母親は身振り手振りでテレビを表現し始めた。
今まで見たことがないほどの焦りようだ、うん、普通はそういう反応だよね。
「俺はバグか何かのせいで、ログアウトも、ゲーム内で死ぬこともできるみたいなんだ」
なんということでしょう、母親は機能を停止しました。
「……つまり?」
かろうじて言えたのはそれだけのようだ。
「俺はゲームの中で夏輝とパーティ……、仲間として戦ってる、プレイヤー達を現実世界に生還させるために」
母親は開いた口が塞がらないといった表情から怒った表情に一変。
俺に平手が飛んできた。
「バカが!」
「ひどい!」
なぜ俺の周りには強い女ばかりいるのだろう……。
「あんた、まだ大学生でしょう! そんな大きなことをするならせめて、私には協力を仰ぎなさい!」
「い、いやでも、母さんゲーム苦手じゃん」
俺の母親はゲーム音痴である、マリ○ではクリボ○に倒されるし段差に飛び乗れないという奇跡的なミスを連発した過去がある。
「それ以外にも手伝える事はあるでしょう!」
「た、例えば!?」
やけになって声を荒げた俺を見て、母親は。
「お昼ご飯食べたの?」
と、聞いてきた。
その時俺の腹はタイミング良く(悪く?)、「ぐぅー」という音を上げた。
「まだ……です」
熱い顔を下に向けつつ返事をした。
「腹が減っては戦ができぬって言うでしょう、ちゃんと食べなさい、ゲームの中じゃバイトできないでしょう、食材は送りますからそれを食べなさい!」
母親は一気に畳み掛けてくる。
「は、はい」
タジタジになりつつ返事をする。
「ちゃんと助けて来るのよ! 多分それはあんたがするべき事なんだから!」
「……はい!」
力強く返事をして、俺は母親の目を見た。
母親は笑っていた、俺も笑った。
その後母親にすぐに作ってもらったヤキソバを速攻で食べて、俺はゲーム内に戻る。
夏輝……、夜桜を待たせていることをつい失念していた。
戻る予定時刻から25分ほど過ぎている。
まあ、話せば分かってくれる、……といいなぁ。
俺の視界が薄暗い路地裏を映す。
さあ、待ち合わせ場所に行かなければ!
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
「新展開なんてなかった」が今回のコンセプトです。
次回の担当走者の方に丸投げですが、許してくださると嬉しいです。
次回担当するときはギャグ多めで書いていきたいと思います。
駄文失礼しました(。・ ω<)ゞてへぺろ♡




