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ろぐ☆あうと  作者: 奈良都翼
魔術師&恋人たち
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《魔術師》と《恋人たち》

Σ(@@;

 ……こんにちは。一葉楓です。今回は色々単語が出てきます。



 洋館の中に大量のプレイヤーと二体のボス……《恋人たち》と《魔術師》。

 さっきまでの大量の恋人たちは幻術だったのか……ということは、下調べに来たときも幻術にかかっていたことだ。つまりははじめの情報なんてほとんど役に立たないのか? いや、むしろこれはチャンスだ。幻術が解けた……つまりは相手の攻撃の一つを攻略したということ。ここから一気に畳み掛ければボス二体同時攻略も夢じゃない!


「魔法部隊は詠唱用意! その間は遊撃部隊が時間を稼げ!」


 ヴァルヴァディアが叫ぶ。いわれなくてもやりますよ!

 俺は地面を蹴って《恋人たち》との間合いを一気に詰める。手に持つシルバーソードが青く光り輝き、恋人の真上に跳んで体重を乗せてシルバーソードを振り下ろす。剣士スキルの『断空剣』だ。一次職のスキルだが、威力はそんなに弱くはないだろう。振り下ろしたシルバーソードは《恋人たち》の右肩に当たり、HPを削る。だが、所詮は一次職のスキル。スキルレベルもアップさせていないのに大ダメージは期待できない。


「リョウさん、下がって!」


 後ろからトモキの声がしたので横に跳ぶ。トモキは装備している刀を鞘に納めて腰に当てて《恋人たち》に迫っていた。


「『一刀流・居合い斬り』ッ!」


 《恋人たち》がトモキの刀の間合いに入ったとたん、刀が青白く光ったかと思うと目にも留まらぬ速さで横に薙いだ。侍のスキル『居合い斬り』だ。侍は『一刀流』と『二刀流』の二つのスキルを転職時に選択できるが、『一刀流』を選択した場合にしか出てこないスキルだ。

 トモキの刀は《恋人たち》のHPを削り、スキルが終了するとすぐに魔法部隊の後ろまで下がった。トモキが下がったのが合図なのか、魔法部隊がいっせいに遠距離攻撃をする。

 魔法で焼かれながらもいまだに立っている《恋人たち》に舌打ちをしながらも、俺はある場所(・・・・)まで走った。そこは、さっき死んでしまったソードマスターがいた場所。周囲には彼が持っていたであろうアイテムや武器、装備が転がっていて、それを囲むように数人が膝を着いていた。


「おい、お前ら! 動かないと同じように死ぬぞ!」

「俺たちの仲間がぁ……ソードマスタートマトがぁ……」

「トマ……でも一ヶ所に固まってたらお前らも死ぬぞ?」

「くそぅ……ここは俺が……トマト! お前のカタキはこの俺、ポテトがとってやる!」

「俺も行くぞ! ギルド《ミックスベジタブル》の仲間だったんだ! 絶対にこのボスは倒す!」

「俺も、トマトのために……」

「キャベツ……ダイコン……ピーマン、キュウリ、高麗人参(こうらいにんじん)も来てくれるかのか!?」

「おう、行くぞ!」

『おう!』


 死んだソードマスターのトマトの周りに集まっていたのは同じギルドのメンバーだったらしい。《ミックスベジタブル》……ポテトさんや大根さん、キャベツさんやピーマンさん、キュウリさんに続いて高麗人参さんも魔法に焼かれる《恋人たち》に武器を抜いた。

 ソードマスタートマトかぁ……誤植の多そうなプレイヤーだったんだろうなぁ……。


 《ミックスベジタブル》のコンビネーションはほぼ完璧で、ヴァルヴァディアの指示なんて必要ない……いや、逆に指示があったほうが邪魔なくらいだ。それは他のプレイヤーにもわかっているらしく、彼らのサポートに徹している。

 彼らが《恋人たち》を相手にしている間に他の遊撃部隊、補助の必要がない魔法部隊は《魔術師》に狙いを定めた。

 だが、そこに水をさすのは他でもないヴァルヴァディアだった。


「貴様らぁ!! 俺の指示無しに勝手に動くな!」

「うるさい! お前はもう黙ってろ!」


 だが、すぐに高麗人参さんがほえた。仲間が戦っている戦線から外れてヴァルヴァディアに詰め寄る。


「相手はもうボス二体。これなら指示なんてあったほうが邪魔だ。相手が少なければフレンドリーファイアの危険も下がるし、何よりその場の各自の判断で動いたほうが安全、かつ優位に戦況を進められる。なにより……一人も死なせない作戦でトマトは死んだじゃないか!!」

「な、な……それでもこの作戦の指揮官は私だ!」

「はいはーい。ヴァルちゃん、そこまでにしときましょーか」


 ヒートアップしてきた高麗人参さんとヴァルヴァディアの口論は、突然ヴァルヴァディアの後ろから現れた背の高い女性によって中断された。おそらく、《センブルグの風》のサブマスターらしき人……。背の高い黒髪の女性は整った顔立ちで、かなり大人の雰囲気を醸し出している。綺麗な人だ……。背中にさしているのは杖だから魔法職だろう。

 そして……てには一本の太いロープ。


「なんだ、クイ? 今、大事な話……って、何をする!? なぜロープで私を縛る!? こら! さっさと解け! おい、担ぐな。まだ話は終わってない……ゲボッ!?」

「うるさいわねー。いま一番足手まといなのはあんたなんだから補助部隊の後ろの端っこのほうで横になってなさい」


 鳩尾(みぞおち)を思いっきり殴ってヴァルヴァディアを気絶させたクイさんは、ヴァルヴァディアを補助部隊に向かって投げた。放物線を描いて補助部隊にキャッチされたヴァルヴァディアはフィールドの端っこのほうに追いやられた。


「ごめんねー。私の彼氏が迷惑かけて。確かに、ここからは各自の判断に任せたほうがいいわね。アレはちょっと邪魔だったわね。大丈夫、高麗人参さん?」

「は、はぁ……」

「じゃあ、《恋人たち》はあなたたちのギルドと他の数人に任せていいかしら? 他は《魔術師》に当てるから」

「はい。やります! では!」


 軽くクイさんと話した高麗人参さんはすぐさま《恋人たち》と戦っている《ミックスベジタブル》の仲間の元に合流し、再び剣を抜いた。


 クイさんは魔法部隊の元へ行き、《魔術師》に魔法を放つ。《魔術師》は弱いという情報に間違いはなかったようで、順調にHPを減らしている。どうやらあいつの一番厄介な点は大規模幻術だったみたいだ。それをクリアした今ではもう普通のモブキャラと同じ……とまでは行かないが、中ボス並みの強さだろう。


 なら……俺が狙うのは《恋人たち》だろう。

 そのとき、アイテム取得のポーンという音が鳴った。なんだ? アイテムボックスを開くと、そこには二本の剣があった。あぁ、トマトさんの武器かな? 間違って触って俺のものになったんだろう。

 だが、それに構っている暇はない。


 《恋人たち》のHPはまだ半分ほどある。すばやい攻撃を防ぎながら、時折補助舞台の魔法で援護を貰ったり、自分たちのHPを回復させてもらって攻撃しているが、なかなか《恋人たち》のHPは減らない。

 キャベツさんの体が突然赤い煙のような光に包まれた。『二刀流』の所有者だけがもつことのできるスキル『力の解放』。一時的に攻撃力や、素早さなどのステータスを上げることできるが、スキル終了後、一定時間すべてのステータスが下がってしまうというスキルだ。

 キャベツさんは赤い光をまとった両手の剣を左右から《恋人たち》に叩き込む。直撃だが致命打にはならない。続いて上から振り下ろしたキャベツさんの剣を《恋人たち》は受け止め、そのまま右手の鋭いつめをキャベツさんに突きたてた。


「――カハッ!?」


 キャベツさんのHPが一気にレッドゾーンまで減り、ギリギリのところで減少が止まった。ち、世話が焼ける。おれはキャベツさんを掴むと思いっきり後ろへ投げた。補助部隊が彼を受け取ると、後ろのほうへ押しやった。

 彼はもうここでリタイアだろう。一歩間違えれば彼は光の欠片になっていたかもしれない。そう思うと……ぞっとした。俺が死ぬのは怖くないが、今俺の周りにいる人たちがそうなっていくかと思うと……。


 自然とシルバーソードを握る力が強まる。俺は《恋人たち》の攻撃を避け、時には受け流しながら的確なところでシルバーソードを叩き込む。

 他のメンバー、ピーマンさんは盾で攻撃を防ぎながら、槍で突く。ダイコンさんは少しはなれたところから魔法で攻撃を当てる。高麗人参さんは斧を振り回す。《ミックスベジタブル》と俺と、ミズキとトモキは着実に《恋人たち》の体力を削り、やがて五分の一まで減ったところで。ミズキが跳んだ。


「『断空剣』!!」


 青白く光ったミズキの剣が《恋人たち》を縦に真っ二つに切り裂いた。片方が男、片方が女の体をしていたそれはそのまま仰向けに倒れた。


 そして……。


『やったぞおおおおおおおおおおおおおお!!』


 同時に、《魔術師》が光の欠片になった。クイさんの魔法が止めを刺したらしく、情報どおり超弱い《魔術師》はあっけなく攻略完了。

 だが……「クエストクリア」の文字は出てこない。二体とも倒したはず……まさか!?


 仰向けに倒れた《恋人たち》はぐにゃぐにゃとその体を変えていき……完璧な『男』と『女』になった。さっきまでくっついていた男女が離れたかのように二体になった。

 まだ……このクエストは、終わりじゃない。


「あと少しだ! 一気に畳み掛けるぞ!」


 高麗人参さんの言葉に俺たちは再び攻撃を叩き込んだ。が、さっきとは違い、HPが一向に減らない。切られた部分はぐにゃぐにゃと形を変えて元に戻る。全く意味のなかった。

 くっそ……なんで攻撃が効かない? さっきまでは効いていたのに!

 次第に混乱していくプレイヤーたち。もちろん、俺や夜桜、クイさんも例外ではなかった。

 そして、混乱したミズキに《恋人たち》の蹴りが入った。HPこそゼロにはならなかったものの、壁まで吹っ飛ばされたミズキは意識を失った。

 だがそこでピーマンさんが口を開いた。


「おそらく……あのボスを倒すには二体の胸にある赤い球体のコアを同時攻撃するしかないだろう」

「ピーマンさん? なぜそう思うんですか? 確かにコアらしいものはありますが……」

「さっき片方のコアを攻撃してもすぐに元に戻ってしまった。だが、コアを攻撃するのは間違いじゃないと思うんだ。だから……同時に攻撃する。これしかないと思う」

「そうか、なら……トモキ!」

「はい。リョウさん!」


 3、2、1……今だ!

 だが、俺とトモキは一緒に戦ったことは一次転職クエストのときだけ。そう簡単に息が合うはずも無く、成功は……しなかった。

 ミズキは気絶してるし、夜桜は……だめだ。MPが尽きたのか。《ミックスベジタブル》のメンバーも試してみるが、タイミングが全く合わない。

 どうすれば……リズムさえ合えば、リズムさえ……そうしたいが、どうすれば……。


「僕の歌を聴けええええええええええええええええ!!」


 フィールドを満たすギター音と心に響く歌声……響だ。『アーティスト』の力で俺たちの力がみなぎってくる。そして……このフィールドを満たすのは響の歌声……リズムだ!!

 高麗人参さんが叫ぶ。


「みんな! 今こそ踊るんだ! 踊ってリズムを体に刻み込め!!」

『うおおおおおおおおおおおおおお!!』


 響の歌声に合わせ、足を踏み、手を振り、武器を躍らせる。次第に俺たちの体に音楽がしみこんでいき、リズムが取れてくる。いける! これなら倒せるぞ! 同時に攻撃できる!


 ポーン。レベルが上がりました。

 Ryo : Lv22


 そして、アーティストの歌に合わせて踊るとまれに起こる現象。レベルアップが起きた。次のレベルまでもう少しのとき、低確率でレベルが上がる現象だ。


 スキル『多刀流』を取得しました。


 そして、同時に頭に流れる新規スキルを取得したという表示。なんだ……『多刀流』? 『一刀流』でも『二刀流』でもないまた別のスキル?

 だが、俺はすぐに理解した。アイテムボックスからさっき拾ったトマトの剣を二つ出す。すると、出てきた剣は俺の手に収まらずに中へと浮いた。『一刀流』や『二刀流』は恒常的に発動するスキルだ。だからこの『多刀流』も同じ。

 頭の中で中に浮く二つの剣の動きをイメージしてみる。すると、その通りに剣は中を舞い、やめると空中でふわふわと浮く。

 ……難しいが、いける! 自分の動きを止めた状態なら剣二本までなら動かせる!

 他のみんなは察してくれたらしく、《恋人たち》の攻撃が俺に来ないように動いてくれる。


 リズムを取れ。集中しろ。相手の動きを読め。

 中に浮く剣を動かし、体の中のリズムを伝えて動かす。狙うは……二つのコア!


「今だ!!」


 響の歌声を剣に伝え、男女に分かれた《恋人たち》に剣を突き立てる。

 瞬間、二対は光の欠片になって散っていった。


 ポーン


 《センブルグの風》により《魔術師》が攻略されました。

 Ryo(無所属)により《恋人たち》が攻略されました。


 フィールドが歓喜に満たされた。

 俺は武器を仕舞い、周りのみんなに親指をつき立てた。《ミックスベジタブル》のメンバーは俺がトマトさんの剣を使ったことには何も言わずに、ボス攻略を喜んだ。


 その後、拠点に戻ってドロップアイテムの分配をして終わり。

 《魔術師》のドロップアイテムは《センブルグの風》に渡されるはずだったが、クイさんの意向により《ミックスベジタブル》に渡り、《恋人たち》のドロップアイテムは《クルセイダーズ》に渡った。


 終わったと分かったとたん、どっと疲れが押し寄せてきた。俺はログアウトして、現実世界で休憩することにした。

いかがでしたか? 次は彩菜さんですね。なんでも自由にやっちゃってー(=▽=;

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