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ろぐ☆あうと  作者: 奈良都翼
魔術師&恋人たち
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弱点? ナニソレ? おいしいの?

こんにちは。今回の担当はわたし、一葉楓です。

リレー小説、いつでも参加受付中です。参加待ってまーす。

 噴水広場の近くにある喫茶店。俺と夜桜はそこで作戦会議を開いていた。俺の前にはコーラ、夜桜の前にはストロベリーパフェ。縄のせいでいまだに俺は金欠状態である。

 スプーンでイチゴを口に運びながら夜桜が聞いてきた。


「で、それだけ?」

「ああ、こないだの一時転職クエストのボスとはぜんぜん違う。強かった」

「策はあるんでしょ?」

「いや、まだ思いつか――」

「だったらもう一回死んできなさい」

「ひでぇ!?」


 なんて女だこいつ!? 俺がいくらでも死ねるからって人使い荒すぎだろ!?


「じゃあ私が死にに行く?」

「ぐっ……今考えるよ……」

「がんばりなさーい」

「っていうかお前も考えろよ! 死ぬことはできなくても、策を考えることはできるだろ!?」

「考えてるわよ。いま一ついい案は浮かばないけど」

「……そうか」


 いいながらアイスとイチゴをおいしそうにほおばる夜桜。頭の中はパフェでいっぱいだろ。ぜんぜん考えているような顔じゃない……。俺が考えるしかないのかな。


 まず、戦いを有利に運ぶ方法は『奇襲』、『弱点を突く』、『戦略』、『数で攻める』、『力でゴリ押し』の五つが思い浮かぶ。

 だがここで『奇襲』と『力でゴリ押し』は真っ先に消去だ。あのカメは木の扉の奥の空間にいた。カメに近づくためにはあの扉から入るしかない。扉を使わないといけないから『奇襲』は絶対に使えない。

 『力でゴリ押し』も却下だ。この戦い方は自分と相手の力の差がはっきりしているときにしか使えない。俺よりあのカメのほうが強いのは明白だ。こんな戦法は自殺行為だ。……まぁ、死んでも大丈夫だからいいけど、夜桜は死んではまずいからこれもだめ。

 『数で攻める』は……俺、友達いねぇ。今から一緒にクエストする奴集めようにも、一時転職クエストをし直す物好きなんていないだろう。うわぁ……友達いないなんて……なんだか泣けてくる。くっそ、俺には夜桜がいるからいいんだ! 友達なんて……フレンドなんて……うぅぅ……。


「なーに泣いてんの?」

「な、ないてねぇよ! ちょっと目にごみが入っただけだ!」

「どうでもいいからさっさと考えて、私がパフェを食べ終わるまでに考えてよ」

「お前も考えろよ!」

「食べ終わるまでに思い浮かばなかったらもう一回行ってきてね」

「なんで?」

「良は何回でも死ねるからに決まってるでしょう?」


 い、言い返せない……。いくらでも死ねるからといっても死にたいわけじゃないぞ。できることなら死にたくない。

 えっと、後残っているのは『戦略』と『弱点を突く』か……っていうかその戦略を今考えているんだろうが! レベルもスキルもぜんぜんない俺にできる戦略なんてないだろうがぁああ!!

 後は……『弱点を突く』? ……まて、あいつに弱点なんてあったか? 甲羅なんて全然効果なかったな。頭や尻尾、足は攻撃は聞いたが、それでも甲羅よりは効果がある程度だ。十分硬い。あまり考えたくはないが、武器耐久値も心配になってくる。どこを攻撃しても絶対にパリィ状態になるし……攻撃できねぇじゃん。HAHAHAHA。


 ……御手上げじゃねぇかよおおぉ!! 倒せないじゃん! 無理じゃん。俺にできねぇじゃんか!


「はい時間切れ。行ってきて(死んできて)

「……え?」

「パフェ食べ終わった。行ってきて(死んできて)

「もう?」

「うん。だから死んできて(行ってきて)

「本音が出てる!?」

「さっさと死ね(行け)

「ちょ、そんな怖い顔すんなよ、今思いつくから……わ、待った待った! 行くいく、行きゃいいんだろ!」


 少しだけご立腹な夜桜のまえにストロベリーパフェ一つ分の金を置いて、俺は再び一時転職クエストに向かった。


◇◆◇◆◇◆


 レッドゴブリンたちを薙ぎ払い、消し去り、ようやくたどり着いた木の扉。扉に触れて、システムウインドウの『OK』を押し、中に入る。

 真っ暗だ。それでも二・三歩歩くと、始めてきたときと同じように松明が灯って明るくなる。


 ……いた。『シェルタートル』だ。決して直訳してはいけないボス。もしやったら……製作者の英語力を疑ってしまうからな。いいか、絶対だぞ! 絶対に訳すんじゃねぇぞ!


 俺を見つけたカメは壁が震えるほどの咆哮をして、たまらず耳をふさぐ。ダメージは受けないが鼓膜が破れそうだ。

 カメの咆哮が止んだところで、俺はショートソードを引き抜きながら走り出す。今回は弱点の発見が第一の目的だ。攻撃は受けてもいいからとにかく色々な所を攻撃してみよう。一番HPを削れるところを探すんだ。


 そのとき、カメの咆哮とはまた違う音が俺の鼓膜を震わせた。カメが地団駄を踏んで岩を落とす音じゃない。俺の走る足音でもない。……いや、気のせいだ。体を一回転させて繰り出した尻尾攻撃をカメの腹の下に滑り込んで避ける。

 攻撃が止んだところでカメの足をショートソードで切りつける。わずかな手ごたえはあるが、カメが苦しむ様子は微塵もない。剣じゃだめか……なら、


「ファイア!」


 足の同じところに向かってのファイア……だが、これでもHPバーは減ったかっどうか分からない程度にしか効果がない。

 チッ、なら今度は首を狙うか。


 カメの腹から出て首にショートソードを突き立てようとしたとき、地面が大きく揺れた。膝が揺れ、体制を崩しながらカメの腹から出る。カメもその体を揺らし、地面に腹を乱暴に置いた。あのまま腹の下にいればHPをかなり削られていたかもしれない。危なかった。

 それでも地面の揺れは収まるどころかますます大きくなり、立っていられなくなる。ショートソードを握ったまま地面に膝をついて、手で地面を押さえる。

 カメも攻撃してこない。この揺れが収まるまでずっと体を低くしたままじっとしているのだろうか? 攻撃してこない今はチャンス……だが、俺も歩くどころか立つことすらできない。なんだこれは? このゆれは……ヤバイ。本能がそう告げるが何もできない。冷や汗が背中をぬらし、ショートソードを持つ手が震える。

 どこだ? なんの揺れだ? 地震がこの世界にあるのか?

 いや、地震じゃない。揺れとともに何かの音も大きく聞こえてくる。音のする咆哮を探すが、揺れのためか耳が良く働かない。どこからなにが近づいてくるのか分からない。

 見えない何かに神経を集中させる。いつ、どこから出てきてもいいように壁や地面に目を凝らす。


 ピキッ――


 きた! 俺はカメの真横の壁に小さな亀裂が入ったかと思うと、地面が落ちてしまうかと錯覚するほどの大きな揺れを起こして壁が爆発した。火薬を爆発させたときに起こる硝煙と土埃を撒き散らしながら派手に壁が吹っ飛び、小さな石の雨を降らせて壁に大穴が空いた。

 揺れが止まり、辺りが静寂に包まれる。奇妙な沈黙の中、俺は立ち上がって剣を握り直した。今のは……なんだ? いや、それよりもまだ地面に腹を置いているカメだ。今ならどこでも攻撃できる。

 カメに向かって地面を蹴った瞬間、甲高い声が響き、足が止まる。


「おらぁ! ヤロウ共! あと少しだ!」

『うおおおおおおおおお!!』

「われらが宿敵、月光猿森連合軍が何らかの原因で戦力が低下している今がチャンスだ!」

『おおおおおおおおおお!!』

「あいつらの戦力を削り、よわっちろいユーザーにボス攻略をさせ、我が主《女帝》をこの世界のトップ上げるのだ!」

『わおおおおおおおおん!!』

「いざ行け! 最強のボス《女帝》が君臨するため! 手始めに《皇帝》率いる月光猿森連合軍は我等流星犬山大陸軍があいつらのフィールドを丸裸にしてやるわぁ!!」

『うおおおおおおおおお!!』


 爆発でできた壁の大穴から出てきたのは魔法使い、僧侶、魔法検視やプリーストの装備を着た……犬たちだった。その数は、かつての崖の下の森での月光猿森連合軍の猿と同じくらいの数で、次から次へと穴から出てきた。チワワや、パグ、ゴールデンレトリバーなど犬種は様々。

 その中でも迷彩服を着た司令官らしいシェパードが先頭に立って周りの犬に命令する。


「この先の壁を突っ切れば月光猿山連合軍の森に出るだろう。いざ進め! 壁を破っても、木々をなぎ倒しても、邪魔するモンスターは薙ぎ払え!」


 シェパードが叫んだとたん、周りの犬たちはカメを挟んだ向こう側の壁に向かって走り出した。

 カメは突然現れた犬たちが自分に向かってきていることで敵と認識したのか巨体を持ち上げて跳躍。犬の大群を押しつぶす。

 ――が、犬たちはすんでのところで四方八方に散り、カメの攻撃を受けた犬は一匹もいなかった。


「そのまますすめぇ!」

『イーヨロットイーヨロットイーヨロットイーヨロットワットワーイ……ワアアアァァァ』


 どこかで聞いたことのある意味不明なことを叫びながら犬は走り出した。カメなんて眼中にないかのように地面を押しつぶしただけのカメを蹴飛ばし、踏み潰し、ひっくり返し、ファイアー、サンダー、ブリザド……あらゆる攻撃魔法をお見舞いして先の壁を掘り進めた。

 穴からはどんどんどんどん犬が絶えることなく出てきて、すれ違いざまにカメに「とても描写できないようなひどすぎる何か」をして穴を掘りに先へ進んでいった。あぁ……これを『リンチ』って言うんだよな。抵抗できないカメを痛めつけて、弄んで……ゴミの様に蹴飛ばすなんて……。


 ――気が付けば、大きな壁が二つ。ただ呆然と立ち尽くす俺。モザイクが必要なのかと思えるほどのひどい姿に変わり果てたカメがいた。


 ためしにカメの首元をショートソードで突いてみる。一回ちょっとさっきまでの硬さが嘘だったかのようにショートソードは容易く入り、カメのHPがゼロになる。

 カメは光に包まれながら消え、フィールドには『クエストクリア』の文字が浮かび上がる。


 そう、俺は思い出した。戦いを有利に運ぶためには……『数で攻める』。


 クエストから帰った俺は広場近くの喫茶店に行き、夜桜にクエストクリアの報告をした。

 クリアした方法を聞かれたので正直に答えたら、世界一の馬鹿を見るような目をされた。

 もういいや……今は頭も体も疲れた。町長のところに行くのは少し休んでからにしよう。あの呪いの踊りを見る気にはなれない。もうちょっとだけここにいて、コーヒーを飲みながら店内を流れるジョクトラルオンラインの情報を扱うラジオにでも耳を傾けながらゆっくり休もう。


『緊急ニュースです。攻略ボス《皇帝》と《女帝》がそれぞれ率いる《月光猿森連合軍》と《流星犬山大陸軍》の大規模戦争が始まるようです。戦争の開始日時につきましてはまだ情報がはいておりません。ユーザーへの被害の範囲、大きさも不明です。いつ戦争が勃発するのか分かりませんのでユーザの皆さんは十分気をつけてフィールド攻略をしてください。』 

はい。再一時転職クエストはここで終了です。なんだか霧々雷那さんが弱点だとか、どこを攻撃すればどうとか書いてたけど……無視しました♪

フラグ? へし折りなさい。お約束? 破りなさい。書いていて楽しかったです^^

感想待ってます! 参加も待ってます!

ではではー。

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