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好きなあの子にテイムされた俺、最弱スライムだけど彼女を守るためなら最強になります!  作者: ミコジ


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6/20

好きな子とお風呂

うーーーん。

美穂が寝返りを打った。バスローブの前がはだけて、中が丸見えになる。


(コイツ、下着もつけてないじゃないか!)


俺は咄嗟に視線を逸らした。スライムに目があるのかどうかわからないが、意識しないように必死に窓の外を眺める。


(ダメだ。勝手に見るなんて絶対にダメだ。俺はスライムだし、美穂にテイムされているし、ペットみたいなもんだろ。ペットが飼い主の裸を見てドキドキするとかあり得ないだろ)


でも、俺の中身は高校生の男だ。


(いや、ダメだ。人間としての理性を保て、小野秀治!)


俺は一晩中葛藤した。チラッと見ただけで、すぐに視線を戻した。


(美穂、結構大きいんだな…)


いや、忘れろ。今すぐ忘れろ。

窓の外の廃墟を眺めながら、長い夜が明けるのを待った。


やっと朝が来た。

美穂が伸びをして起きてくる。バスローブがはだけたままになっている。

「わっ、はだけちゃってる。まあいっか。シャワーしてこよう」

美穂は何気なく言ってバスローブを脱ぎ出した。


(おいおい、脱ぐなよ! まだ俺ここにいるんだけど!)


美穂が裸のまま俺の方を見た。

「ピーちゃん、そういえば昨日犬やゴブリンを取り込んでたよね。洗わないと汚いよ」

言いながら俺を裸で抱き上げた。

( 自分で洗うから! せっかく一晩中我慢してたのに!)

「ピーーー!」

美穂の柔らかい肌に直接触れられて、俺の体が勝手にプルプル震える。

「あはは、ピーちゃん恥ずかしがってるの? かわいい」

美穂が笑いながらシャワールームに向かう。


その時、奈々も起きてきた。

「あ、おはよ。私もシャワー入るね」

奈々もバスローブを脱ぎ始めた。

(おい!)

全裸の同級生二人に挟まれて、俺の体はシャワーのお湯でゴシゴシと洗われている。

(絶対に俺が秀治だってバレないようにしないと。もしバレたら、そんなことになったら…いや、考えるな)


「ピーちゃん、体拭いてあげるね」

美穂がタオルで俺を優しく包んでくれる。

「ありがとう美穂。私の服、昨日洗って干といたから乾いてると思う」

奈々が窓際に干していた制服を手に取る。俺も美穂の洗濯物を確認する。制服のブラウスとスカートがハンガーにかかっている。

(下着も干してある…。見るな。見るな小野秀治)


二人が身支度を終えた。美穂が窓の外を眺めながら言った。

「ねえ、今日はどうしようか。このホテルにずっと居てもいいけど、食料も減ってくるし…」

俺は伝えたかった。着替えとか物資を調達に行こう、と。

窓から見えるショッピングモールの方へ体を向け、ピーピーと鳴き続けた。


「ピーちゃんどうしたの?」

美穂が窓際まで来て俺の視線を追う。

「あっ、ショッピングモールだねえ」

奈々も隣から覗き込む。

「いいね。動きやすい服も欲しかったし。行ってみようか」

(良かった、伝わったよ)


「じゃあ出発だね。ピーちゃん、行くよ」

美穂が俺を肩に乗せて部屋を出る。カードキーは異空間にしまっておいた。また戻ってくるかもしれないしな。


ホテルを出てショッピングモールに向かって歩き始める。朝の空気が冷たい。廃墟の街を三人で歩く。いや、二人と一匹か。


ショッピングモールが見えてきた。大きい建物だ。駐車場には何台か車が放置されている。

俺は気配察知を発動した。

(…反応がある)

ショッピングモールの中に、多数の気配。人間だ。それもかなりの人数。

だが、それだけじゃない。建物の周囲にモンスターの気配が集まっている。ゴブリンや大型犬だけじゃない。もっと大きな気配も混じっている。

まるで、中に人間がいることを知って待ち構えているような配置だ。


俺は美穂の肩の上で激しく震えた。

「ピーちゃん? どうしたの?」

美穂が足を止める。


「ピーピーピー!」

(危ない。中に人がいるけど、周りをモンスターに囲まれてる)


奈々も顔を険しくした。

「美穂、待って。気配察知に反応がある。ショッピングモールの中に…人の反応が多数。でも、外にモンスターが集まってる」

「えっ…」

美穂がショッピングモールを見つめる。


「まるで中に人間がいる事を知ってるみたいに集まってる」

奈々が唇を噛む。

「モンスターって、獲物の匂いで集まるのかな…」


美穂が下を向いて考え込む。

「そうか…物資がある所に人は集まっているのか。じゃあモンスターもそこに集まるのか…」

「ピーちゃん一人じゃ無理だよね。どうしようか」

美穂が俺を見て困った顔をする。


(近づいて欲しくない。美穂を守るのが一番だから。でも、あの中にいる人たちも助けたい。いや、今の俺の実力じゃ無理だ。外のモンスターの数が多すぎる)


奈々がぽつりと言った。

「モンスターも怖いけど…今は、ちょっと人も怖いんだ」

奈々の顔が暗くなる。山本たちのことを思い出しているのだろう。


美穂が「あっ」という顔をした。

「だよね。ごめん奈々、無理させちゃうね」

「他の店に行こうか。人が集まってる所は避けた方がいいよ」

奈々が小さく頷く。

「ごめんね美穂。せっかくピーちゃんが案内してくれたのに」

「謝ることじゃないよ。ピーちゃん一人じゃ無理だしねー」

美穂が明るく言ってくれる。俺も「ピー」と肯定しておいた。


(無理しなくていい。俺がついてる。別の場所を探そう)


「ねえ、小野君の家の方に歩きながら店を探そうよ」

奈々がふと言った。

「小野君の家? どうして?」

美穂が首を傾げる。

「だって、美穂は小野君に会いたいんでしょ? だったら小野君の家に行けば、もしかしたら会えるかもしれないし、無事かも確認できるよ」

奈々が美穂の顔を見る。

美穂の頬が少し赤くなった。

「そ、そうだね。秀治君の家、わかればいいんだけど…」

「小野君の家ってどこなの?」

奈々が聞く。

美穂が困った顔をする。

「わからない。学校でしか話したことなかったから…住所知らないんだよね」

「じゃあ、学校で調べようか。職員室に名簿があるはずだし」

奈々が提案する。

「そうだね。学校に戻ってみよう」

美穂が頷いて歩き出す。


(俺の家か。俺の家には親父とお袋がいるはずだ。無事だといいけど。いや、あの状況で家にいたら…いや、考えるな。とりあえず美穂と奈々を連れて行くしかない)


学校に戻る途中、何体かのゴブリンに出くわした。俺は美穂の肩から飛び降りて次々と仕留めた。レベルはもう5だ。ゴブリン程度なら苦戦しない。石も忘れずに捕食する。


学校が見えてきた。

だが、門の前に作られていたバリケードが壊されている。机や椅子が散乱している。

「嘘…」

美穂が足を止める。

「バリケードが壊されてる。学校も荒らされてる」

奈々が顔を青くする。

「昨日の夜にモンスターの襲撃を受けたんだ。昨日もここで寝ていたら、私たちもやばかった」

美穂がぼそりと言う。

「うん…ピーちゃんが連れ出してくれてよかった」

奈々も頷く。


俺は気配察知を発動する。学校の中にはモンスターの気配も山本たちの気配もない。

(山本たちはどうなったんだ。逃げたのか、それとも…)


「ピー」

(大丈夫だ)


「ピーちゃんがいるから大丈夫だよね」

美穂が俺を拾い上げて強く抱きしめる。

「じゃあ、入ろう。気をつけて」


二人は恐る恐る学校の中に入っていく。俺はいつでも戦えるように体を膨らませて警戒する。

廊下は荒れている。ガラスが割られ、ロッカーが倒されている。壁に血痕が残っている。俺は美穂に見せないように体で視線を遮った。


「山本君たちは…いないね」

美穂が周囲を見回す。

「モンスターも…見当たらないけど」

奈々が気配察知を発動する。

「職員室は一階だよね」


職員室に入った。中は散らかっているが、机の上に書類が残っている。美穂が名簿を探し始める。

「3年3組…3年3組…あった!」

美穂が名簿を開いて指を走らせる。

「小野…小野…ここだ! 小野秀治。住所は…」

美穂が住所を読み上げる。

(俺の家だ。住所を聞いて、なんか変な気分だな)

「えっと、ここからだと…電車で三つ目の駅の近くだね」

奈々が地図を確認する。

「結構遠いな。でも歩けば行ける距離だ」

美穂が名簿をコピーして持ち帰る。


「よし、わかったよ。秀治君の家に行こう」

美穂が決意した顔で言う。

「うん。小野君の家に向かおう」

奈々も頷く。


二人は急いで学校を後にする。学校を出る時、美穂が一度振り返った。

「学校も…もう安全じゃないんだね」

「うん。でも大丈夫。ピーちゃんがいるし、私たちもスキルを持ってるし」

奈々が美穂の手を握る。

「そうだね。三人で頑張ろう」

美穂が俺を肩に乗せて歩き出す。


(俺の家に向かって歩いている。俺の家に美穂が来る。何か不思議な気分だ。生きていたら絶対にあり得なかった状況だ。好きな子を俺の家に連れて行くなんて。でも俺はスライムだ。ただのペットだ。情けないけど、でも、美穂を守れるならそれでいい)


ポヨン。

ポヨン。

俺は美穂の肩で揺られながら、廃墟の街を歩いていく。

遠くで獣の咆哮が聞こえる。空の亀裂はまだ塞がっていない。

この世界がどうなるのかわからない。でも、美穂と奈々と一緒に歩いている限り、俺は諦めない。

俺は最弱スライムじゃない。美穂のスライムだ。そして、最強の護衛になる。


「ねえピーちゃん、秀治君の家に着いたら、何て言おうか」

美穂がぽつりと言う。

「秀治君のお母さんに、秀治君は無事ですかって…本当に無事だといいな」

「大丈夫だよ美穂。小野君は絶対生きてるって」

奈々が励ます。

「そうだよね。うん、そうだよね」

美穂が前を向く。


(……俺はここにいるよ美穂。俺はここにいるんだけどな)


「ピー」


小さく鳴いて、俺は美穂の肩で揺られた。

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