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好きなあの子にテイムされた俺、最弱スライムだけど彼女を守るためなら最強になります!  作者: ミコジ


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好きな人を探す旅

普通の日常が壊れた世界。昨日まで一緒に笑っていた同級生が、自暴自稜になり鬼畜に落ちてしまう世界。

俺は改めて決意した。モンスターからも、人間の悪意からも、美穂を守ると。

俺の体に頭を埋めて眠っている美穂の寝顔を見つめながら、長い夜を過ごした。


朝が来た。

美穂が身じろぎをして、ゆっくりと目を開ける。

「ん…朝…?」

続いて奈々も起きてきた。黒髪のショートカットにそばかすのある可愛らしい寝起きの顔をこすっている。

二人同時に俺を見て、ふんわりと笑った。


「ピーちゃん、ありがとう。すごくよく眠れたよ」

美穂が俺を両手で包み込んで頬ずりする。

「うん、温かくて安心した。ありがとうピーちゃん」

奈々も隣から俺を撫でてくれる。

(いやいや、俺はただの枕だよ。それに二人とも朝から顔が近い。心臓に悪いって)

「ピー」


二人が起き上がったところで、俺は『異空間』からパンとジュースを取り出して並べた。

「わっ、また出してくれたの?」

「ピーちゃん、ほんとに便利だねえ」

奈々が感心しながらパンを手に取る。

(栄養的には色々食べた方がいいんだろうけど、賞味期限がある食べ物を先に消費しないとな。この状況がいつまで続くかわからないし)


二人がパンをかじりながら、ぽつりぽつりと話し始めた。


「美穂が無事でよかったよぉ。もしピーちゃんがいなかったら、美穂の好きな人に合わせる顔がなかったよ」

奈々がパンを抱えたまま言う。

俺の体がピクリと揺れた。

(何? 美穂、好きな男がいたのか?)


美穂が真っ赤になって奈々の肩を叩く。

「何言ってるの! 私が片想いしてるだけで、付き合っても無かったんだから!」

「えー、彼も絶対美穂のこと好きだったって。視線見てたらわかるもん。いつも美穂のこと追ってたじゃん」

奈々が口の端を上げて意地悪く笑う。


俺はがっくりと体が潰んだ。

(そうか。両片思いの相手がいたんだな。でも俺は美穂を守るのをやめないぞ。俺が美穂を好きだったのは事実なんだからな)


美穂が視線を落として、ボソリと言った。

「秀治君、無事だといいな。会いたいよ」

(えっ?)

俺の体が大きく揺れた。

(今、秀治君って言ったか?)


奈々が頷く。

「小野君は無事だよ。あんな最低の男たちが生き残ってるのに、小野君がやられるわけないじゃん」

「だよね。秀治君ならきっと生きてるよね」

美穂が少しだけ笑った。


(マジか! 絶対俺のことだ。俺の視線ってみんなにバレてたのか! 恥ずかしい!)

俺の体がプルプルと激しく震えた。

(けどこれでピーちゃんが俺ってバレるわけにはいかなくなったぞ。バレたら俺が死んだこともバレて美穂を悲しませてしまう)


「ピーちゃん、どうしたの? なんか震えてるよ」

美穂が心配そうに俺を覗き込む。

(いや、何でもない。ただ自分の愚かさを反省してただけだ)

「ピー」


美穂が立ち上がって、周りを見回した。

「ここにはもう居られないよね。奈々も一緒に行くでしょ?」

奈々が頷く。

「うん。私のスキルは戦闘向きじゃないけど、気配察知って言って、隠れてる生き物がわかったりするから、移動には役に立つよ」

「へえ、すごいね奈々、じゃあ三人で頑張ろう」

美穂が手を差し出す。奈々がその手を握った。

「うん!」


二人が立ち上がって歩き出す。俺は美穂の肩に乗って周囲を警戒する。

(二人になったから、もっと食料を集めておきたいな。途中コンビニとかスーパーがあったら誘導するか)


廊下を歩き、バリケードの方に向かう。出口に近づいた時だった。


「おい! どこ行くんだ!」

後ろから山本の声がした。俺は即座に美穂の肩から飛び降りて、山本に向かって体を膨らませた。


「ピーーーッ!!」


山本が「ひぃっ!」と悲鳴を上げて、バリケードの隙間に飛び込んでいった。ガタガタと机が揺れる音が聞こえる。

(ざまあみろ。昨日の今日で俺に睨まれて平気なわけないだろ)


「ピーちゃんの方が強いし優しいもん」

美穂が鼻を鳴らして言った。奈々も頷く。

「ほんとそう。ピーちゃん、かっこいいもん」


バリケードの隙間から外に出る。朝日の光が眩しい。でも街は変わらない廃墟のままだ。崩れたビル、砕かれたガラス、遠くで聞こえる獣の咆哮。


奈々が目を細めて、左右を見回した。

「気配察知…うん、近くにモンスターはいないみたい。いけるよ」

「よし、じゃあ行こう」

美穂が歩き出す。


奈々が明るい声で言った。

「よし、小野君を探しに行こうか!」

美穂が頷く。

「そうだね。会えたらいいな」


(やばい。俺を探したって絶対に見つからないのにどうしよう)

俺は美穂の肩の上で激しく跳ねた。

「ピーーーッ!!」

反対の方向に体を向け、引っ張るような意思表示をする。


美穂が俺の体をそっと撫でて、クスッと笑った。

「ピーちゃん、嫉妬してるの?」

(違う! 嫉妬じゃない! 俺はお前を悲しませたくないだけだ!)


「ピーちゃんも好きだから大丈夫だよー」

美穂が呑気に言う。のんきな奴だ。

(俺が好きだって? そりゃそうだよ。俺は小野秀治だ。お前のことが好きだった高校生だ。でも今はただのスライムだ。お前が探しに行く俺は、ここにいるのに)


「ピーーーーッ!!」

俺はもう一度、力いっぱい鳴いた。でも美穂も奈々も笑っているだけだった。


(わかったよ。探したければ探せばいい。ただし、俺は俺のやり方で美穂を守る。それだけは譲らない)


2人は廃墟の街を歩き始めた。

奈々の気配察知が効いているのか、モンスターのいないルートを選んで進んでいく。途中、コンビニを見つけた俺は美穂の肩から飛び降りて、入り口を押した。


「あ、ピーちゃんここに入りたいの?」

美穂がドアを開けてくれる。俺は素早く店内に入り、『異空間』に食料を放り込んでいく。


「すごい、水もお米もあるよ。ピーちゃん、これ全部持てるの?」

奈々が目を丸くする。

「ピー!」

(持つのは異空間だ。アイテムボックスは便利だな)


「助かるー。私たちだけじゃとても持てないからね」

美穂が安堵する。


コンビニを出て、また歩き始める。

「ねえ奈々ちゃん、学校の他に避難所とかないかな」

「うーん、大きい公園とかどうかな。開けた場所なら気配も察知しやすいし」

奈々が顎に手を当てて考える。


(公園か。開けた場所はモンスターにも見つかりやすいけど、奈々の気配察知があるなら悪くないか)

俺は美穂の肩の上でプルンと揺れた。


「ピーちゃんはどう思う?」

美穂が俺に聞く。

「ピー」

(肯定だ。公園にしよう)


「じゃあ、公園の方に行こうか」

美穂が決めて、歩き出す。


しばらく歩くと、奈々が足を止めた。

「待って。気配がある。二つ…いや、三つ。右の路地の奥」

美穂が緊張して声を潛める。

「モンスター?」

「うん。でも弱い気配。ゴブリンくらいかな」

(ゴブリンなら俺一人でいける。レベルも上がってるしな)


俺は美穂の肩から飛び降りて、地面に着地した。


「ピーちゃん、また一人で行くの?」

美穂が心配そうな顔をする。

「ゴブリンくらいなら…」

奈々が言いかけて、ハッとした。

「あっ、一つ気配がこっちに向かってきてる!」


路地の角から、緑色の肌のゴブリンが飛び出してきた。手には錆びたナイフ。俺に気づいてニタリと笑う。

(来いよ。今の俺ならお前くらい楽勝だ)


俺は体を針の形に変えた。


「ピーちゃん気をつけて!」

美穂が叫ぶ。


俺は地面を蹴って跳ねた。ゴブリンの懐に飛び込み、針のような体で眉間を突き刺す。

「ギャッ!」

ゴブリンが倒れる。残り二体が飛び出してきたが、俺は連続で跳ねて次々と仕留めた。


「すごい! ピーちゃん強い!」

奈々が目を輝かせる。

「ピーちゃん、怪我はない?」

美穂が駆け寄って俺を拾い上げる。

「ピー」

(元気だよ。平気平気)


ゴブリンの死体が煙になって消え、緑色の石が三つ残った。俺は美穂の手から飛び降りて、石を次々と体内に取り込んだ。


【レベルが3に上がりました】

【スキル『体当たり』を習得しました】


(お、新しいスキルだ。体当たり。今まで通り跳ねてぶつかるだけの技だと思うけど、威力が上がったってことか)


「ピーちゃん、またレベルアップしたの?」

美穂が首を傾げる。

「ピー!」

「すごいねえ。私も戦えるスキルがあればなぁ」

美穂が羨ましそうに言う。


(美穂のスキルはテイムだ。俺をテイムしてくれた。だから俺が美穂の代わりに戦う。それでいいんだ)


「さあ、公園まであと少しだ。頑張ろう」

美穂が俺を肩に乗せて歩き出す。奈々も隣に並ぶ。


(美穂。俺はお前の好きな人には戻れない。でもお前を守ることだけは誰にも負けない。だから安心して歩いてくれ。俺がいつもそばにいるから)


ポヨン。

ポヨン。

俺は今日も、好きな女の子の肩で跳ねている。

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