愛のシールドバッシュ
今日も富士山に向けて進んでいく。
異空間の容量が増えたから、途中で食料や物資を調達しながら行く。コンビニや小さなスーパーを見つけては俺が中に入り、缶詰やレトルト食品、水やお茶をどんどん放り込んでいく。アイテムボックスは便利だ。時間も止まるようになったから賞味期限も気にしなくていい。
美穂と奈々は楽しそうに話している。
「ねえ、富士山って何日くらいで着くかな?」
「歩きだと一週間くらいじゃない? でも途中で車見つかれば早いかも」
「車運転出来ないんだった…」
二人は笑い合っている。仲がいいな。美穂と奈々は前から仲良かったけど、愛とはまだ少し壁があるようだ。愛も人見知りらしく、積極的に話しにいくタイプじゃないみたいだし。
そんな事を考えながら愛を見ていると、愛もチラチラとこっちを見ているのに気づいた。
俺が「ピー」と鳴くと、すぐに目を逸らす。
(うーん、なんだ?)
国道246号をずっと西に歩いていく。この道沿いには店やホテルもいっぱいあるから便利だ。大型のスーパーに寄ってみたが、入り口が壊されてもう何も残っていなかった。先に誰かが全部持ち出したんだろう。
奈々が周囲を見回しながら言った。
「人もモンスターもいないね」
「ピーー」
俺も同意する。
美穂が顎に手を当てて考える。
「生き残ってる人は一ヶ所に集まっているんだろうね。モンスターも獲物がいなければどこかに探しに行くだろうし」
(確かに。この辺りは誰もいない。人間が集まってる所にはモンスターも集まる。だから人がいない場所は安全だけど、モンスターもいない。逆に考えると、人がいる場所に行けばモンスターにも遭遇しやすいってことだ)
俺はもっと捕食してレベル上げたいし、スキルも取っておきたい。戦えるのは俺だけなんだから、もっと強くならないと。美穂を守るために。奈々を守るために。愛を守るために。
その時、気配察知に反応があった。奈々も同時に足を止めた。
「美穂待って。気配がある。3つ‥建物の影から」
「モンスター?」
「うん。大きい気配」
建物の影から、黒い毛の大きな犬モンスターが3匹現れた、牙を剥き出しに唸り声を上げている。
「ピーちゃん!」
美穂が悲鳴を上げる。
愛が即座に盾を構えて美穂と奈々の前に出た。
「私の後ろにいてください!」
「愛ちゃん!」
奈々が驚いた顔をする。
俺は愛の前に飛び出して、1匹目に向かって跳ねた。体を広げて包み込んでいく。『捕食』を発動する。
だが他の2匹は俺が1匹目を捕食している間に目もくれず美穂たちの方へ走っていった。
(しまった! 1匹ずつじゃないと無理だ。3匹同時に来たらやばい)
「愛ちゃん気をつけて!」
美穂が叫ぶ。
1匹が牙を剥き出しにして飛びかかってきた。愛が盾を正面に構えて突き出す。ドスッという鈍い音が響き、犬の牙が透明な盾に阻まれた。
「シールドバッシュ!」
愛が叫んで盾を前に押し出す。犬がバランスを崩して後退した。
(すごい。愛ちゃん、自然にシールドバッシュを会得してる)
俺は1匹目の捕食を完了して、すぐに2匹目に飛びかかった。体を広げて包み込む。
その間、愛は残った1匹と対峙している。盾で攻撃を防ぎ、犬が隙を見せたら盾で押し返す。堂々とした構えだ。柔道部で鍛えた体幹の強さが活きている。
2匹目の捕食が終わり、俺はすぐに愛と戦っている犬に飛びかかった。犬は俺の接近に気づいたが、愛の盾に気を取られていて避けられなかった。体を広げて包み込み、捕食する。
3匹とも捕食完了。
【レベルが11に上がりました】
【気配察知がLV2に上がりました。探知範囲が拡大しました】
(おお、気配察知の範囲が広がった。これでより遠くのモンスターにも気づけるぞ)
「愛ちゃんすごい! かっこよかった!」
美穂が愛に駆け寄って抱きつく。
「本当、すごかったよ愛ちゃん!」
奈々も抱きつく。
愛は戸惑いながらも、少し照れたように笑った。
「いえ…ただ盾を押し出しただけですけど…」
「いやいや、あの犬すごく怖かったのに平気だったじゃん!」
奈々が興奮して言う。
「いや…怖かったですけど…でも美穂さんと奈々さんを守らないといけないって思ったら体が動いて…」
「愛ちゃん!」
美穂が愛の手を握る。
「もうさん付けしないで。美穂でいいよ」
「うん、美穂、よろしくね!」
「はい! よろしく!」
(少しは仲が深まったかな。良かった)
気配察知の範囲が広がったおかげで、周囲の安全確認がしやすくなった。俺たちは西へ歩き続ける。
厚木の町まで来た。この先は山道になりそうだ。日も暮れかけている。
「今日はこの辺でホテルに入ろうか」
美穂が提案する。
「うん。山道を夜歩くのは危ないもんね」
奈々が頷く。
駅前のビジネスホテルを見つけた。いつものように俺が隙間から鍵を開けて中に入る。
部屋に入って、俺は異空間から弁当とお茶を出した。
三人が順番に風呂に入った後、俺は異空間から大量のコンビニスイーツとジュースを取り出してテーブルに並べた。シュークリーム、ケーキ、プリン、チョコ、アイス、ジュースの数々。
「わあ! すごい!」
奈々が目を輝かせる。
「こんなに食べきれないよ!」
美穂が笑う。
(これでガールズトークでもして仲良くなってくれ。俺は見張りだ。俺は寝ないから安全を確保する)
三人がスイーツを食べ始めた時、愛が真顔で俺を見て言った。
「ピーちゃんさん、私たちを太らせて食べる気ですか?」
俺の体が激しく震えた。
(そんなわけあるか!)
「ピーーーーーッ!!」
全力で抗議する。愛が冗談だと言うように小さく笑った。
「冗談です。ごめんなさい」
「愛ったら冗談きついよ!」
奈々が笑いながらプリンを頬張る。
美穂が俺を撫でてくれる。
「ピーちゃんはそんなことしないよ。ね?」
「ピー!」
(当たり前だろ。お前たちを食べるわけないだろ。お前たちを守るためにいるんだ)
美穂が微笑んで、俺をそっとテーブルの上に置く。
三人はスイーツを食べながら話し始めた。
「ねえ愛ってどこに住んでたの?」
「渋谷の少し南の方です。学校まではバスで通ってました」
「へえ結構近いんだね」
「柔道部だったんだよね。強かったの?」
「いえ普通です。ただ体を鍛えるのが好きで…」
(うん、いい感じで仲良くなれそうだな)
俺はプルプル震えながら3人を見守っていた
「ピーちゃんって‥気持ちいいの?」奈々がいきなりぶっ込んできた
美穂が顔を赤くする
俺のプルプルが激しくなった
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