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文化祭の様子がおかしい4

 文化祭当日。

 朝から校内は、多くの生徒や来校者で賑わっていた。

 そんな中俺たちの教室の前には、大きな看板が掲げられている。


『異世界体験型カフェ』


 ……まあ、名前だけなら悪くない。


 問題は、その下に書かれたものだった。


 一覧表。


『宇宙人』

『魔法少女』

『王女』

『騎士』

『風紀委員』

『体育教師』


「……」


 俺は田中を見る。


「本当にこれでよかったのか?」


「はい」


 田中が答える。


「分かりやすくて素晴らしい看板です」


「いや、そういう問題じゃなくて……」


 教室の扉を開ける。


「いらっしゃいませ!」


 高橋が元気よく声を上げた。

 魔法少女の衣装を着ている。


「……思ったより似合ってるな」


「本当!?」


「うん」


 そう言うと、高橋が嬉しそうに笑った。

 その隣では、佐々木が宇宙人の格好をしていた。

 銀色のアルミホイルを体に巻いている。


「ようこそ、地球人」


「お前、本当にそれでいいのか?」


「ああ。完璧だ」


「アルミホイル巻いただけだぞ」


「宇宙服だ」


「どう見てもアルミホイルだろ」


「地球人にはそう見える」


「その設定いつまで擦るんだよ」


 その隣には、転校生が立っていた。

 金色の長い髪に、王女を思わせるドレス。


「……」


「?」


転校生が不思議そうにこちらを見つめる。


「いや」


 俺は改めて転校生を見る。


「その服、似合ってるな」


「本当ですか?」


「うん。普通に王女っぽい」


 転校生は少し嬉しそうに微笑んだ。


「ありがとうございます」

「あなたの騎士姿もかっこいいです」


 そう言われて、俺は自分の服を見る。

 白いシャツに黒いベスト。

 転校生が用意したらしい、よく分からない装飾が付いている。


「これ?」


「はい」


 転校生は俺をじっと見つめる。


「……なんだか、前世を思い出します」


「そ、そうか」


 少し照れる。

 悪い気分ではない。


「前世の俺って、こんな感じだったのか?」


「はい」

「前世のあなたも、とてもかっこよかったです」


「……」


「……」


 高橋が割り込んでくる。


「何してるの?」


「…別になんでもない」


「ふーん」


 高橋が俺を見る。


「私のバディなのに」


「だからバディじゃないって」


「……」


「なんで不満そうなんだよ」


「別に」


 高橋はぷいっと顔を背けた。


「……まあ、いいけど」


 すると佐々木が現れた。


「宇宙からの通信だ」


「また?」


「そうだ」


 佐々木が画面を見る。


「これは……」


 すると突然。

 教室中の照明が消えた。


「え?」


 床に描かれた魔法陣が光り始める。


「高橋」


「え?」


「お前、何かした?」


「してない!」


「本当に?」


「本当に!」


 魔法陣がどんどん光を強くしていく。


「まずい!」


 高橋がステッキを構える。


「魔力が勝手に……!」


「どういうこと!?」


「制御できない!」


「ええ!」


 次の瞬間。

 視界が真っ白になった。

 ――そして。


「……」


 俺は目を開けた。


「…………どこだ、ここ」


 周囲を見渡す。

 銀色の壁。

 見たことのない機械。

 丸い窓の向こうには――

 宇宙。


「…………」


「宇宙船?」


 隣を見る。

 佐々木が立っていた。


「だから言っただろ」


「何を?」


「宇宙から通信が来たって」


「……今は信じるしかないな」


 周りを見ると、高橋、転校生、田中、山田先生もいた。


「お前らも来たのか……」


「どうやら全員飛ばされたようですね」


 田中が冷静に周囲を見る。


「ちなみに」


 山田先生が窓の外を見る。


「宇宙でもランニングはできるのか?」


「できるわけないだろ」


 そのとき。

 宇宙船の奥から、誰かが歩いてきた。

 銀色の服を着た謎の宇宙人。


「……ようやく来たか」


 全員が黙る。


「君たちに伝えなければならないことがある」


「……」


 宇宙人は俺たちを見る。


「この地球には――」

「重大な危機が迫っている!!」


「……!」


 佐々木が息を呑む。


「やはり……」


 宇宙人は続ける。


「そして君たちは――」


 その瞬間。


「待って!」


 高橋がステッキを構えた。


「魔力が止まらない!」


「え?」


「危ない!」


――ドンッ!!


「うわあああああ!!」


 高橋の魔法が暴発した。

 宇宙人が吹き飛んでいく。


「え?」


「…………」


「…………」


 宇宙人が壁に激突した。


「…………」


 沈黙。

 俺は呆然と宇宙人を見る。


「…………」


「……高橋」

「お前……」


「ご、ごめん」


 俺は頭を抱える。


「絶対あいつなんか重要なこと言ってたって!!」


「でも仕方ないじゃん!」


「仕方なくない!」


 佐々木が宇宙人に駆け寄る。


「大丈夫か!?」


「……」


「宇宙人?」


「…………」


「生きてるよな? 死んでないよな?」


「………反応がない」


「お前、何の話してたんだよ!!」


 結局。

 俺たちは再び魔法陣に巻き込まれ――

 教室へ戻ってきた。


「…………」


「…………」


「…………」


 時計を見る。

 文化祭開始から、三時間経っている。


「……何だったんだ、今の」


 誰も答えなかった。

 そして。


「お客さんが、全然来てません」


 田中が呟く。


「え?」


 俺は教室の外を見る。

 他のクラスには人が溢れている。

 しかし、俺たちの教室だけ。

 ガラガラだった。


「……」


 田中が集計表を見る。


「現在の売り上げ、クラス最下位です」


「…………」


 佐々木が呟く。


「なぜだ」


「そりゃそうだろ」


 宇宙船を置いて。

 魔法陣を描いて。

 王女が接客して。

 風紀委員が客を注意して。

 体育教師がランニングさせて。

 挙句の果てに、店員が宇宙に飛んでいったんだぞ。


「誰が来るんだよ」


 俺は椅子に座る。


「……もう帰りたい」


 すると高橋が隣に座った。


「でも楽しかったよね?」


「……まあ」


 転校生も微笑む。


「私も楽しかった」


「……うん」


 佐々木が宇宙船を眺める。


「来年はもっと本格的な宇宙船を作ろう」


「来年もやる気なのかよ」


 田中が眼鏡を押し上げる。


「来年こそ風紀を守ります」


「今年も守れよ」


 山田先生が拳を握る。


「来年こそ売り上げ一位だァ!!」


 俺は笑った。

 売り上げは最下位。

 文化祭としては、大失敗だろう。

 だけど――


「……まあ、悪くなかったか」


「ええ」


高橋が呟く。


「高校生の文化祭で大切なのは記録なんかじゃない」「一番大切なのは……思い出よ」


「…そうだな」

「高橋」


「何?」


「とりあえずお前は警察に行こうか」


「………」


こうして、俺たちの文化祭は幕を閉じた。

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