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幼馴染の様子がおかしい

「私、魔法少女に選ばれたの」


 教室に入った俺を待っていたのは、幼馴染の高橋だった。


「……そう」


「反応薄くない?」


「昨日、佐々木から『俺は宇宙人だ』って言われたからな」


「ああ…」


 高橋は納得したように頷いた。


「それなら仕方ないね」


「納得するなよ」

「意味わかんないだろ」


 高橋は鞄の中を漁る。


「でも、私の話は本当だから」


「はいはい」


「本当だってば」


「じゃあ証拠見せて」


「いいよ」


 高橋は鞄から一本の棒を取り出した。

 ピンク色の棒。

 先端には星が付いている。


「………」


「魔法のステッキよ」


「それ昨日、駅前の雑貨屋で見たぞ」


「違う」


「値札ついてるけど」


「………」


 高橋は値札を剥がし、ステッキを握り直した。


「これは……気分転換用の魔法のステッキ」


「ややこしいな」


「本物はこっち」


 そう言って、高橋はもう一本取り出した。

 今度は青色。

 先端には月が付いている。


「なんで二本あるんだ?」


「予備」


「魔法少女に予備って必要なのか?」


「必要だよ」


「なんで?」


「一本壊れたら困るから」


「傘みたいに言うな」


 高橋は周囲を確認すると、俺の耳元に顔を近づけた。


「実は昨日、謎の妖精に会ったの」


「へえ」


「『あなたには世界を救う使命があります』って」


「へえ」


「だから私、今日から魔法少女」


「そうなんだ」


「もっと驚いてよ!」


「驚いてるよ」

「お前の頭にな」


 高橋は不満そうに頬を膨らませる。


「じゃあ、見せてあげる」


「何を?」


「変身」


「ここで?」


「うん」


「学校だぞ?」


「うん」


「やめとけ」


「どうして?」


「どうしてって……」


 俺は教室を見渡した。

 クラスメイトの何人かがこっちを見ている。


「恥ずかしいだろ」


「大丈夫」


 高橋は自信満々にステッキを掲げた。


「誰も見てないから」


「めちゃくちゃ見てるぞ」


「気のせいだよ」


「周り見えてないのか?」


 高橋は目を閉じる。

 そしてステッキを胸の前で構えた。


「……光よ」


「おい」


「我が身に宿りし――」


「やめろ」


「魔力よ――」


「高橋」


「変身!」


 その瞬間。

 教室の電気が消えた。


「………」


 クラス中が静まり返る。


「成功ね」


「ただの停電だろ」


「違う!」


 高橋がステッキを振る。

 すると、ステッキの先端から小さな光が飛び出した。

 それはふわふわと宙を漂い、俺の目の前までやってくる。


「……え?」


 俺は思わず手を伸ばす。

 光が指先に触れる。

 その瞬間。


 パッ。


 教室の電気がついた。


「……………」


 俺は絶句する。

 高橋が得意げに笑う。


「どう?」


「………」


「本物でしょ?」


「………」


 俺は何も言えなかった。

 昨日は宇宙人。

 今日は魔法少女。

 流れ的に、高橋も佐々木と同じでなにかに影響を受けているだけだと思っていた。

 しかし、こいつは本当に魔法まで使ってきた。


「……マジかよ」


 高橋は満面の笑みを浮かべる。


「だから言ったでしょ?」


「………」


 俺は頭を抱えた。

 自称宇宙人に魔法少女。

 少なくとも俺のクラスには、普通じゃない奴が二人いる。

 このままだと俺の平穏な学校生活が、崩れてしまう。


 ――そんなことを考えていた俺の背後で、佐々木が呟いた。


「やっぱりこの星、侵略されてるな」


「お前は黙ってろ」

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