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修学旅行の様子がおかしい1

 体育祭からしばらく。

 俺たちの学校では、次の行事について話し合われていた。


「さて、お前ら」


 ホームルームの時間。

 山田先生が黒板に大きく文字を書く。


『修学旅行』


「……」


 俺はその文字を見つめる。

 そして、思い出す。

 文化祭では宇宙に飛ばされた。

 体育祭では先生が競技に乱入し、校長がルールを変更し、神崎が壊れた。


 だからこそ。


「修学旅行か……」


「流石に、これは大丈夫だろ」


「そうですね」


 神崎が頷く。


「一般的な修学旅行は、観光、宿泊、集団行動などを目的とした学校行事です」

「一般的に考えれば、おかしなことが起こる確率は低いでしょう」


「お前が普通のこと言うと安心するな」


「私はいつも正常ですよ?」


「……本当に?」


「はい」


 神崎は自信満々に頷いた。

 いったいどこからその自信がくるのだろうか。


「では早速、旅行先の気温、降水確率、混雑状況、交通機関の遅延率などを分析します」


「やっぱ普通じゃないな」


 そのとき、山田先生が黒板を叩いた。


「行き先を発表するぞォ!!」


「どこですか?」


「京都だァ!!」


「おお……」


 教室から歓声が上がる。

 京都。

 寺や神社。

 歴史的な街並み。

 食べ歩き。

 まさに修学旅行といった感じだ。


「めっちゃいいじゃん」


 俺も少し楽しみになってきた。


「ということで、まずは班決めだ!」


「……」


 その瞬間。

 教室の空気が変わった。


「班?」


 高橋が俺を見る。


「班行動、楽しみね」


「いや、まだ何も決まってないからな」


「バディだから」


「まじでいつまで擦るんだよ」


「私も、あなたと同じ班がいいです」


「レイナまで……」


「修学旅行ですから」


「理由になってる?」


「前世でも、旅行は一緒でした」


「前世の俺たち、どれだけ一緒に行動してたんだよ」


「たくさんです」


「本当に便利だな、前世設定……」


 すると佐々木が手を挙げた。


「俺は一人がいい」


「珍しいな」


「京都には宇宙人がいる可能性があるからな」


「ないだろ」


田中が手を挙げる


「私も一人がいいです」


「どうして?」


「風紀を乱してる輩を排除しなければいけませんから」


「お前は何をしようとしてるんだよ」


「まあそんなことより」


「そんなことで済ませるな」


「班行動には規則を設ける必要があります」


「規則?」


「はい」


 田中は黒板に向かう。


『修学旅行班行動規則』


「第一条、集合時間を厳守すること」


「まあそうだな」


「第二条、班から勝手に離れないこと」


「普通だな」


「第三条、異性との不要な接触を避けること」


「……」


 俺は高橋とレイナを見る。


「お前ら、絶対これ守れないだろ」


「なぜですか?」


 レイナが首を傾げる。


「私は守りますよ」


「じゃあ高橋は?」


「私も守る!」


「ならいいけど」


 レイナが俺を見る。


「でも同じ班なら問題ないですよね?」


「何が?」


「同じ班ってことは、一心同体ってことです」


「つまり接触にはならない……と?」


「はい」


「屁理屈だろ」


 そのとき。


「待てェ!!」


 山田先生が立ち上がった。


「修学旅行といえばァ!!」


「何ですか?」


「自由時間だァ!!」


「先生、何か分かってるんですか?」


「もちろんだ!」


 山田先生は黒板に大きく書いた。


『自由時間』


「この時間に何をするかは自由だ!」


「まあ、そうですね」


「だから俺は――」


 山田先生が拳を握る。


「自由時間に生徒を走らせる!!」


「自由じゃないじゃん!!」


 珍しく高橋がツッコミを入れる。

 そこへ校長が入ってくる。


「諸君!」


「校長まで来た……」


「修学旅行に向けて、新しい校則を追加する!」


 田中が即座に振り返る。


「どのような校則でしょうか!」


「それはだな」


 校長が黒板に書く。


『旅行先では魔法を使わないこと』


 高橋が立つ。


「横暴です!」

「撤回してください!」


「いや、ダメだ!」


「なぜ?」


「どっか壊れたりしたらまずいから!」


「ぐうの音も出ない正論だな」


「はい」

「データ的にも彼女の魔法は危険です」

「校長の判断は正しいかと」


「ちょっと待って!」


「私の魔法が危ないみたいな雰囲気出さないでよ」


「危ないだろ」

「文化祭のこと忘れたのか?」


「そ…それは…」


「分かったら席に座れ」


「はい…」


 高橋が素直に席に座る。

 俺はその光景を見ながら、少しだけ笑った。

 前の俺ならこんな状況を見て、きっと頭を抱えていた。

 でも今は――


「…………」


 俺は黒板を見る。

 宇宙人。

 魔法少女。

 前世王女。

 風紀委員。

 データ人間。

 そして体育教師。


「……こいつらと修学旅行か」


 神崎とはあんな話をしたが、正直今までのことを考えると何かろくでもないことが起こることは分かってる。

 でも、不思議と嫌じゃない。


「楽しみになってきたな」


「本当ですか?」


 レイナがこちらを見る。


「ああ」


「では、修学旅行では私と一緒に――」


「私も!」


「だから、まだ班決めてないだろ!」


 こんな感じで、いつものように二人が言い争いを始める。

 佐々木は京都の宇宙人情報を調べている。

 田中は校長とともに修学旅行の校則を作っている。

 神崎は旅程の最適化を始めている。

 そして山田先生は――


「京都まで走って行くぞォ!!」


 今にでも走りたそうにしていた。


 このメンバーでの修学旅行。

 きっと、まともには終わらない。

 俺は不安を覚えつつ、しおりを作るのだった。

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