体育祭の様子がおかしい1
体育祭当日。
朝から校庭は、生徒たちの声で賑わっていた。
俺はテントの下でプログラムを確認する。
「開会式、玉入れ、障害物競走、綱引き、二人三脚……」
「普通だな」
俺は安心した。
流石に文化祭のような事件は起きないだろう。
「お前らァ!!」
「……」
嫌な声が聞こえた。
俺は振り返る。
そこにはジャージ姿の山田先生がいた。
「今日は待ちに待った体育祭だァ!!」
「先生、元気ですね」
「当然だ!!」
山田先生は拳を握る。
「俺はこの日のために生きてきたんだ!!」
「体育祭に人生懸けすぎだろ」
「勝つぞォ!!」
「先生は教師だから参加しないですよね?」
「甘い!!」
山田先生は笛を首にかける。
「俺も参加する!!」
「何の種目に!?」
「全部だァ!!」
「あんたは生徒じゃないだろ!!」
そのとき、校長がやってきた。
「諸君!」
「校長まで来た……」
「今年の体育祭から新しい校則を追加する!」
田中がすぐに駆け寄る。
「どのような校則でしょうか!?」
「競技には全力で参加すること!」
「当然ですね」
「違反した場合!」
校長が拳を握る。
「グラウンド10周!」
「100周じゃないんですか!?」
山田先生が驚く。
「今回は10周だ!」
「校長!! 甘すぎます!!」
「そこに文句をつけるのかよ……」
田中が真剣な顔で口を開く。
「では、私からも提案があります」
「何だね?」
「応援中の私語は禁止にしましょう」
「いいだろう!」
「体育祭なのに会話できなくなるだろ!!」
俺は頭を抱えた。
その横では、神崎がタブレットを見ていた。
「現在の優勝確率を計算しています」
「もう?」
「はい」
「どうなってるんだ?」
「我々のクラスは現在、優勝確率12%です」
「低いな」
「ただし――」
神崎が俺を見る。
「あなたがリレーに出場すれば18%まで上昇します」
「なんで俺なんだよ」
「このクラス内で平均以上の走力があるからです」
「へえ」
「ちなみに山田先生が参加すると80%まで上昇します」
「先生どれだけ強いんだよ」
「教師部門で過去五年間、一度も負けていません」
「すげーな山田先生」
そのとき。
「俺も出るぞ!」
佐々木が現れた。
「何に?」
「リレー」
「宇宙人なのに?」
「そうだ」
「宇宙人の身体能力を見せてやる」
神崎が佐々木を見る。
「あなたの走力では、優勝確率は13%までしか上がりません」
「低いな」
「地球人としては平均的です」
「俺は宇宙人だ!」
「証拠は?」
「ない」
「では、観測上あなたは地球人です」
「くっ……!」
「そこ勝負するところか?」
すると高橋がやってきた。
「私もリレー出る!」
「お前、魔法使うなよ」
「使わないよ」
「本当か?」
「……たぶん」
「信用できない」
「…というか」
俺は高橋からステッキを取り上げる。
「これはなんだ?」
「……応援用」
「持ち込み禁止だろ」
「な? 田中」
すると、田中が即座に反応する。
「校内への魔法道具の持ち込みは禁止です」
「でも体育祭だよ?」
「校則です」
「校長!」
「なんだね?」
「魔法少女のステッキは持ち込み禁止ですか?」
「当然だ!」
「危険だからな!」
「校長がまともなこと言った……」
「ただし!」
「え?」
「体育祭を盛り上げるためなら、一回だけ使用を許可する!」
「前言撤回。やっぱりまともじゃない」
高橋が嬉しそうにステッキを掲げる。
「やった!」
「絶対使うなよ」
「分かった!」
「返事だけは良いな」
しばらくして、転校生が俺のところへやってきた。
「すみません」
「どうした?」
「二人三脚、一緒に出ませんか?」
「え?」
「前世でも、一緒に走ったんです」
「二人三脚を?」
「はい」
「前世の俺たち何してたんだよ」
「もちろん、息はぴったりでした」
「……」
転校生が微笑む。
「今回も、きっと大丈夫です」
その瞬間。
「待って」
高橋が割り込んできた。
「二人三脚なら私と組めばいいじゃん」
「なんで?」
「バディだから」
「懐かしいなその設定」
「それにこの子と二人三脚なんて、絶対危ないよ」
転校生が高橋を見る。
「やっぱり…あなたは彼のことが好きなんですか?」
「違う!」
「では、なぜ?」
「バディだから!」
「その理由ではデータ的にも説明になりません」
神崎が会話に入ってきた。
「データ的に考えて、高橋さんが二人三脚をしたい理由は、恋愛感情による可能性が高いと思われます」
神崎がそう言うと、高橋の顔が真っ赤になる。
「余計なこと言わないで!」
「事実です」
「データにも表れています」
「データは禁止だから!」
俺はため息をついた。
「お前ら、せっかくの体育祭なんだから普通にしとけよ……」
そして、開会式が始まった。
校長が壇上に立つ。
「これより、第○回体育祭を開催する!」
「おお!」
「なお!」
「今年から新競技を追加する!」
「何ですか?」
「校長と生徒の校則暗唱対決だ!」
「体育祭でやるな!!」
俺の叫びが、青空に響き渡った。
こうして。
俺たちの体育祭は、始まった。




