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【28】王太子妃宮



――――第3王子宮


「ああんっ、リュカさま可愛い離れたくなぁいっ!でもユラさまも尊いんだよなでなでしたぁいっ!」

リュカさまにぎゅーっ、すりすり、リュカさまチャージッ!

「ロシェったら。でもね、ユラお義兄さまのためだもんっ!」

「リュカさまっ」

「ユラお義兄さまもロシェがいてくれたらとっても安心だと思うの!だからね、お願い!」

「リュカさまのお願いとあらばっ」


「ならとっとと行きなさい、ロシェ」

ぐぎぎ……っ、トーマスの容赦のないひと言。


「あと王太子妃さまになでなでなどしないように」

「ふぐぅっ」

まさかの先手を取られるとはっ。


「時間は守る!」

「ぐへっ」

俺は出発の5分前まで寝ていたい派なのだが……これも近衛騎士の宿命。


「では行って参ります、リュカさま」

「うん、ロシェ!頑張ってね!」

まるでエコーのように響き渡る俺のオアシス!!


「ロシェさま」

そして王太子妃宮へ向かう俺に声をかけてきたのはイルだ。グレーの髪に浅黒い肌、アメジストの瞳。耳は短く尖っている。地球で言えばハーフエルフなのかダークエルフなのか微妙なところだが、エレナさんにハーフエルフと言ったら殴られることだけは確かである。


「どうした?」

「いえ……その、建国祭にはデゼルトの使節団も来るのですよね」

「そうだな。でも安心しろ。イルたちはもううちの国民なんだ。デゼルトに渡しはしない」

「は……はい!」


「それじゃ、リュカさまのこと頼むよ。何かあったらトーマスさんもエレナさんもついてるからな」

「分かりました、ロシェさま」

「ああ」

イルにひらひらと手を振りつつ、俺はユラさまの宮へと急ぐ。


※※※


王太子妃宮を訪れればオメガの妃の宮らしくベータの男女の姿やオメガの侍従たちの姿も見える。


ここにアルファが出入りすることには細心の注意が払われる。もちろん王太子さまならすぐに入ることができるが。


「待っていたよ、ロシェ」

「ああ、今着いたよ」

王太子妃宮の入り口で待っていたのは専属近衛騎士エリックだ。ベータではあるがアルファに負けじと努力して専属になった同期である。エリックに案内され、ユラさまの元に顔を出す。


「ユラさま、お待たせいたしました」

「ロシェ!来てくれてありがとう。きっとロシェのことたから来る前にリュカさまにぎゅーしてきたんでしょう?」

「え……っ、何で」

「リュカさまがいつも嬉しそうに話してくれるもの」

最近は仲良くお茶もしてるからなあ。でもリュカさまが俺のリュカさま愛を語ってくれるのは……嬉しい。


「それにロシェは行く先々で人気なんだから」

ユラさまの言葉に頷くのはオメガの侍従たち。こちらにはデゼルト出身者のオメガたちも配属されている。互いに同郷と言うのはやはり心強いものだから。


「王太子妃さまから聞きました!」

「ロシェさまの伝説!」

侍従のオメガたちが目をキラキラさせて俺を見る。どちらもデゼルトの出身でゼンとリタ……あれ、こっちには3人いなかったか?お使いの途中かも知れんが……。


「俺の伝説?」


「王太子妃さまにくっついてきたデゼルトの侍女の話だよ」

「あー……そういや、追い返したな。最終的には王太子さま命令だけど」


「あの時からロシェはずっと私の憧れなのです。だから……建国祭も精一杯頑張ります!」

何この王太子妃、可愛すぎる。


「では俺も精一杯お守りいたします」

騎士の礼を返せば周囲から歓声が飛ぶ。


「……また王太子さまに叱られるぞ、ロシェ」

「……え?」

今の俺の所作騎士として完璧だったと思うんだけど。



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