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皇太子の婚約者候補から外されたので、完璧令嬢は本性隠すのやめました~捨てられた者たちがもう一度、意味を見つける物語~   作者: 春月もこ
第3部「自分が決めた道」

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第1話「覆面剣士の復活」

 ―――ドオォォォン‼


 三度目の爆音が響いた。

「西の城壁だ!」

 誰かの叫び声が聞こえる。

 雪を載せた木々がびりびりと震え枝の雪がばさりと落ちる。


「レティ、屋敷へ戻れ」

 ルシアンはレティシアを引き離し、真剣な眼差しで言う。

 屋根に積もった雪が一斉に崩れ落ちた。

「……嫌よ」

 全力で首を振るレティシア。


「は?」

 そこへ兵士が伝令にやってくる。

「ルシアン小隊長殿、緊急招集です!」

「了解、すぐに向かう」

 返事を聞くや否や、兵士は慌ただしく駆け去っていった。


「私も行く!」

 レティシアは剣を握り、すぐに駆け出す。

 あわてて後ろを追いかけるルシアン。


「だめだ、君は屋敷へ!」

 ルシアンは屋敷の方を指し、真剣な表情で訴える。


「私も戦える!」

 レティシアは少しだけ振り返り、叫んだ。

 止まるそぶりなど微塵もない。


 ルシアンは走りを早め、レティシアに並ぶ。

「だめだって‼危険すぎる!」

「いいえ!」

 横に並んで走るルシアンに大声で訴える。

「領主とエレオノールが帝都にいる今、少しでも戦える者が必要なはずよ!」

 そこへ再び――


 ―――ドオォォォン!

 轟音が響く。続いてガラガラ、と激しい音が続く。

「西の城壁が完全に崩れたぞ!」

「敵が来るぞ!」

 兵士たちが叫ぶ。


 二人は指令室へと続く階段を駆け上る。


「ほんとダメだって!師匠が許可しない!」

 ルシアンが今度はさらに強く叫び、言う。

 レティシアもつられて大声になる。


「誰の許可が要るのよ!」


 レティシアはぴたりと足を止め、きっとルシアンを見上げた。


「私がそう決めたのよ!」


 ルシアンはハッとする。


「私はもう、誰かに決められるだけなのは嫌」


 そして、ルシアンから渡された麻布で口元を隠し、外套のフードで銀髪をすっぽりと隠した。


「これでいいわ」

 覆面の下で、その薄紫色の目だけがきらりと輝く。

「これで私って分からないでしょ!さ、行きましょう!」


 その姿に、ルシアンは一瞬だけ目を見張った。

 再び走り出していくレティシア。


(覆面レティの復活か……!)


 ───そして心の中で思った。

(いや、絶対バレるだろ……)



 指令室は騒然としていた。

 多くの兵士が出たり入ったりしている。

 突然のことに兵士たちは慌て、バタバタと動きが激しい。そんな中、ガレスだけは妙に落ち着いて見えた。


 現在は第三騎士団が応戦していると伝えられた。


 二人を見ると、ガレスは片方の口角を少し上げた。

 そして近寄るなり、

「ルシアン、そいつは誰だ」

 と聞かれる。レティシアに緊張が走る。

(やっぱバレてる)

 ルシアンの答えがしどろもどろになる。

「えっと、さっきそこで初めて会いました!入隊希望者です!」

 ガレスが目を細め、見つめる。

「……そうか。怪我すんなよ」

 とだけ言って幹部兵士たちのもとへ戻っていった。


「バレなかったね」

 とほっとするレティシア。

 その言葉に驚くルシアン。

「いや、あれはバレてるだろ...」

 二人が言い合いしていると、ノエルが伝令をルシアンに伝えに来た。

「ルシアン小隊長、君と僕が外から回り込んで、第三騎士団と協力して挟み撃ちにする作戦だって」

 ふとノエルが覆面レティシアに気が付く。

「あれ?この人は?」

(バレるぞ…)

(バレるかしら…)

 二人は覚悟を決めた。しかし───

「見ない顔だね。新人?よろしく。僕はノエル」

「は、はい。よろしくお願いします」

 握手を求められ、応じるレティシア。

(バレてない…)

(うそでしょ、ノエル、貴方のお姉さんよ)


 そしてにっこりと言う。

「人手が足りないから、きみも来てよ!なんか…強そうだし」

 レティシアの耳元で必死に訴えるルシアン。

「だめだって…!」

 ルシアンの懇願をよそに、ノエルに向かってレティシアは返事をする。

「了解しました!」

 ルシアンは思わず苦笑した。

 ───ああ、この無鉄砲な感じ。


(昔のレティだ)

 懐かしさが胸をよぎる。そして同時に悟った。(もう、彼女は止まらない)

(ならもう、自分にできることは一つだけだ)

 ───絶対に守る。


 ルシアンは小さく息を吐いた。

「……分かったよ」




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