表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/54

第7話「幼き後継者 アルフォンス・ルーヴェル」①

 カーテン越しに入ってくる朝の光が、日増しに明るくなってくる。


(もうすぐ夏か)


 日が昇る時間が変わっても、アルフォンスは同じ時間に目が覚め、同じ手順で服を整える。


 それが正しいことだと、もう疑わなくなっていた。


「本日のご予定を申し上げます」


 幼いころからアルフォンスに従事している執事グレイスンの声は、いつもと変わらず静かで、揺れがない。


「午前は、元宮廷評議員のラウフェル子爵による『宮廷の仕組み』の講義がございます。続いて、王立財務院顧問イーゼン博士による『数術——基礎統計と財政概念』でございます」


 ただの予定のはずなのに、ひとつひとつが妙な重さを持て、アルフォンスの耳に流れる落ちる。


「昼食後は、わたくしが『宮廷作法』の復習を担当いたします」


 アルフォンスは上着のボタンを留めながら、それを聴いていた。


 一拍置いて、グレイスンは静かに続けた。


「その後、ヴァレンティーヌ公爵令嬢との最後のお茶会がございます。これが、本日の最後のご予定となります」


 グレイスンの声が止まり、沈黙が流れた。


 アルフォンスは静かに


「わかった」


 とだけ答えた。


 グレイスンの横を過ぎ、扉に手をかける。


「最後のお茶会」という言葉だけが、少し遅れて頭の奥に沈んだ。


 理由は分からないまま、それを確かめる前にアルフォンスは部屋を出た。






 ラウフェル子爵による『宮廷の仕組み』の講義、王立財務院顧問イーゼン博士による『数術——基礎統計と財政概念』、昼食後にグレイスンの『宮廷作法』。1日の予定は滞りなく進められた。


 アルフォンスは覚えがよかった。一度学んだことは必ずその日のうちに復習をして、納得できない所は質問をして全てを理解するようにつとめていた。


 まだ10歳になったばかりの皇太子。


 しかし自分に課せられた役割を理解し、正しくあろうと常に自分に言い聞かせていた。


 自分のしたいことよりも、やらねばならないことを。


 それがアルフォンスの指針となっていた。


 未来はもう決まっている。


 伏線化された未来。


 皇帝になること。


 そこに自分はたどり着かなければならない。


 何をしたいか、という問いはあまり意味を持たなかった。


 代わりに、何をすべきかが先に並ぶ。


 それをひとつずつ片付けていくと、一日が終わる。


 アルフォンスはレティシアの待つ中庭へ向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ