表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
皇太子の婚約者候補から外されたので、完璧令嬢は本性隠すのやめました~捨てられた者たちがもう一度、意味を見つける物語~   作者: 春月もこ
第3部「私が”わたし”を取り戻すまで」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

65/105

第8話「不器用な歓迎」

 ガレスは二人を見つけて近づいてきた。

「お前……」


 ルシアンは立ち上がる。

 ガレスを見て、懐かしさと申し訳なさがこみ上げてくる。

 見つめ合う師匠と弟子。

 幼かった自分に、剣を教えてくれた先生。


 強さとはなにか。

 また、弱さとはなにか。

 勝つ喜び、負けることの悔しさを教わった。

 見捨てずにいてくれた、数少ない大人。


「ただいま、先生」

 にっこりと笑うルシアン。


 ガレスはその笑顔にため息をつき、くるりと振り返った。

「体がなまっているはずだ。後で稽古場へ来い」


 そう言って去っていった。

 二人は顔を見合わせて、笑った。

「あれって嬉しいのよ、あなたのこと心配してたから。ああ見えて」


「やっぱそうだよね、ああ、こんなに笑ったの久しぶりだ」

 レティシアはルシアンの笑顔を見てまたうれしくなる。

(こんなルシアンにまた会えるなんて……)


(私の話はまたにしよう...)

 二人はしばらく笑った後、ガレスの待つ稽古場へ向かった。



 ――――――――――――――――――――


 アルフォンスは国政会議に出席していた。

 会議では領地経営や治安維持についての討議がなされている。


「では次――ヴァレリア領内で起きている絹の行商が襲われる件につきまして―――」

 ”ヴァレリア領”と聞いたとき、アルフォンスの指先がピクリと動く。


 レティシアの父、ヴィクトルが立ち上がる。

「私の方からご説明申し上げます」


 議会の出席者ひとりひとりの顔を見ながら話してゆく。


「先日、ある盗賊団が実行犯として逮捕されました。ヴァレリア領からラヴィエール公国に通じるルートを行く絹行商を狙っていた盗賊団です。被害はかなりのものでした。」


 宰相のエドモンの羽根ペンが止まる。


「かなりとはどれ程だ」

 皇帝クラウディウスが上座から問いかける。


「ラヴィエール公国向けの絹輸出量が三割減少しております。先日も抗議と改善要求が届きました」


「なんだと?」

 クラウディウスが前のめりになり声をあげる。


「皇帝直属特務騎士隊長ガレス・オルディンの報告によれば、ここ三年の間に同じ規模の被害があるようです」

 静かに報告書を読み上げるヴィクトル。


「それは...外交問題に直結する事案ではないか。なぜ今まで報告がなかったのか」

 首を横に振り、眉をひそめるクラウディウス。


 議会がざわめく。

「どうなってるんだ」「そんなことが発覚しないわけが無い」など声が上がる。


 ヴィクトルが続ける。

「宰相府は把握していたのでは?」


 一同が静まりエドモンを見る。


 エドモンは宰相府の秘書とともに書類をいくつか確認していた。そして頷いたあと、その場に立った。


「報告は受けていた──ようです。ですが、その被害額までは示されておらず、通常の治安案件とされていました。ですが──」

 エドモンは言葉を止める。


 固唾を飲む議員たち。


「ですがこのように報告が上がったのは、今回、特務騎士隊長として配属されたガレス・オルディン隊長の大手柄と思われます。」


「おおっ...」「本当だ」などの声が一斉にあがる。


「この様な人材を配置された皇帝陛下に尊敬の意を称します」


 次々に「その通りだ」「流石です」など大きな拍手や称賛の言葉が飛び交う。もはや報告に対する議論が続けられる雰囲気ではなかった。

 宰相はすっと椅子に腰掛ける。


「なるほど」

 ヴィクトルは静かに頷いた。


「では今後は宰相府を通さず、特務騎士隊から直接報告を受ける形にいたしましょう」


 議場が静まる。

 宰相の表情はにこやかに見える。

 だが机に置かれた指先だけが、一定の間隔で机を叩いていた。


 その様子を見ているヴィクトル──。


 アルフォンスもまた、その光景を黙って見つめていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ