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皇太子の婚約者候補から外されたので、完璧令嬢は本性隠すのやめました  作者: 春月もこ
第3部「見たことのない景色」

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第4話「向かう先は」

 レティシアがヴァレリア辺境領地へ向かってから、ふた月ほど経過した頃。


 アルフォンスは、婚約者候補の一人、カミーユ・ド・ラ・ロシュフォール公爵令嬢と皇宮の中庭でお茶を楽しんでいた。


 カミーユは黒髪で、切れ長の瞳が知性を感じさせる令嬢である。


 彼女は特に政務や外交に精通しているため、会話をしていても、彼女の聡明さや判断力には驚くことが多かった。


「最近の絹の貿易の物流ルートですが…」


 カミーユの話の内容は、主に政務に関することばかりである。


「穀物の生産者の貧困率が5年前の1.5倍という見立てがありまして…」


(これでは執務と変わらないな)


 アルフォンスは少しうんざりしていた。





 ”面会”という名の執務が終わり、アルフォンスは廊下を歩いていた。


(なんだか最近は婚約者候補との面会が多いな)


 ここ最近は、連日のように婚約者候補とお茶や食事会の時間が設けられていた。


(原因は分かっているが…)


 最有力候補であったレティシアを婚約者候補から外した。このことで、――おそらくグレイスンが婚約者選定を急かしたいのだろう――と察していた。


(しかし、疲れる)


 どの令嬢も礼儀作法は美しく、博識で社交界の知識もある。


(皇太子妃を迎えることも、皇太子の避けては通れない義務―――)


 ふと、窓の外を見ると群れを成した鳥が空を渡ってゆくのが目に入った。


 南の方角に向かうのか――


「逆の方角だな」


 つぶやいて、驚く。


(何と逆だというのか)


 北に何が――誰が―――。


 アルフォンスはある娘の顔を思い出して、首を振った。


 ―――――――――――――――――――


 北へ向かう一つの馬車があった。


 日に日に寒さが増し、雪がちらつき始めていた。


(雪を見るのは久しぶりだ)


 そう思ったとき、急に大きな馬の嘶きとともに馬車が止まった。


「これ以上は行けません」


 御者が窓の外から話しかける。


(仕方ない、ここからは準軍事領域であるヴァレリア辺境領―――


 ――それも、ここは先月、武装集団同士の衝突が起きた地域だ)


「いいよ、ここで降りるよ。行けるところまででいい、という約束だったからね」


 そう言って馬車から降りる。


「…でも旦那、何だってこんな危険地帯に行くんです?」


 御者はおっかなそうに聞いた。


「そうだなぁ…」


 突風が吹き、男の黒髪が風になびく。


「会いたい人が、そこにいるからだよ」


 雪が強くなる。


 ルシアンは歩き出す。


 ヴァレリア辺境領の城壁はすぐ側に見えていた。



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