53/80
第28話「私はここにいる」
「お嬢、剣を持て」
レティシアは、即座に着替えて戻ると、ガレスと、久しぶりに剣を交えた
剣は重く、すぐに息が上がる。
(どうやって動いていたんだっけ)
思い出そうとする。しかし思い出せない。
けれど―――
身体は動く。身体が知っている。
(不思議だわ…!どうして?)
身体は、どう動けばガレスの剣を受け止められるかを覚えていた。
――――キン!
レティシアの剣はガレスによっていとも簡単にはじかれた。
…しかし。
手が震える。足が震える。
(私はこの感覚を知っている。これは―――)
乱れた呼吸のまま、空を見上げる。
高い空。鱗雲。秋の風が吹き抜ける。
(これは私が忘れていたわたし、ではないの?)
そのまま草むらの上に寝転ぶ。
ガレスは静かに剣を収め、小屋へ戻っていった。
呼吸を整える。深呼吸。
「マリア」
呼ばれたマリアがあわてて飛んでくる。
「はい、お嬢様」
心配そうに傍に座るマリア。
「マリア、不思議ね、空はこんなに綺麗で。世界はこんなに優しくて」
ふふっと笑う。
「私はここにいるのにね」
マリアはその言葉を聞いて、大粒の涙を流した。




