第24話「別々の帰り道」
馬車は静かに公爵邸へ向かって走る。
銀花飾りの光はもう遠い。
外の音は何も聞こえない。
馬車の音も届かない。
頭に残る、アルフォンスの言葉。
───そなたを婚約者候補から外すこととする
振り払おうとしても、頭から離れない。
マリアが何かを言っている。
でも何も聞こえない。
窓の外を見る。
もう一度、アルフォンスの言葉がよみがえる。
───そなたを婚約者候補から外すこととする
「そなたを婚約者候補から外すこととする」
言葉にしてみる。
何も感じない。
からっぽの心。
(感覚がどっかへ行ってしまったのかしら)
何も感じなくなったように感じる。
今、ここに在るものは───。
マリアがずっと手を握っていてくれる感覚だけ。
馬車は、公爵邸に静かに到着した。
馬車の車輪が石畳を打つ音が響く。
アルフォンスは目を閉じた。
(判断に誤りはなかった)
アルフォンスは何度も思い返す。
(彼女が皇后になるには適性がなかった)
(この判断は正しい)
なのになぜか──レティシアが最後に見せた表情が脳裏から離れなかった。
胸の奥がざわつく。
まるで道を違えたような。
そんな感覚だけが、静かに残っていた。
馬車は、あっという間に皇宮に到着した。




