第20話「手紙」
父が部屋を静かに出ていった。
その後、マリアがそっと入ってきて泣いているレティシアの側で背中に手を置いて、なぐさめてくれた。
(私はなんて浅はかなの...)
自分を責める思考ばかりが頭に浮かぶ。
(完璧令嬢などと呼ばれていい気になっていた)
背中に置かれた手の温もりだけが優しかった。
─────────
たくさん泣いて、少し気持ちが落ち着いた。
窓の外を見ると、日が暮れようとしていた。
ふと思い出し、父が置いていった手紙を開ける。
心臓が飛び跳ねた。
『ヴァレンティーヌ嬢
先日の夜会で君が見た件について、確認したいことがある。
今夜、銀花祭へ行く予定だ。
差し支えなければ同行してほしい。
都合が合えば、夕刻に皇宮西門へ来てくれ。
アルフォンス・ルーヴェル』
(......。)
『――アルフォンス・ルーヴェル』
思わず、その署名を二度見する。
「え……?」
「マリア!」
レティシアは勢いよく立ち上がった。
「マリア、早く来て!」
突然の誘いにレティシアはマリアを呼んで支度を始めた。
支度を終えたレティシアは部屋の外へ出た。
夕暮れの廊下を歩きながら、胸が落ち着かない。
アルフォンスが、自分を呼んでいる。
その事実だけで、足取りは自然と速くなっていた。




