第18話「私の世界」
昨夜、アレクシスに付き添われて公爵低に戻った。
馬車の中でルシアンの事情を聞いた。
部屋に戻ってからずっと、レテシィアは閉じこもっている。
朝食も昼食も食べずにベッドの中にいる。
心配した侍女マリアがパンを持ってきてくれたが、ベッドの中から出る気がしない。
おなかは空くけど、食べる気がおきない。
マリアはそっとテーブルの上にパンを置いて退室した。
(私は、婚約者候補として育てられてきた…幼い頃から…)
昨日は皇太子の婚約者候補のひとりとして、社交界の中心に立った。
そう信じていた。――でも、違う。
起きているすべての動きが、自分の知らない場所で先に決まっていたという感覚にとらわれる。
(これは…私は何も知らないまま、起きていることを見せられているだけだわ)
胸の奥に、静かな違和感が沈む。それは不安というよりは理解に近い。
すべてが、自分のために周りの人間の思惑の通りに整理されているように見える。
(お兄様がすべて収束してくれた)
(私は……何もできなかった)
思考がどんどん自分を責めるように巡ってくる。
(あんなに近くにいたルシアンのこと、何も知らなかった)
(結局わたしは…)
そこまで考えたところで、思考が止まった。
―皇后になりたい。
そう願って努力してきた。
けれど今、自分が何を目指していたのかさえ分からなくなる。
胸の奥から、ゆっくりと熱が失われていった。
(もしかしたら…知らなかったのではなく、気づけなかったんじゃないの?私は……)
(私は本当にルシアンを見ていなかったんだわ)
―――そして、ひとつの疑問が生じる
(もしかして私は“人”を見ていないんじゃないの)
文章がバグってましたので、大幅に修正しました。見苦しい文章、大変失礼いたしました。
(2026/06/05 02:30記)




