第14話「現実に戻れ」
アレクシスの介入で、テラスの空気はただ押さえ込まれる形で収束された。
アーネストは、使用人によって運ばれていくルシアンから目を離せなかった。
(兄上……)
その言葉が何度も出そうになり、止める。
―――「ここは舞踏会だ」「あなたもここまでです」
自分に投げられたアレクシスの言葉が、淡々と胸に突き刺さる。
あれはただ“現実に戻れ”という意味を含む、線引きだった。
「……」
言葉にならないまま、拳が震える。
(……兄上、私はあなたに会いたかった)
アーネストは唇を噛み、目を伏せた。
(ただ、それだけなのです)
その言葉は、もう声にならなかった。
―――自分の感情を優先したことで兄を傷つけたこと
―――そして、他国で家門の後継者問題を露呈してしまったこと
アーネストは自分の行動を悔いていた。
【主要登場人物です】
■ レティシア・ヴァレンティーヌ
この物語の主人公。絹糸のような淡い銀髪で紫水晶を思わせる大きな瞳をもつ公爵令嬢。未来の皇后候補として厳しく育てられ全てに秀でた“完璧令嬢”として知られていた。
■ アルフォンス・ルーヴェル
ルーヴェル帝国の第一皇子で、次代の皇帝として期待される存在。金髪でアイスグレーの瞳をもつ端正な顔立ちをしている。
■ ルシアン・エヴラール
隣国であり友好国であるラヴィエール公国のエブラール公爵家嫡男。レティシアの幼なじみ。軽薄そうで何を考えているかわからない。黒髪の危険な色気があり女性からもてる。レティシアの本性を知る数少ない人物。
【ルーヴェル帝国 関係者】
■クラウディウス皇帝
ルーヴェル帝国を長年統治している偉大な皇帝。理性的で威厳があり、民から敬愛されている。
【 ヴァレンティーヌ公爵家】
広大な領地を持つ帝国屈指の超名門公爵家であり、代々皇室騎士を輩出している武門の家系でもある。
■ ヴィクトル・ヴァレンティーヌ
ヴァレンティーヌ公爵家当主。厳格で威厳ある人物で皇室からの信頼も厚い。
■ セラフィーナ・ヴァレンティーヌ
ヴィクトルの妻であり知性と品格にあふれる公爵夫人。
■ アレクシス・ヴァレンティーヌ
3歳年上のレティシアの兄。ヴァレンティーヌ家の後継者。聡明で冷静。
■ ノエル・ヴァレンティーヌ
1歳年下のレティシアの弟。剣術好きで明るい性格。
【アルフォンスの婚約者候補】
■イザベル・ド・モンフォール侯爵令嬢。
金髪碧眼の華やかな美人。社交界の華。
■カミーユ・ド・ラ・ロシュフォール公爵令嬢
黒髪で切れ長の瞳。知的で冷静で政務や外交に精通している。レティシアの最大のライバル候補。
■エレオノール・ド・ヴァレリア辺境伯令嬢
赤銅色の髪で背が高い。武門の名家出身。馬術や軍略にも詳しい。
【ラヴィエール公国】
■ アーネスト・エヴラール
エヴラール公爵家の嫡男でルシアンの弟。誠実で率直な性格。幼少期より兄の存在を家門内で禁忌として扱われ、兄のことは何も知らない。このため兄に対しては「確かめたい」という強い衝動を抱いている。




