第23話「初対決」
「なんだあいつら?」
「打ち合いが速すぎるぞ」
「どっちも名前がわかんねー!」
「やっちまえー!えーと、金髪戦士!」
「せーの、頑張ってぇー!黒髪戦士ぃー!」
観客の興奮と歓声は最高潮となっていた。
アルフォンスとルシアンの試合が始まった。
「始め!」
構えるルシアンを見てアルフォンスは気がつく。
(この構え……?)
ルシアンも構えるアルフォンスを見て気がつく。
(あれ?)
───キィン!
アルフォンスが放つ剣筋が。
───ガキン!
ルシアンがそれを自然に受けて返す。
アルフォンスとルシアンは思った。
(同じ型か?)
二人が打ち合う。
(これって...)
───キィン!
(この剣筋は...!)
アルフォンスは疑問が確信に変わった。
(皇室の剣ではないか!!)
ルシアンは打ち合う中で相手の顔を見た。
金髪。
アイスグレーの瞳。
品のある立ち振る舞い。
(うわ)
─キン!
(うわぁぁぁ……これは)
──キン!
(レティの好きな人だ!)
───キィン!
(その技は……!)
アルフォンスは思い出す。
幼いころ、皇宮の訓練場で会った大男。
いつの頃か皇室を去った男。
アルフォンスは視界の端に、審判員の席を見る。
ガレス・オルディン元騎士団長。
(なぜこいつがこの剣を)
───ガキィン!
アルフォンスの剣を受けるルシアン。
剣筋を変えず押し続けるアルフォンス。
ルシアンもあえて逸らさずに受け続ける。
近くで顔を見合う二人。
「なんだなんだ?」
「動かないぞ!?」
「キスでもおっぱじめるのか!?」
観客がヤジを飛ばす。
アルフォンスはルシアンに聞く。
「その剣……誰に習った」
ルシアンは答える。
「さあな」
(皇室剣術。こいつが、皇太子か)
ルシアンはレティシアを思い出す。
『アルフォンス殿下は優しくて……』
(ああ、こいつか。)
───キン!
(こいつの事が、好きなのかよ)
さらにアルフォンスは聞く。
「先ほどの覆面の騎士とは親しいのか」
ルシアンは驚き、受けている剣がブレる。
───キィン!
アルフォンスの剣を弾き、ルシアンは離れた。
「さっきの女性剣士は何者か知っているか」
アルフォンスの言葉にルシアンは、自分の血が熱くなるのを感じた。
「は?」
アルフォンスをにらみ、構え直すルシアン。
体制を整えるアルフォンス。
(婚約者のくせに、気づいてねぇのかよ...!)
アルフォンスに向かって勢いよく踏み込んだ。
──ガキン!
「名を聞こうとしたんだが逃げられてしまった」
ルシアンの剣を弾くアルフォンス。
難なく弾かれて血が上るルシアン。
(は???)
──キィン!!
───キィィン!!
強くなる打ち合い。
わぁぁぁ!!!
熱狂する観客。
「何か知っているか」
打ち合いながら、なお聞くアルフォンス。
「知らねぇよ!」
──ガン!!
(教えるもんか!)
───キィン!
(皇太子だからって何だ)
──キン!
(お前なんかより)
(ずっと前から...!)
──────ガキィィィン!!
ルシアンが打ち込んだ剣をアルフォンスが流した、その時だった。
──────ガァァァァーン!!!
制限時間を告げる銅鑼が鳴らされた。
「そこまで!」
試合が終わった。
「どっちだ!?」
「分からん!」
「互角じゃねぇか!」
アルフォンスは
(決着はつかなかったか)
と引き分けを覚悟した。
そこへガレスが腕を組み、無表情でやってきた。
固唾を飲む観客たち。
間髪をいれずに、ガレスは勝敗を告げた。
「勝者、金髪のほう」
「はぁ!?」
真っ先に叫んだのはルシアンだった。
「なんでだよ!おかしいだろ!」
アルフォンスは静かに立ち上がり剣を鞘に戻す。
ガレスは無表情を崩さず言った。
「お前の剣が乱れていたからだ」
「どこがだよ!」
ルシアンは食ってかかる。
ガレスは短く言った。
「感情で剣を振っていた」
ルシアンは息を呑み、うなだれる。
「勝負は一瞬の乱れで決まる」
ガレスはさらに続ける。
「それは剣術ではない」
ルシアンは言い返せなかった。




