第22話「君の名を」
「君の名を、聞いてもいいだろうか」
アルフォンスがそう言ったその時だった。
「おー、いたいた!」
突然、誰かを呼ぶ声がした。
二人が声の方を振り向く。
きゃあきゃあ、と楽しげな娘たちの軍団が近づいてくる。
ルシアンがその軍団の中心から手を振っている。
(あ......まずいわ)
アルフォンスは目を見開いた。
「君は、黒髪剣士か……!」
(このすきに...逃げるべきかしら)
次の瞬間。
ルシアンがにこにこしながらレティシアに近づいてきた。
「なんだー。ここにいたのか」
アルフォンスはレティシアに聞いた。
「彼と親しいのか?」
(はぁ、タイミングが悪いわ...)
レティシアは小さく頷いた。
「あれ?」
ルシアンがアルフォンスの存在に気がついた。
「君は、さっき第二回戦に...出て...」
そう言いかけた時、観客の歓声が一際大きくなった。
「おーい!そこの...黒髪の剣士と、えっと金髪の剣士ー!」
歓声にかき消されまいと大声でアルフォンスとルシアンを呼ぶ声がした。
大会の係員らしき男が走ってきた。
「探したよ、見つかってよかった。」
どうやら二人を探していたようだ。
「次が二回戦で、君らの出番だから、すぐ出てくれ」
次がアルフォンスとルシアンの試合らしい。
「キャー!」
「今からまたルシアンの試合が見られるのね!」
「こっちの金髪の剣士様も、よく見たら色男じゃない?」
「キャー!楽しみー!」
ルシアンを取り囲んでいた女たちが色めき、歓喜の声を上げた。
ルシアンは笑顔で女たちに手を振る。
(せっかく名前を聞きかけたのに...)
アルフォンスは眉をひそめる。
(今よ!)
レティシアは方向を変え、走り出そうとした。
アルフォンスがレティシアの動きに気がつく。
「待ってくれ!」
レティシアは背後でそれを聞く。
「せめて名前だけでも――」
しかし娘たちの黄色い声援がそれを飲み込む。
レティシアは、その隙に全力で走り去った。




