第21話「出会い直し」
アルフォンスは、西側の剣士たちの控え室に入った。
「第二試合の二人はここに居るか」
控え室では剣士たちが出番を待っていた。
「さあね、試合が終わってからみてねぇよ」
「さっき黒髪の方は若い娘たちに囲まれて連れてかれたよ」
「全く色男は得だね。よりどりみどりさ」
(黒髪の方は、確かに整った顔立ちをしていたな)
「覆面のほうは」
「知らねぇな」
「見てねえよ」
覆面剣士を見かけたものは誰もいなかった。
(無駄足だったか......)
第四試合が始まったらしく、歓声が聞こえていた。アルフォンスは薄暗い廊下を通り、東側の控え室に戻る途中だった。
その時、ふと泣き声が聞こえてきた。
(あれは...覆面の剣士ではないか)
「うっ...うっ......」
(泣いているのか)
覆面剣士が泣いている。
覆面剣士──泣いているのはレティシアである。
レティシアが廊下の壁に寄りかかり泣いている。
探していた覆面剣士を見つけたが...
アルフォンスは声がかけられない。
レティシアは泣きながらつぶやく。
「...あんな技をもってたなんて」
(そうだ。黒髪剣士の最後の軸足のずらし......あれは見事だった)
(しかし......)
アルフォンスは回想する。
覆面剣士の、小柄な身体を活かした無駄のない動き。
どんな動きでも軸がぶれず、美しい剣。
ひとつひとつの動きに目が奪われていた。
(なぜだろう)
理屈では説明できない。
ただ、あの剣をもう一度見たいと思っている自分がいる。
「あんな...っ。あんな......」
肩を震わせるレティシア。
(うん、さぞ悔しかろう)
頷くアルフォンス。
「あ───っ!楽しかったァ──!」
レティシアは、急に上を向き両手を挙げ、明るい大声で叫んだ。
(な、なんだ?何を笑ってる?)
敗北の直後だ。
悔し涙ではないのか?
恐怖でもなく...。
ただ、心からの高揚なのか?
(剣を振るうことが、楽しい……?)
アルフォンスは、剣を持つもののそんな顔を、見たことがなかった。
(なんだこの剣士は...)
「またやりたい!ほんっと剣って最高!!」
「な、なに!?」
アルフォンスはつい声を出してしまった。
「だ、誰?」
声のする方に、振り向くレティシア。
目が合うふたり。
(女?)
見つめ合う二人。
───わぁぁぁ!!
遠くで湧き上がる観客の声。
だが、ここはまるで静かだ。見つめ合う、無言の二人。
(覆面の剣士は、やはり女性)
(まさか......で、...殿下!?)
涙に潤んだ覆面騎士の瞳......
その瞳の色はアルフォンスからは見えない。
(なぜだ、ただ見つめ返されているだけなのに)
(やばい。バレてしまうわ)
(なぜ、視線を逸らせない)
沈黙を破り、アルフォンスが言った。
「君の名を、聞いてもいいだろうか」




