第20話「皇室の剣」
第二試合のレティシアとルシアンの試合が終わった。
しばらく経っても観客の興奮はまだ冷めない。
高揚した雰囲気を引きずったまま、第三試合の開始が告げられた。
キイン!
静まり返る観客。
「お、終わったのか?」
そしてざわめきが広がる。
剣士のうち1人は、まだ構えを解いていなかった。
だが、もうがっくりと膝をついていた。
何が起きたのか、誰もすぐには理解できない。
少し遅れて歓声が上がる。
「今の見えたか!?」
「いや全然……」
「一瞬で終わってたぞ」
「なんだ、あの金髪の剣士は!?」
「誰だ?泥で顔がよく見えないぞ」
泥で顔がよく見えない金髪の剣士が、静かに剣を収める。
その動きには、無駄がなかった。
控え室に戻ろうとしたアルフォンスに、アレクシスか声をかけた。
「圧勝...というか一瞬だったね」
にこやかなアレクシス。
「さすが皇室の剣」
アレクシスは勝利を称えた。
「......声が大きい」
アルフォンスは低い声で制した。
「向かうところ敵なし、じゃないかな」
周りを見渡し、アレクシスは小さな声で話す。
アレクシスの言葉にアルフォンスは、第二試合を思い浮かべた。
「いや」
短く否定するアルフォンス。
「さっきの黒髪の戦士。次はもっと苦戦する」
アルフォンスの目の前で起きた見事な試合。
二人の動きに目を奪われた。
──無駄のない動き。
──読み合い。
──一瞬の判断の差。
勝敗は紙一重だった。
「お前はあの試合、どう見た」
アルフォンスはアレクシスに聞いた。
アレクシスは、ピクリと眉をあげた。
「僕には剣のことはわからないさ」
アレクシスはさらりと返す。
アルフォンスはアレクシスをじろりと見た。
(はぐらかしたな)
アレクシスが逆に聞いてきた。
「君はどう見たんだい」
「すぐにでも騎士団に推薦したい」
アルフォンスは即答した。
その言葉に、アレクシスの表情がほんの一瞬だけ揺れた。
すぐに笑みに戻る。
「それはまた、随分と高い評価だね」
「きっと、ガレス・オルディン元騎士団長も同じ評価をしているはずだ」
アルフォンスはそれ以上言わず、廊下を西へ歩いて行った。
アレクシスはその後ろ姿を見ながら
(そのオルディン元騎士団長が育てた二人だよ。訳ありの、ね)
心の中でつぶやいていた。




