第23話「本部へ戻る」
エレオノールが山道に残された足跡をたどると、たどり着いたのは廃坑道の入口だった。
数刻前。分かれ道の手前で、ひとり静かに座る女性を見つけた。
警戒させないよう、ゆっくりと歩み寄る。
「レティシアを救ってくださったあなたを保護します」
そう告げると、女性は穏やかに頷いた。
そして、声の代わりにゆっくりと口を動かす。
『娘を待ちたい』
その願いを読み取ったエレオノールは、しばらくの間ここで待機することを決めた。
女性はさらに、レティシアがこの先へ向かったこと、おそらく娘のエミと合流できたのだろうということを、時間をかけながら伝えてくれた。
レティシアは生きている。
その事実に、エレオノールは胸をなで下ろす。
「隊長、報告です。廃坑道の近くで男が倒れています」
そこへ、部下の緊迫した声が。
「男?どんな状況だ?」
エレオノールは、母親を部下に任せすぐに確認に向かった。
(これは…どういうことだ?)
「剣で切られた傷はありました。ですが、致命傷は毒矢と思われます」
男の状態を調べていた部下が、エレオノールに気が付き報告をした。
「毒矢?」
「はい。遺体の状況から、薬師の庭で倒れていた男と同じ種類の毒だと思います」
(なぜ毒矢で死んでいる男が二人も?それも、レティシアのいたとされる場所の近くで?)
エレオノールは胸騒ぎがした。
「このまま廃坑道に配置するものと、本部へ戻るものに、いったん分隊する!」
ガレスは、集落の中を歩いていた。
辺境軍の砲撃は、密偵が集めた情報をもとに行われていた。
狙ったのは、人の住んでいない建物だけ。
建物を壊すことで住民の退路を断ち、確保することが目的であり、最初から死者を出す作戦ではなかった。
だからこそ、違和感があった。
(静かすぎる。)
瓦礫の間を風だけが吹き抜ける。
人の気配がない。
泣き声。
助けを呼ぶ声。
どこからも何も聞こえない。
(どこかへ集められたか?)
だが、こんな短時間で住民を一か所へ誘導できるだろうか。
(いや……。)
ガレスは足を止めた。
視線をゆっくりと集落全体へ巡らせる。
(最初から避難場所を知っていた)
その結論に至った瞬間、背筋を冷たいものが走る。
(そうか……)
(作戦が漏れていたな)
ガレスは静かに踵を返した。
この事実は、一刻も早く本部へ伝えなければならない。ガレスは急いで本部へと向かった。




