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皇太子の婚約者候補から外されたので、完璧令嬢は本性隠すのやめました~捨てられた者たちがもう一度、意味を見つける物語~   作者: 春月もこ
第3部「自分が決めた道」

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第22話「復讐の炎」

「レオニス、やっぱりここだった。あなたの家の辺りは爆撃があって近づけなかったから...」

 エミは息を切らせながらレオニスに近づいた。


「......」

 レオニスは返事をしない。


「あなたいつもここで会合してるから。ここだろうと思って来たよ」

 エミはレオニスの顔を覗き込む。

 それでもレオニスは、下を向いたまま、エミと顔を合わせようとしない。


 エミがレオニスを覗き込む。

 呼吸が少しずつ荒くなっていくのが分かった。


 そしてエミの方を見ようとせず、ゆっくりこっちを見る。

 レオニスと目が合った。

 そしてレオニスは、私の全身を上から下まで見つめた。鋭い目つきで。


「お前、辺境軍だったんだな。レティシア公爵令嬢―――」

 冷たい声を放った。


 心臓がドクンと跳ねる。


 その顔は怖く険しく、今にも飛びかかってきそうな雰囲気だ。


 確かにこの服はレオニスと戦った時の服だ。

 でも彼は私が貴族だとなぜ知っているのだろう。


 エミはレオニスの両肩を正面から、がしっと掴む。

「今そんなこと言ってる場合?」

「そんなこと?...お前、ベルンがどうなったか知ってるか...」

「......」

 ベルンの名前が出て、エミは目を大きく見開いている。

 なぜレオニスがベルンが亡くなったことを知っているのだろう。


「こいつは貴族だぜ。俺達のこと騙して、見下して。ベルンが死んだのもこいつのせいじゃねえのか?」

「私はそんな...」

 そんなつもりはなかったと。

 騙すつもりなんてなかった、と言いたかった。

 だけど言葉にならない。

 私の身分を打ち明けなかったことは。

 結果的に騙してたのと同じだ。

 ベルンの死も、私が“支援者”について聞いたから...。


 何も言えない。

 エミの顔を見られない。

「レティシア?」


「ええ、貴族なのは...それは間違いないわ。でも、騙すつもりはなかった…」


 レオニスがその言葉を待っていたかのように、叫ぶ。

「お前は、俺たちの倒すべき相手だ!」


 エミは慌ててレオニスにしがみつく。

「やめて、レオニス!レティシアは私の友達よ!」


 レオニスがエミを振り払う。

 教会の中へ走っていった。

 私は息を呑んだ。


「お前ら!復讐の炎を燃やせ!」

 教会の奥から足音が響いた。


「レオニス!」

 エミの叫びはもうほとんど悲鳴のようだったが。

 同時に教会の中から怒りに満ちた雄叫びが聞こえた。

 エミの声はかき消された。


 エミは私の背中をぐいと押してその場から逃がそうとする。

「逃げて、レティシア。こんな所に来るべきじゃなかった。逃げよう」

 でも、足がすくんで動けない。

 怖い。

 手が震える。


「逃げよう、レティシア!逃げて!」

 エミが私の腕を引っ張る。

 まるで、体が鉛にかわってしまったかのように動けない。


 教会の扉が勢いよく開く。

 男たちが次々となだれ込んできた。

「助けてもらえなかった親たちの恨みだ!」

「見捨てられた俺たちの恨みだ!」

「俺らの復讐の時だ!」


「そんな...レティシア、逃げて...」

 エミは私の腕をつかんだまま泣きながらしゃがみ込んでしまった。


 私は、今起きていることが現実とは思えなかった。


 音が遠のいていく―――。


 ただ、心臓の音だけが早鐘のようにドクンドクンと鳴り響いているだけだ。




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