第6話 Dランク試験 - 後編 -
その後もマンドラゴラを求め森を探索。
時々遭遇するドリアードも慣れて来たのか倒すのに苦労しなくなってきた。
もしやと思いアナライズを使ってみると、トゥルニーはLv11、クィナはLv10、リリーもLv10となっていて、俺もLv11になっていた。
「あっ!何かスキルを覚えた気がします!」
ふと、ドリアードを倒し終えたトゥルニーが俺に向かって嬉しそうに伝えてきた。
スキルは『強撃』というもので、普通の攻撃よりも威力のある攻撃って感じだと言う。
そういえば戦士スキル一覧にもDランクのところにあったなと思い出す。
ということは、既にトゥルニーはDランク相当の強さがあるってことだろうか?
いや、それだと俺はCランク相当の強さがあるってことになってしまう。
等と考えていると、
「隊長~。ここにマンドラゴラがありますぅ~」
その声に釣られて俺たちはその場へと歩む。
少女の足元にある、土から根のようなものがはみ出したものを見て、アナライズを使う。Lv1と出ている。
どうやらマンドラゴラ自体は強くはないようだ。
さっき戦ってたドリアードもそうだが、このLvというのは、どのぐらい体力、攻撃力、防御力があるか、この要素が強い気がした。
「取り合えず引っこ抜いてみようぜ」
マンドラゴラのLvが1ということに安心感を覚え、俺が勢いよく引き抜くと、
「キャアアアアアアア!!」
まるで女の悲鳴のような声が耳を貫いた。
一瞬驚いたものの、特に動けなくなるという感じはしなかった。
これはもしかして――
「この声に驚いて、一瞬動けなくなるっていう感じじゃないか?」
「そうみたいですね」
「全然動けないっていう感じしなかった!」
特に誰も問題ないと判断し、次々と引っこ抜いていく。
その度に女の悲鳴が森の中に響き渡る。
何だか、凄い悪いことをしている気分だ…。
十本抜き終え、帰ろうと立ち上がったところ、近くで何かが近づく音が聞こえた!!
森の中ということもあり、視界はやや悪い。
「何かが近づいてきているぞ!」
俺の声に呼応するかのように、全員が戦闘態勢に入る。
それから直ぐに、巨大な塊が突っ込んで来た!!
「な、なんだあれは!猪!?」
「ボアですっ!!アイスアロー!!」
咄嗟に敵の正体に気づいたのか、いち早く反応したクィナが氷の塊を飛ばす。
バゴン!という音とともに氷は砕け、ダメージが入ってるのかどうか分からなかったが、距離はまだある。
アナライズを使うとLv18と出ていた!!
「みんな逃げろ!!」
そう命令し、森の中を駆けて行く。
しかし、ボアの方が足が速い!!
「あぁ~~、置いていかないでですぅ~~」
一番小柄なリリーが、杖を持ったまま必死に走っているが、
「わぁっ!!」
つまづいたのか、転んでしまった!!
俺は引き返し、迫りくるボアとリリーの間に入り迎え撃つ覚悟を決めた!
距離にすると、後十数メートル――っ!!
剣を構え一呼吸し、そして、
「高速剣っ!!!」
ズガガガガッ!!
突進してくるモンスターにスキルを当てた!!
何発も剣撃が入った音、そして確かな手応え。
だが、倒しきれなかったのか、
ドゴッ!!
「ぐわっ!!」
暴れまわるボアの体当たりを受け、俺は後方に吹き飛ばされてしまった!!
「隊長!!くそぉ~!!強撃!!」
胸と背中に痛みを覚えながらも、ボアから目を離さずにいると、トゥルニーの槍がボアを貫いていた。
だがボアの足は止まったものの、勢いだけは止まらず、そのまま巨体は木のぶつかり、ようやく動きを止めた。
「ふぅ~、いてててて」
よろよろと、トゥルニーたちのところに向かおうとしたところ、リリーが駆け付けヒールをかけてくれた。
痛みはなくなったものの、スキルの疲労は残ったままだった。
どうやらヒールは傷やダメージは治せるが、疲労は治せないようだ。
「隊長無理し過ぎですよっ!!」
「そうです、吹き飛ばされた時は、どうなるかと思いましたっ!!」
「隊長ぉ~、痛いところもうない~?」
みんなが心配そうに見てくるが、ヒールのお陰で痛みはなくなったと告げると、全員ほっとした表情になっていた。
その後、森を抜け街道に出るも、当然馬車は無い。
疲労もあってか、馬車を使ってでも帰りたかったが、徒歩で帰るしかなかった。
帰路の途中、
「そういえば、よくあのボアのとどめを刺せたな」
俺の高速剣で仕留めれなかった敵を、トゥルニーは一撃で仕留めた。
それだけあのスキルが強いのか、それとも戦いの中でトゥルニーが成長したのか、それが気になって声をかけてみたが、
「私が駆け寄った時には、だいぶ弱っていたからね!本当にとどめを刺しただけだよ!」
なるほど。
ということは、俺のスキルは強いけど、俺自身のレベルが足りないから一撃で倒せなかったって事か?
いや、しかし実際には、クィナのアイスアローも結構ダメージ入ってたのかも知れない。そう考えると、みんなで倒した感があって少し嬉しかった。
2時間かけてやっと街に到着。
そのままギルドへと向かい、中へ入る。
受付嬢に依頼の品であるマンドラゴラ十匹を渡すと、
「試験合格おめでとうございます。こちら報酬の1000Gです。それとDランクの手続きをするので、ギルド証を一度預からせて頂きます」
少し時間がかかるということで、2Fに移動し待つことにした。
そして待っている間、今日の試験について各々が感想を漏らす。
「Dランクの依頼ってこんなのばっかりなの~?」
「どうでしょう?今日はたまたま強いモンスターだった可能性もありますよ」
「転ばないように気を付けるですぅ~」
確かに、たまたまの可能性もあるだろう。
しかし、そのたまたまは別に珍しくもないと俺は考えていた。
一度アナライズを使い仲間を見る。
トゥルニーはLv12、クィナはLv11、リリーもLv11となっていて、俺はLv13になっていた。
「はぁ~…」
俺はため息を吐いた。
Lv18の敵を倒したから、もっとレベルが上がってるかと思ったら、俺は2、他3人は1ずつしか上がっていない。
これは割に合わない。
落胆している俺を見てか、リリーが心配そうに声を掛けてくる。
「いや、何でもない」
そう言って一旦落ち着かせ、今後の事について俺の考えを伝えた。
なるだけ安全なものを選ぶ、1体強い敵を倒すよりは、そこそこの敵をたくさん倒す方が楽。報酬は強くなればいずれ比例して多く得られる事。
誰も反対せず、俺の同意してくれた。
そのタイミングで、
「お待たせしました。こちらが新しいギルド証となります」
受付嬢が、ギルド証4つ乗せた木の板を、テーブルに置いた。
各々が自分のギルド証を手に取る。
前にギルド証のプレートは木製だったが、今度は金属製だ。何の金属かは分からないが、ランクアップした実感が出てきた。
マジマジとギルド証を見ていると、
「皆さん、せっかくランクDになったので、隊として登録はしませんか?」
「隊として登録?」
一体何のことか分からず聞き返してみると、冒険者は隊で動くのが一般的であるということだ。
登録しておくことで、誰もが閲覧可能なギルド名簿に、誰がどの隊にいるかが一目で分かるというもの。
これにより引き抜きも起きず、どの隊がどういう編成か、そしてどのぐらいの強さかも他の冒険者や一般の人にも分かりやすくなるということだった。
「それは便利だな。どうやって登録すればいい?」
「まず隊長が誰で、何という隊の名前にするかを決めて頂き、隊の所属メンバーが誰なのかをこの紙に記入して頂いて提出してもらえれば、それで登録できます」
説明とともに用紙をテーブルに置いてきたので、まずは隊長のところに俺の名前を、メンバーのところに各々が名前を書き始める。
問題は隊の名前だ。
「参考までにギルド名簿を見たいのだが、どこで見れる?」
「1Fの冒険者情報室で閲覧できます。ご案内しますね」
案内してくれるということで、先頭を歩くギルド嬢に全員で着いて行く。
1Fの角に、特に仕切りもない場所があった。いくつかの本があるが、受付嬢は一冊の分厚い本を手に取りテーブルに置いてくれた。
早速中を見ると、ほとんどの隊が四人一組になっており、隊長の名前が隊の名前になってるのが大半だった。
「じゃあ今まで通りフリート隊ですね」
もう決まったかのようにみんな嬉しそうに口にする。
少し恥ずかしさもあったが、フリート隊と記入し隊として冒険者登録を済ませた。
これで俺たちは、ギルド名簿にDランク冒険者のフリート隊と登録された。




